Vol.144-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はAppleの「新型iPad mini」の話題。Apple独自の生成AI「Apple Intelligence」の展開において、iPad miniが狙う立ち位置とは何なのかを探る。
今月の注目アイテム
Apple
iPad mini
7万8800円~
Appleは例年、9月にiPhoneを発売する。そして10月・11月にはMacやiPadなど、残る主要製品を発売することが多い。今年もそうした部分に変化はなかった。10月なかばに「iPad mini」を、10月末に「iMac」「Mac mini」「MacBook Pro」を発売し、ラインナップ全体を刷新している。
基本的にはどれもプロセッサーの刷新が中心の内容だ。ここでプロセッサーを刷新するのは、その年の新技術を導入するため……という部分もあるのだが、特に今年については、「Apple Intelligence」の準備という部分が大きい。
Apple Intelligenceは生成AIをベースとした機能だ。複数のAIモデルを、クラウドに頼らない「オンデバイスAI」として動かす。そのためには、AIの推論を担当する「Neural Engine」と、より大きなメインメモリーを必要とする。
特にiPhoneとiPadについては、対応のハードルが少々高い。Macは2020年発売の「Appleシリコン搭載Mac」であれば条件を満たすが、iPhoneは2023年発売の「iPhone 15 Pro」シリーズか、今年発売の「iPhone 16/16 Pro」シリーズでないと対応できない。iPadについても、Appleシリコンである「Mシリーズ」搭載の製品のみが対象。iPad miniについては、今年発売の新機種でプロセッサーをiPhone 15 Proシリーズと同じ「A17 Pro」に切り替えて対応することとなった。
Appleとしては、販売する主要製品のほとんどをApple Intelligence対応とし、今後のソフトウエア基盤とする必要性がある。だから、ここで一気に各製品を刷新しておきたかったわけだ。現状、Apple Intelligenceに対応しないのは「iPad」と「iPhone SE」くらい。特別な価格重視モデル以外では使われる基本機能になってきた。
また面白いことに、Macについてはメインメモリーの拡充も行われた。新製品ではないものの、MacBook Air(M2もしくはM3搭載製品)の場合、価格据え置きのまま、最小メモリー容量を8GBから16GBに変更する措置が取られた。Apple Intelligenceは8GBでも動作するものの、十分な余力を生み出すには16GBの方が望ましい……と判断されたわけだ。
そんなことから、今年のApple製品は全体に“ちょっとお買い得”になっている。プロセッサーが高性能になったのは当然として、メインメモリーは増量され、ストレージ容量も増えた。Apple製品自体が全体的には少し高めの価格設定ではあるし、円安の影響を受けてはいるものの、“今年がお買い得”であるのは間違いない。特にメモリーについては、容量の増加だけでなくアクセス速度の向上もあり、実パフォーマンスの向上にも寄与している。
Apple Intelligenceは、日本では2025年4月以降に提供予定となっている。だから、Apple Intelligence自体を目的にApple製品を買い替えるのはまだ時期尚早と言っても良い。一方でメモリーや性能のことを考えると、Apple Intelligenceがなくてもお買い得であり、買い替えなどには良いタイミングと言って良さそうだ。
では、Apple Intelligence自体の評価はどうだろうか? その点は次回のウェブ版で解説する。
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