まだまだ寒い日が続きますが「立春」を過ぎ、暦の上では春の始まりを迎えています。スーパーに並ぶ野菜の顔ぶれも少しずつ春めいてきて、料理が楽しくなる季節ですよね。この冬から春にかけて旬を迎えるのが、セロリです。
子どもをはじめ「セロリは苦手」という人が多いですが、実は香り高く、さまざまな健康効果も期待できる優秀野菜です。わからないようにそっと入れる……ではなく、あえて主役としてセロリを活用してみましょう。そんなセロリへの印象がガラッと変わりそうなおいしいレシピを、国際中医薬膳師の齋藤菜々子さんに教えていただきました。
セロリにアロマ効果が!? 香りをいただく貴重な食材
セロリは、その独特な香りが特徴的。料理に使いやすいのは茎の部分ですが、葉も炒めてふりかけにしたり、スープに入れたり、余すところなく使える野菜です。薬膳的な考え方では、このような香りの強い野菜には、ストレスを解消する力があるのだそう。
「セロリをはじめ、“香味野菜”と言われる香りのある野菜は、“気の流れ”を整えるといわれています。たとえばストレスを感じていたり、イライラや不安感が体にこもっていたりするときは、香味野菜を食べることでリラックスできるんですよ」(国際中医薬膳師・齋藤菜々子さん、以下同)
春の養生におすすめのセロリ
春先はとくに、気分や体調が乱れやすいといわれています。それは、気温の変化に体がうまく順応できないことや、体内の熱が頭にのぼりやすく、緊張したりイライラしたりすることが多くなるからなのだそう。
「薬膳では“気”というのですが、元気ややる気、根気、生気といった力が、春先には低空飛行になりがちなんです。周りがどんな気温であっても、自分の体温を適温に保つことにも気が必要。疲れやすい人や冷えやすい人は、気の力が弱いので、流れを整えることを考えるといいでしょう。また、暖かい空気が上昇するのと同じで、暖かい季節には体の中の熱も頭にのぼりがち。頭がパンパンになって、緊張したりイライラしたりするので、香りのあるセロリなどの食材がアロマのように癒してくれます。セロリの他にも、蕗(ふき)や菜の花など、春に出てくる苦味のある野菜は、体に溜め込んだ余分なものを出してくれ、デトックスの役割も果たしてくれますよ」
セロリの下処理は? 筋取りをして口当たりよくすること
セロリの下処理をしていきましょう。セロリにはアクが少なく、そのまま調理できますが、全体に筋が入っているので丁寧に取り除きます。「筋を取らなくても食べられますが、硬かったり口に残ったりするので、どんな料理に使うときもはじめにすべて筋を取ってから行います」
1.節を中心にして少し切り落とす。
「節の部分はすぼまっていて筋取りのきっかけが作りにくいので、節をまんなかにして前後を少し切り落とします。そこから筋を取りましょう」
2.包丁で筋を引っかけて取る。
筋のきっかけを包丁で引き、根元まで筋を取ります。
国際中医薬膳師が教える、
セロリが主役のごちそうレシピ3
セロリの筋取りが終わったら、いよいよ調理へ。今回は「ごはんもの」「汁もの」「漬物」の3レシピを紹介していただきましょう。
1.保存袋に漬けておくだけ!「コロコロセロリと梅の甘酢漬け」
セロリに梅肉とお酢を和えたお漬物。お弁当の端に入れるおかずにしたり、ピクルスのようにカレーに添えたり、もちろんごはんにも合う箸休めです。「梅干しは夏の養生食ですが、体に潤いを与え、熱を解放する力があります。冬場、乾燥してしまった体も中から潤すことができるので、冬から春にかけても摂りたい食材のひとつ。梅肉は叩いてペースト状にせず、皮の食感も楽しめるように刻むのがポイントです」
【材料(2人分)】
セロリ(茎)……1本
梅干し(塩分7%)……1個
酢……大さじ1と1/2
みりん……大さじ1
砂糖 ……大さじ1
塩……小さじ1/2
【作り方】
1. 筋を除いたセロリを2cmほどの長さに切る。梅干しも種を除いて小さく切る。
「ここでは茎だけを使います。葉は取り除き、別の料理に使いましょう」
2. 耐熱皿に調味料をすべて入れ、電子レンジで30秒加熱する。
