日本酒ファンをうならせる銘柄が集中しているのが山形県。レアな日本酒として有名な「十四代」をはじめ、キレイな酒質を得意とする蔵元が揃っています。今回は山形の美酒のなかでも、絶対に覚えておくべき厳選6銘柄をご紹介!
【山形県の日本酒事情】
名山からの湧水に恵まれ歴史ある蔵元を多数抱える
山形県は、鳥海山や月山、白鷹山などの名山からの湧水に恵まれた地。100年以上の歴史を持つ蔵が多く、なかには400年以上の歴史を持つ蔵も存在しています。昭和62年設立の「山形県研鑽会」を中心に技術者の育成が進んでおり、県外杜氏に頼らずに地元従業員が製造責任者となる例も増えてきました。
約30年前から研究開発も盛んに行われており、酵母では「山形酵母」、酒造好適米では「出羽燦々」や「出羽の里」などが開発され、酒質向上に貢献。また、十四代を醸す高木酒造が、「龍の落とし子」「酒未来」「羽州誉」などの酒米を独自に開発・生産しており、こちらも注目を集めています。
消費者レベルでは、女性を中心に日本酒熱が高まっている模様。540名の修了者を輩出した酒造組合の日本酒学校には、昨年も定員を超える過去最高の応募者が集まったといいます。なお、日本酒の県民一人あたりの消費量は全国3位(2014年時点)。以上のことから、山形県は、優秀な作り手と多くの日本酒の愛好者に恵まれた県だということがわかります。
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その1
震災を乗り越えきめ細かい酒質のお酒を醸す
鈴木酒造店[長井市]
磐城壽(いわきことぶき)
山廃純米大吟醸
雄町25BY
5400円(1.8ℓ)
もとは福島県浪江町にあった蔵。東日本大震災で全建屋が流失するも、山形県長井市に移り見事に復活しました。本作は、長期熟成も視野に入れた酒。きめ細かい酒質と厚みのある味わいに加え、上質な余韻を実現しています。
【蔵元が語る地元との関わり】
酒粕を使った循環農業で地域に貢献したい
地元・長井と福島県福島市の農家に酒米の栽培を委託し、来季は酒粕を使った原料米再生産の試験を予定。循環農業で地域との関係を保ち、浪江町の農業再生に貢献したいです。
【地元に来たらコレと合わせて!】
◉ 馬肉チャーシュー
◉ がに巻き(モズクガニのつみれ汁 ※浪江町の郷土料理)
◉ どぶ汁(味噌仕立てのあんこう鍋 ※浪江町の郷土料理)
その2
希少品種の酒米を使い華やかな香りに仕上げた
新藤酒造店[米沢市]
裏・雅山流(うら・がざんりゅう)
極華(ごっか)
5400円(1.8ℓ)
特約契約を交わした地酒店のみに卸すブランド。自社田で栽培した酒米を使い、吾妻山系の伏流水で醸しています。本作は山形県で開発された希少品種の酒米、山酒4号を使い、華やかな香りと新鮮な味わいに仕上げました。
【蔵元が語る地元との関わり】
県産の原料を使った酒造りにこだわる
県産の原料にこだわって酒造りをしいます。多くの製品では、自社田で蔵人が栽培した、山形発祥の酒造好適米を使用。酵母も県で開発したものを使用しています。
【地元に来たらコレと合わせて!】
◉ 米沢牛のしぐれ煮
◉ 冷や汁(乾物などを煮て冷まし、旬の野菜のおひたしにかけもの)
◉ 芋煮
その3
女性でも飲みやすく話題の転換に使える!?
