エンタメ
2016/4/5 19:00

“西海岸系”中年男の恋と青春……ちょっぴりシリアスな大人のコメディ「フレークド」

潮風になびくパームツリー、サーフィンやスケボーに興ずる若者、露出度高めのファッションで闊歩するおねいさん……。これぞ“THEアメリカ西海 岸”な風景が広がるヴェニス(ビーチ)。家具デザイナーのチップ(ウィル・アーネット)とその友人たちは、そんな陽光あふれるカリフォルニアの空の下に不 釣り合いな影を背負って生きています。それはアルコール依存症の影にいつも怯えていること。

 

一応「コメディ」とアナウンスされていますが、どちらかというと、立ち退きや格差、絶望といったダウナー系なエピソードも多く挿入されているので、テンションは平常で挑むのが正解だと思われます。

 

これってラブストーリー!? と思いきや意外な展開に

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主人公・チップは、お金は無いけれど人望は厚く、断酒サークルでは後見人を務め、再開発反対の住民運動にも参加する中年男。ちょっとセクシーで、(よく言えば)少年の心を持った自由人なので、当然女性にもほどほどにモテてうらやましい限り。ただ、アルコール依存症に因る飲酒運転で死亡事故を起こしたという”影”を抱えています。

 

相棒であるデニスはワインのブローカーを営み、留学経験もあるおぼっちゃまですが少々潔癖の気がある非モテ系。彼もアルコール依存症に苦しんでいる仲間ですが、その原因は母親の溺愛。何とか断酒はできたものの、40歳過ぎた今も母親を憎みつつも離れられないという面倒くさい関係。そんな2人の前にロンドンという名のブロンド美人が現れるところからドラマは始まります。しかも、彼女はひょんな事からチップが経営する家具屋の2階で暮らすことに!

 

と、カリフォルニアを舞台にしたラブストーリーかと思いきや、前述のようにメインの登場人物がアル中というハンディを背負っているため(チップのガールフレンドも断酒を始めてやっと1年という設定)、ウエストコーストの風のようにサラリとはいきません。しかも、回を重ねるごとにチップの過去や意外な人脈があらわになるので、あっという間に最後の8話まで見てしまいます。

 

セレブのあいだで流行する“コンブチャ”に注目!

個人的に注目したのが、チップが日常的にkombucha(コンブチャ)を飲んでいること。日本の昆布茶ではなく、70年代に流行った「紅茶キノコ」がアメリカに渡り、セレブたちの間で人気が出てそう呼ばれるようになったとか。昨年あたり、世界的に有名なトップモデルのミランダ・カーが愛飲してるとメディアで話題になりました。

 

私の周囲でもオーガニックに関心が高いクラスタが愛飲していて、ちょうど株を分けてもらったところだったので、「ハリウッドセレブが愛飲するようなものをおっさんも普通に飲んでいるとは、さすがカリフォルニア! オサレだなぁ〜」と感心しながら見ていましたが、実はこれがいろいろな伏線になっているのです。チップにコンブチャを教えたセレブ(と思われる人物)は誰なのか?コンブチャの中身は実は……。

 

カリフォルニアの景色と音楽を楽しむのも良し

チップの友人の売れないコメディアン・クーラーは、ヒッピーやビートニクといった古き良きカリフォルニアを、チップが後見人になる若きIT長者トファーは、シリコンバレーに代表される現代のカリフォルニアを体現しているので、キャラクターを通してその変遷を俯瞰するのも興味深いです。ただ、登場人物のほとんどが異性愛者なのがちょっとカリフォルニアっぽくないかなと(偏見?)。

 

カリフォルニアはカウンターカルチャーも盛んということで、注目したいのはやっぱり音楽! サントラ盤への参加が発表されているのは、ペイブメントのスティーブン・マルクマスやボン・イヴェールのショーン・キャリー、ユースラグーンといった、いわゆるオルタナ系ロック界隈のアーティストです。パームツリーが映える街を、自転車でさっそうと駆け抜ける(各エピソードが、ヴェニスのストリートの名前になっています)ウィル・アーネットの姿をBGVにして音楽を堪能するのも、また違った楽しみ方かもしれません。

 

ぶっちゃけ、シーズン2に続くとしか思えない、新たな問題と謎を残したままの終わり方。1話30分ほどですので、話題になる前ににさくっと見ておいた方がいいですよ!

 

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