3×3のバラバラになった立体パズルから6面をそれぞれ同じ色で揃えるゲーム、ルービックキューブ。できるだけ早く解くためには、空間把握能力などが必要と言われています。そんなルービックキューブにAIが挑み、人間の世界記録を突破したことが今月、「Nature Machine Intelligence」で発表されました。ルービックキューブにおける人間とロボットと人間それぞれの記録とともにご紹介しましょう。
たった2日間で……
ルービックキューブのAI開発に取り組んだのは、カリフォルニア大学アーバイン校のコンピューターサイエンティストと数学者たち。彼らは「DeepCubeA」と名づけられた深層強化学習アルゴリズムを開発しました。完成したルービックキューブのコンピューターシミュレーションからはじめ、キューブをバラバラにしていき、コードを取り込み、DeepCubeAを実行すると、このアルゴリズムはわずか2日間で自ら学習していったそう。
ルービックキューブの世界トップクラスの選手たちの試合はわずか数秒間で勝負がつきます。そのため記録達成には、いかに最短の経路で解けるかが鍵。人間の場合、トップクラスの選手でも50手ほどが必要になるそうですが、DeepCubeAは、ほとんどの場合20手ほどで解き、その時間は平均1.2秒だとか(後述するようにこの時間は人間の世界記録より2秒以上早い)。DeepCubeAの構成テストにおける解決率は100%で、そのうち約60%で最短経路で解決することができたそうです。この結果、人間のトップクラスの選手よりも早く解けるAIが発表されることになりました。
3.47秒: 人間の世界記録
では、人間がルービックキューブに挑んだ結果はどのくらいでしょうか。ルービックキューブの世界大会では、世界中から猛者たちが集まり次々と世界記録が打ちたてられています。現在の世界記録は、2018年大会に中国の選手が出した3.47秒。世界トップ100の選手たちの記録はすべて6秒以内で、トップ100には日本人選手2名も名前を連ねています。
0.38秒: 世界最速ロボット
AIではありませんが、0.38秒と瞬時にルービックキューブを解いてしまうロボットがいます。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が2018年に発表したもので、彼らは高性能の電動モーターを開発したそう。0.38秒というと、人間の目では追いつけないほどの一瞬の出来事。まばたきしている間(通常0.3秒と言われている)にルービックキューブがほぼ完成しているのです。
人間がこなす4秒たらずの早業も驚愕ですが、ロボットやAIの神業も目を見張るものがあります。現在世界最速記録を保持しているのはMITのロボットですが、あらゆる分野で発展がめざましいAIが、いつかこの記録を抜くかもしれませんね。