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2024/12/26 19:30

体感温度は湿度で決まる!加湿器の正しい選び方と設置のコツを家電のプロが解説

空気の乾燥が気になる冬。エアコンなどの暖房器具を使うことでさらに空気はカラカラに。空気が乾くと、肌がかさついたり風邪を引きやすくなったりと、デメリットだらけです。

 

そこで今回は、適度な湿度を保った部屋にするための「加湿器選びの基本」を、家電プロレビュアーの石井和美さんに教えていただきました。

 

 

加湿で乾燥を防ぐとどんなメリットがある?

まずは加湿器を使うことでどんな効果が得られるのでしょうか?

 

「加湿器を使う一番の目的は、もちろん乾燥を防ぐこと。特にシニア世代には空気が乾燥していることに気がつかず、加湿器を使わずに過ごしている人が多くいます。その結果、肌がかさつく人や、のどを傷めて風邪を引いてしまう人も少なくありません」(家電プロレビュアー・石井和美さん、以下同)

 

加湿器で空気の乾燥を防ぐと、次のような利点が生まれるといいます。

 

・肌の乾燥を防げる
・のどの乾燥を防ぐことで、ウイルスによる風邪やインフルエンザの予防につながる
・花粉やほこりが舞いにくくなり、アレルギー対策につながる
・加湿することで部屋が暖かくなる

 

「実は部屋が乾燥すると、体感温度が下がり寒いと感じるようになります。反対に、湿度が高くなると暖かいと感じるように。なので、寒いからといってエアコンの温度を上げて、さらに部屋を乾燥させるのではなく、加湿器で湿度を上げて体感温度を上げましょう。そのほうが効率よく部屋も暖まりますよ」

 

とはいえ、肌がかさついたりかゆくなったりして、はじめて部屋が乾燥していることに気づくという人も多いでしょう。加湿器はどのタイミングで使い始めたらよいのでしょうか?

 

「部屋の湿度が50%以下になったら、スイッチを入れる目安です。体感で乾燥していることがわからなくても、50%を切ったくらいから加湿器を使いはじめると、部屋の湿度が戻ってきたときに、さっきまで乾燥していたんだと実感できると思います。スイッチを入れるタイミングに気づくためにも、湿度と温度が測れる温湿度計を部屋に置いておくとよいでしょう」

 

加湿の仕組みによって
加湿器は4種類に分けられる

ひと口に加湿器といっても、加湿する仕組みの違いによって大きく4種類に分けられます。それぞれの特徴やメリット・デメリットを教えていただきました。

 

1.超音波式

「タンク内の水を振動板で振動させ、ミスト状にして出すタイプの加湿器です。最も商品数が多く、家電量販店だけでなく雑貨店などでも見かけます。白い煙のようなミストがふわっと出るのが特徴です」

 

メリット
「音が小さいことと、消費電力が少ないこと。あとはデザイン性が高いものが多く選択肢が豊富です。手ごろな価格の商品が多いのもポイント」

 

デメリット
「タンクをきちんと洗浄しないと、タンク内に雑菌が繁殖し、ミストと一緒に雑菌をまき散らすことになるので、こまめなお手入れが必要です。また、水に含まれるミネラル成分が結晶化して本体内に残ってしまうことがあります。ふとした瞬間にこの結晶が外に出て、家具などにつくとなかなか取れず厄介なので、きちんと掃除ができる人に向いたタイプといえるでしょう」

 

2.スチーム式

「湯沸かしポットと同じ構造で、タンク内の水を沸かして発生した蒸気で加湿するタイプです」

 

メリット
「グツグツと沸かした蒸気が出るので、部屋が暖まりやすいのが特徴です。また、沸騰させることで雑菌の繁殖が抑えられ、衛生面でも優れています。お手入れも簡単で、ポットと同じようにタンク内の水を捨てて中を軽く洗うだけ。昔から存在するタイプではありますが、衛生的なことからここ数年人気が高まっています」

 

