サムスンが2月14日に日本で販売を開始した指輪型のスマートデバイス「Galaxy Ring」を、約3週間に渡って試用しました。ちなみに、筆者はいつも健康管理やワークアウトの記録にApple Watchを活用しています。Apple Watchとの違いについても触れながら、Galaxy Ringの特徴をレポートしてみましょう。

多くのAndroidスマホに対応するスマートリング
Galaxy Ringは指に装着するフィットネストラッカー、いわゆるスマートリングで、スマホにBluetoothで接続して使います。Galaxyシリーズのプロダクトですが、GalaxyシリーズだけではなくAndroid 11.0以降のスマホに対応しています。iPhoneには非対応なので、残念ながらiPhoneユーザーの方にはおすすめできません。

今回筆者は、Google Pixel 9 ProをGalaxy Ringにペアリングして試しました。Galaxyシリーズのスマホを組み合わせた場合は、Galaxy Ringを装着した指と親指をダブルタップするフィンガージェスチャーで、スマホのカメラシャッター、時計アプリのアラームがリモート操作できます。今の時点では、それ以外に大きな違いはありません。Android 11.0以降のスマホユーザーはGalaxy Ringの購入を検討してもOKでしょう。
筆者は11種類ある本体サイズの中から「9」を選んで試用しました。人さし指に装着しようと思っていたので、少し太めのサイズにしています。カラーバリエーションはチタニウムブラックです。なお、ほかにチタニウムシルバーとチタニウムゴールドを加えた3色展開で、ブラックとシルバーの仕上げはマットフィニッシュ仕上げになっています。

Galaxy Ringは本体の素材を軽量チタニウムとしているので、重量約2.3グラムと軽量です。筆者は結婚指輪のほかにファッションアクセサリーとして指輪を着ける習慣がないので、ほかのファッション系リングと比較した時の大きさや重さは分かりませんが、Galaxy Ringの着け心地はとても快適だと思います。
リングのタテ幅が約7ミリ、厚みは約2.6ミリあるので「装着していることをうっかり忘れる」ようなことはないはずです。存在感はしっかりある反面、手をグーの形にしても痛くない程度の薄さに収まっており、睡眠中に着けていても苦に感じないことが魅力的です。この点はスマートウォッチに比べていいところだと思います。
スマートウォッチのように毎日充電不要。最長7日間のバッテリー持ち
本体は比較的深い水中にも身に着けたまま潜れる10気圧防水です。キッチン仕事の間に付着した洗剤も洗い流せば清潔に保てますし、故障の原因にはならないと思います。試用期間は約3週間でしたが、確認したところリングの表面に細かなキズが付くこともありませんでした。
注意点としては、本機に限らずスマートリングは今までにないタイプのデバイスなので、装着当初は紛失の可能性が考えられます。「Galaxy Ringのある生活」に慣れれば防げるケアレスミスだと思いますが、一応そういった場合のため、Galaxy Wearアプリから探索できる「リングリモート追跡」の機能が用意されていることは覚えておいていいでしょう。ただし、この機能はリング内側のLEDライトを強く点滅させるだけのもの。仮にリングがズボンのポケットの中にあったりするともうお手上げです。振動やビープ音などで場所を知らせてくれる機能もほしいと思いました。

バッテリーに関しては、Apple Watchのように本体に“電池食いのディスプレイ”を持っていないため、1度のフル充電から最長7日間も連続して使えます。ほぼ毎日充電が必要になるスマートウォッチに比べて優れているポイントです。筆者はGalaxy Ringを数日ごとにチャージしていたので、バッテリー切れになることはありませんでした。もし正確なバッテリー残量を知りたければ、Galaxy Wearアプリからパーセンテージで数値を確認できます。本機専用の充電ケースを使わないとチャージできないことが手間といえばそうですが、仮に数日間の旅行であっても、出かける前に満充電にしておくことで充電ケースを持たずに外出できるでしょう。
毎日の「エナジースコア」を計測してくれる機能が便利
Galaxy Ringには加速度センサーと光学式心拍センサー、そして指の皮膚温度を計測するセンサーが内蔵されています。ユーザーのヘルストラッキングに使う「Samsung Health」アプリと、デバイスの設定とカスタマイズを行うための「Galaxy Wear」アプリをAndroidスマホに入れて、クラウドのSamsungアカウントに記録されるデータから自身の健康状態をチェックします。