「電子レンジで加熱したら、砂糖と塩がよく溶けるよう軽く混ぜます」
3. チャック付き保存袋にセロリと梅干し、調味料を入れて揉む。
「今回は塩分7%の梅干しで作っています。使う梅干しによって塩を加減してみてください」
4. 空気を抜いてチャックを閉じ、冷蔵庫で1時間以上冷やす。
「味が馴染んだら食べごろ。シャキシャキした食感と酸味の、爽やかな一品です」
2.滋味深くてホッとする「セロリとたまごのすまし汁」
和のすまし汁に、薄切りにしたセロリを合わせた、やさしい味のおすまし。風邪をひいたときや食欲のないときにも、すっと体に馴染んでいきます。「少しとろんとさせたセロリは、生で食べるのとはまた違った食感。生食できる野菜なので煮る時間も短くてすみ、パッと作れるのがうれしいレシピです。薄い色に仕上げるため薄口醤油(うすくちしょうゆ)を使っていますが、濃口(こいくち)でも作れます」
【材料(2人分)】
セロリ(茎)……1本
たまご……1個
だし汁……500ml
塩……小さじ1/4
うすくちしょうゆ……小さじ1と1/2
【作り方】
1.筋を取ったセロリを、2~3cmほどの斜め薄切りにする。
「薄めにスライスすると、おつゆとの相性がよく、柔らかく食べることができますよ」
2.鍋にだし汁を沸かし、塩とセロリを入れたら蓋をして中弱火で5分煮る。
「昆布と鰹節でとったおだしを使いましたが、好みのもので大丈夫です」
3.うすくちしょうゆを入れ、再度沸騰させてから溶きたまごを流し入れる。
「たまごは箸でワンクッション置きながら、細い線を描くように流し入れます。必ず沸騰したところに入れましょう」
3.桜海老がおいしさの決め手!「セロリと桜海老の塩チャーハン」
粗みじん切りにしたセロリが葉も茎もたっぷり入ったチャーハン。ニンニクと生姜で、しっかり風味づけしました。桜海老も入っているので、お肉なしでも充分に満足できる味です。「食べすぎて胃もたれしているときや、少し食欲がないな……というときにも、軽く食べられる味に仕上げました。お米にはお腹の調子を整える力があり、消化力が弱っているときにもおすすめです」
【材料(2人分)】
ごはん……400g
セロリ……1本
桜えび……8g
しょうが・にんにく(みじん切り)……1かけ
鶏がらスープの素……小さじ1/2
塩……ふたつまみ
粗挽き黒こしょう……適量
ごま油……大さじ1
【作り方】
1.筋を取ったセロリは、葉も含めて荒くみじん切りにする。
「セロリは葉も一緒に細かく刻みます」
2. フライパンにごま油をひき、しょうがとにんにくを入れて中火で熱す。気泡が出て香りが立ってきたら桜えびを加え、いい香りがしてきたらセロリを入れる。
「セロリがしんなりしてくるまで、中火で炒めます」
3. 強めの中火にして、ごはんを加えて炒める。
「チャーハンを作るときは、ごはんがべたっとならないよう、しっかりとごはんを炒めてから調味料を入れます。調味料を先に入れてしまうと、ごはんの水分が出てきてしまうんです」
4. 調味料を入れてよく馴染ませる。
「お好みで最後に黒こしょうをふりましょう」
季節の変わり目には、どうしても体調を崩しやすいもの。自分の体や季節に合った食材を選ぶだけで体を整えられる、という薬膳の考え方を、毎日の食生活に効果的に取り入れていきたいですね。
【プロフィール】
国際中医薬膳師 / 齋藤菜々子
飲食店経営の両親のもとに育ち、大学卒業後は一般企業に就職。忙しい日々の中で食事が心身の充実につながることを実感し、料理の道を志す。料理家のアシスタントを務めながら日本中医食養学会・日本中医学院にて中医学を学び、国際中医薬膳師を取得。「今日からできるおうち薬膳」をモットーに、身近な食材のみを使った作りやすいレシピにこだわり、家庭で毎日実践できる薬膳を提案している。書籍・雑誌・企業へのレシピ提供、webコラム連載、イベント出演など活動中。著書に『基本調味料で作る体にいいスープ』『基本調味料で作る体にいい作りおき』(ともに主婦と生活社)などがある。
『体にいい煮込みおかず』(ワン・パブリッシング)
薬膳の考えを取り入れた煮込み料理のレシピを収録。