亀の井酒造[鶴岡市]
くどき上手Jr.(くどきじょうずじゅにあ)
Red 山田44 %(れっどやまだよんじゅうよんぱーせんと)
3672円(1.8ℓ)
口当たりがよく、女性にも飲みやすい味わいとなっていて、酒銘から女性との距離を一歩進めるきっかけにもなるお酒です。蔵元は精米歩合50%以上の吟醸酒のみを醸しており、平均精米歩合は約45%と驚異的な数字。本作は播州山田錦を44%まで磨き、旨みと香りを極限まで引き出した逸品です。
【蔵元が語る地元との関わり】
月山由来の軟水を使いやわらかな酒質に
月山由来の軟水を超軟水に仕上げて仕込み水に使い、やわらかな酒質を実現。地元・羽黒町産の美山錦や出羽燦燦、県外産の山田錦など15種類以上を使用しています。
【地元に来たらコレと合わせて!】
料理との相性に関しては、特に提案しておりません。日本酒は、おいしい料理があり、楽しい仲間がいて、ふさわしい場があれば何にでも合いますよ!
その4
幅広い温度で楽しめる本醸造と大吟醸のブレンド
酒田酒造[酒田市]
上喜元(じょうきげん)
猩々(しょうじょう)
1922円(1.8ℓ)
吟醸酒に定評のある蔵元で、本作は自慢の大吟醸と本醸造をブレンドした品。フレッシュな香り、爽快感のある口当たりとのどごしが楽しめます。冷酒から燗まで幅広く対応し、価格も手頃とあって晩酌用としてぴったり。
【蔵元が語る地元との関わり】
庄内産の米を使った酒を全国に発信
30種類の酒米を使用し、米が持つ可能性を追求しています。その一環として、杜氏自らが酒米の栽培に取り組み、地元・庄内産の米を使った酒を全国に発信しています。
【地元に来たらコレと合わせて!】
◉ むきそば(そばの実をむいてゆでたものにダシ汁をかけたもの)
◉ 海鮮料理
その5
軽い口当たりと果実のような酸味でスイスイ飲める
楯の川酒造[酒田市]
楯野川(たてのかわ)
純米大吟醸 清流(じゅんまいだいぎんじょう せいりゅう)
2808円(1800㎖)
全国でも貴重な純米大吟醸酒だけを造る蔵。本品はアルコール度を14%台に抑え、透明感と軽やかさを目指して造られています。軽快な口当たり、若々しい果実のような香りと酸味、さらりとしたやさしい後味が楽しめます。
【蔵元が語る地元との関わり】
地元農家と契約栽培を行い研究会も結成
使用米の約8割は、20名以上の地元農家との契約栽培。契約農家と酒米研究会を結成し、情報交換を行うことで、より良い酒米作り、酒造りができるよう努めています。
【地元に来たらコレと合わせて!】
◉ どんがら汁(寒ブリの身や内臓、骨、頭などを味噌で煮たもの)
◉ 孟宗汁(孟宗竹のタケノコを煮て味噌と酒粕で仕上げたもの)
その6
知らなきゃヤバい! 流れを変えた歴史的な銘柄
高木酒造[村山市]
十四代(じゅうよんだい)
本丸(ほんまる)
2160円(1.8ℓ)
蔵元は創業約400年の老舗。現在の十四代は1994年、当時20代半ばだった15代蔵元、高木顕統(たかぎ・あきつな)氏が立ち上げた銘柄です。高木氏によると、十四代は、米の味がしない酒に違和感を覚えるとともに、昔ながらの味わい深い酒に触れ、その良さを再確認したことから発想したそうです。十四代の香り高く厚みのある味わいは、“芳醇旨口”と呼ばれ、爆発的な人気を獲得。淡麗辛口が主流だった日本酒の流れを大きく変えました。なお、本丸は、十四代でもっとも低価格で流通量も多いですが、蔵元が本丸=銘柄の中心と位置づけるお酒。「底辺が旨ければ上はもっと旨いと想像してもらえる」との思いから高級酒同様の造りを行っています。その味は洋ナシを思わせる上品な風味で、キレも抜群です。
【蔵元が語る地元との関わり】
蔵元独自の酒米を開発・生産しています
この土地で醸すことに感謝し、地元の神事などにも主要メンバーとして参加。龍の落とし子、酒未来、羽州誉など、当蔵独自の酒造好適米の開発・生産も行っています。
【地元に来たらコレと合わせて!】
何にでも合います!(蔵元談)