デバイスが記録するデータを元に、大きく3種類のヘルストラッキング情報をそれぞれのアプリから参照できます。
ひとつは「エナジースコア」という情報で、Galaxy AIを使って睡眠パターンやアクティビティ、心拍の変遷を総合的に分析してリングが採点してくれるデータです。Google Pixel Watch 3がユーザーの身体の回復状況をスコア化してくれる「今日のエナジー」という機能によく似ていると思います。そしてふたつめが「睡眠」トラッキング、3つめが「心拍数」です。
それぞれのトラッキングデータの数値とグラフの画面には、Galaxy WearとSamsung Healthどちらのアプリからでもたどり着けます。
余談ですが、Apple WatchにはwatchOS 11から「バイタル」というアプリが追加されました。ウォッチを装着して眠ると、翌朝に心拍数、呼吸数、手首皮膚温、血中酸素ウェルネスと睡眠時間の健康指標をバイタル値として知らせてくれます。Apple Watchの場合はバイタル値のスコアが「通常」と「異常値」の2種類だけであるのに対して、Galaxy Ringが計測して示してくれるエナジースコアは4段階に細かく分かれています。
また、アプリの画面から確認できるデータも多岐に渡っています。計測できるデータの種類はApple Watchの方が豊富かもしれませんが、Galaxy Ringはヘルストラッキングの基本的なデータをコンパクトに、見やすく整理していると言えそうです。そのため、健康管理のためのスマートデバイスを初めて使う方には馴染みやすいかもしれません。
Apple Watch Series 10とGalaxy Ringの両方を身に着けて眠った翌朝、計測されたデータを比べてみました。睡眠時の心拍数変動、呼吸数などのデータはほぼ一致しています。両方のデバイスで同時に図った「現在の心拍数」もだいたい同じです。1日歩いて計測した歩数も誤差は300歩前後の範囲でした。計測の性能に大きな差はないと思います。


Galaxy Ringのワークアウト計測は、歩数や活動時間、活動カロリーなどを調べつつ「エナジースコア」を参照する使い方が基本です。どちらかと言えばハードに運動したくなるモチベーションが高まるというよりも、日ごろから自分の健康状態を可視化して管理するためのワークアウト計測という印象を受けました。より積極的に心肺機能の変化を見ながらトレーニングしたり、筋力増強やストイックなワークアウトに没入するのであれば、デバイスの画面上で心拍数や活動量のリアルタイムな変化が見られるApple Watchのようなスマートウォッチが適しているでしょう。

価格は6万円。価値はあるが「Ringにしかできないこと」が増えてほしい
筆者は約3週間前にGalaxy Ringを装着した時に「え、けっこういいじゃん!」と直感的に気に入りました。今もその感動は色あせていないし、これからも長く使ってみたいと感じています。特に、現時点でヘルストラッキングやワークアウト計測をやっていない人にとっては「よし、Galaxy Ringからスタートしよう」と奮い立つだけの価値はあるでしょう。
一方で、本機の価格が6万円を超えていることを考えれば、導入には少々高めのハードルがあるとも言えます。加えて、Galaxy Ringでできることは大半がApple Watchで実現できていることでもあるわけです。既にApple Watchのようなスマートウォッチに慣れて、長く使っている人が「両方着ける」かと言われると難しいところではないでしょうか。

逆に言えば、これから「Galaxy Ringにしかできないこと」が増えてくると、6万円出して買う価値は大いにありそうです。スマートリング自体はApple Watchとの2台持ちも自然にできるデバイスですし、突破口になるのはフィンガージェスチャーだったり、Galaxy Ringに対応するサードパーティのデベロッパによる面白いアプリなのかもしれません。Galaxyのスマホとペアリングして使うのであればGalaxy AIと連携して、Sペンの代わりにGalaxy Ringを着けた手で「ハンドジェスチャーを使って画を描く」なんてことも、いつかは実現できそうです。いっそiPhoneとの連携にも対応する、なんてことがあれば嬉しい人も多いのではないかと思います。
サムスンがこれからGalaxy Ringをどんなデバイスに育てていくのか、とても楽しみです。