Vol.150-4
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はマイクロソフトのPC、新Surfaceの話題。同社はSnapdragonプロセッサーモデルの普及を目指しているが、その理由は何かを探る。
今月の注目アイテム
マイクロソフト
Surface
米国価格799ドル~(Surface Pro 12インチ)

ここ数年、個人向けのPC市場はマイナス成長だった。コロナ禍でPCの需要が伸びたものの、それがある種の需要の先食いとなり、市場が停滞する結果となっていた。他方で2025年はかなり調子が良い。今年の頭から売れ行きはよく、年率10%の成長が見込めるのではないか……との予測もある。
2025年のPC市場が伸びると予測されているのは、Windows 10のサポート期間が10月14日で終了するためだ。その時期に合わせてPCを買い替えるのは企業が中心ではあるが、個人市場にももちろん買い替え需要は存在するため、市場全体は成長するものと予測されている。
そこでCopilot+ PCのような新しいプラットフォームが前向きに支持を受けてヒットする……と断言するのは難しい。前回の連載でも触れたが、Copilot+ PCの価値がまだ周知されていないためだ。特に個人向けとなると、Copilot+ PCによるAIの価値や、Snapdragon採用による省電力性の評価はまだ定着しておらず、今年の後半に向けてようやく認知が高まるのではないか……と予想している。そのなかで、比較的低価格な「廉価版Surface」と言える13インチ版Surface Laptopと12インチ版Surface Proは、かなり重要な製品になりそうな予感がする。
一方、大量に売れる製品ではないものの、“AI処理を重視した超ハイエンドPC”も出てくる。この領域は、デスクトップPCにNVIDIA GeForce RTX 5090のようなハイエンドGPUを搭載したものか、メインメモリーを128GB搭載したMacBook Proなどが人気だった。クラウドではなくローカルなPCで生成AIを動かすには、超高性能なGPUと圧倒的に大容量な高速メインメモリーが重要で、ハイエンドのMacはそうした領域での人気も高まりつつある。
そんな中、AMDが「Ryzen AI Max+ PRO」の提供を開始した。こちらはノートPC向けであり、GPUとしては“プロセッサー内蔵としては高性能”と言うレベルであるものの、メインメモリーを最大128GB搭載し、その帯域も256bit幅のLPDDR5x-8000と、一般的なノートPCの倍になる。M4 Pro/Maxを採用したMacBook Proと十分競合しうるレベルであり、AI向けとして選択肢が増えた……と言っていいだろう。
繰り返しになるが、こうした製品は価格が高い(メモリー128GB搭載となると70万円以上)ため、マスに売れることはない。しかし、AIを活用したい・アプリを作りたいという人は増えており、ハイエンドなゲーミングPCと並ぶ重要な市場になってきている。
高性能なPCといえばゲーム、という時代が長かったが、AIの時代になり、個人開発のために“AIに向いた高性能なPC”というニーズが出始めているのは、今年の傾向と言えるのではないだろうか。
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