最近、VR(仮想現実)が新時代のエンターテイメントとして世の中に定着しつつあります。都内でVR体験スポットが増えているだけでなく、一部カラオケ店でも本格的なVRコンテンツが楽しめる機器の提供をスタート。VRゲームを愛する人たちの間で注目を集めています。
しかし、浸透すればするほど、ますます気になるのが健康面への影響。VRに夢中になって視力が低下したり、斜視になったりしないか心配ですよね。子どもの頃、大人から「目が悪くなるからテレビは離れて見なさい」「ゲームばかりしていると目が悪くなるよ」と言われて育った私たちにとって、画面を長時間注視するのは不安もありますよね……。
ところが、その考え方は真逆の様子。なんと、VRは子どもの視力回復効果が期待できるとの研究結果が報じられ、海外で話題を呼んでいるのです(本記事ではVRによる「斜視のリスク」ではなく、視力回復面について掘り下げていきます)。
実験により視力向上が明らかに!
テクノロジーの開発や映像制作を行う中国・北京の研究機関アドバンスド・イノベーションセンターが、HTC社のViveやオキュラス社のオキュラスリフトのように仮想距離が適切に設計されたハイエンドVRヘッドセットを装着することで、10代前半の子どもの視力を回復できるのではないか、という見解を発表しました。
同機関の研究によると、一部のケースで子どもの近視と遠視が実際に向上したことが確認できたそうです。これは、VRが子どもの視力にどのように影響するのかを検証する実験データが根拠となっています。
実験は中国在住の9~12歳の子ども計50人を対象に行われました。VRデバイスの仮想画像距離は1.7メートルあり、一般的なタブレットの焦点距離(0.3~0.45メートル)と比べると長いです。
研究者たちは、このより大きな焦点距離が子どもの視力の改善に効果があると考えています。今回の実験ではGoogle社のVRお絵かきソフト「Tilt Brush」が子どもたちの視覚に与える影響をテストされましたが、実験後、ほとんどの子どもたちに目の疲労は見られず、視力が変化していないどころか、むしろ視力が向上したという結果が得られたのです。
子どもたちは実験前に視力測定を受け、VRアプリを20分プレイした後、再度視力測定を受けました。さらに、プレイ開始から40分後と60分後にも視力測定を実施。プレイ後はアプリを見ないようにし、休憩を取り、休憩開始から10分後と20分後に再度視力測定を行いました。アプリのプレイにはVRヘッドセットとタブレットの両方を使用し、ヘッドセットでプレイした子どもの14%、タブレットでプレイした子どもの7.7%に視力向上が確認されたのです。仮想映像の距離と時間が目にそれほど疲労を与えることなく、良い影響を与えたと考えられています。
これはまさに目からウロコ! VRが普及し、技術が進歩することにより、視力への悪影響が懸念されてきましたが、この研究はその考えを覆す革新的な一歩になりそうです。今回の実験では、最大1時間のプレイによる視力への良い影響が証明されましたが、時間だけでなく使用するデバイスやアプリ、さらにVR機能のレイテンシー(動作の遅延)、仮想イメージの距離、解像度など、様々な条件によって結果は変わるかもしれません。今回使用したアプリも、画面の変化がそれほど激しくないものだったことも、目に疲労を与えなかった理由の一つでしょう。今回の実験では、1時間程度であれば、VRゲームのプレイは9~12歳の子どもには悪影響はないということが判明したというわけです。
このニュースに世界中が仰天!
今回の実験結果は世界中を揺るがす大きなニュースとなっています。ツイッターでも実験結果を報道するニュースサイトへのリンクが次々とリツイートされ、話題になっています。
海外の掲示板サイトRedditではこんな会話が繰り広げられています。
「これはすごいことだ! 今後、エンターテインメントとしてだけではなく、視力回復のためにVR技術が使われたデバイスが出てくるかもしれないよね」「最近受けた視力テストで視力が良くなっていたんだけど、VRで遊んでいたおかげなのかな。医師は不思議だけどこんなこともあるのかと言ってたけど、その時はまさかVR効果だなんて考えもしなかったな」「世の中のほとんどの母親は子供にVRで遊び続けると目が見えなくなるって叱ってるよな」「タブレットを使う時に1.25メートルも離れるか?」など、みなさん興味津々の様子。
VRは13歳未満の子どもの使用による斜視のリスクが指摘されていますが、今回のレポートはその点について言及していないので、慎重に受け止める方が良いでしょう。VRはまだ開発途上の領域だけにさらなる研究結果が待たれます。もし今後、今回の実験結果を裏付ける新事実が確認され、斜視の問題も解決されたら、Redditで述べられていた意見のように、視力回復目的のVRデバイスを開発する企業が増えそうですね!