デメリット
「お湯を沸かすのにパワーが必要なので、消費電力は高くなります。また、吹き出し口が熱くなるので、小さいお子さんがいる場合は触れないように注意が必要です。人気が高まっていることもあり、最近、このタイプの加湿器による火傷などのトラブルが増えているので、取り扱いには注意しましょう」

 

象印の「EE-TA60」(実勢価格2万8320円・税込)はスチーム式の代表格。「ポットをそのまま加湿器にしたような見た目が特徴的なロングセラー商品です」

 

3.気化式

「フィルターに水を含ませ、風を当てて水分を放出させるタイプ。濡れたタオルに扇風機の風を当てるようなイメージです」

 

メリット
「ヒーターを使わないので、消費電力は少なくて済むのが魅力。また、部屋の加湿のしすぎを防げるので、窓の結露や室内のカビの発生も抑えられます。加湿スピードはゆるやかですが、最近はフィルターを2つ搭載し、加湿力を高めた機種も出ています」

 

デメリット
「ファンを回して風を起こすので、ファンの音が気になるという人もいます。風が出るので、近くにいると寒く感じるのもデメリットですね。また、フィルターが汚れやすいため、こまめなお手入れが必要です。水洗いをこまめに行っていても、クエン酸に漬けないとしっかり汚れが取れない商品もあります」

 

4.ハイブリッド式

「ハイブリッド式は、前述した3種類のタイプから2種類を組み合わせたもののこと。代表的なのは、スチーム式と気化式を組み合わせた『加熱気化式』。あとは、スチーム式と超音波式を組み合わせた『加熱超音波式』も最近、出回るようになりました」

 

・加熱気化式
「水を吸い上げたフィルターに温風を当てて、素早く蒸発させるタイプで、スピーディーに加湿できます。気化式同様、濡れタオルにドライヤーを当てるようなイメージです。雑菌の放出も抑えられます」

 

・加熱超音波式
「超音波式は雑菌をまき散らす可能性があるとお伝えしましたが、加熱超音波式の場合はタンク内の水を一度加熱するので、雑菌が繁殖しにくいのが特徴です。超音波式の衛生面のデメリットを解消したタイプともいえます」

 

部屋のタイプと広さが合っているか要チェック

加湿器の種類と特徴がわかったところで、お部屋に合った加湿器を選ぶポイントをみていきましょう。

 

「ご紹介した4つの加湿器のタイプは、木造や鉄筋、洋室、和室など、どんな部屋で使っても問題ありません。ただ、商品によって対応する部屋のタイプとサイズが異なるので、その点は注意しましょう。
商品スペックを見ると、『プレハブ洋室〇畳まで』『木造和室〇畳まで』というように、部屋のタイプ別に何畳まで対応するか目安が書かれているので見逃さないように。
一般的に、気密性の高い鉄筋(プレハブ)よりも、木造の方が加湿するのにパワーが必要になります。家のタイプや部屋のサイズに合った商品を選ぶようにしましょう」

 

実際に試して見つけた!
家電のプロお墨つき加湿器

自宅でも1部屋に1台加湿器を使っているという石井さんに、実際に使用して特によかったというおすすめの加湿器を紹介いただきました。

 

・加湿スピードが速い&使い捨てのフィルターつきでお手入れが簡単!


ダイニチ工業「ハイブリッド式加湿器LX TYPE(HD-LX1024)
オープン価格(実勢価格4万2000円前後・税込)

加湿量960mL/h
プレハブ洋室27畳まで/木造和室16畳まで
サイズ:高さ405×幅390×奥行き245(mm)
タンク容量:7.0L

 

加熱気化式(スチーム式と通常の気化式)のハイブリッドタイプで、パワフルに素早く加湿が可能。湿度が高まったところで気化式に切り替わるので、電気代の節約にもなります。

 

つけてすぐにパワフルに加湿してくれます。お手入れがとっても簡単なのも魅力。気化式の場合、フィルターを使うのでお手入れの手間がかかるとお伝えしましたが、こちらはフィルターが使い捨てタイプ(別売り)なので汚れたら捨てるだけ。洗う手間がなくなります。
また、一般的にはフィルターが入っているトレイも汚れがちなのですが、これはトレイに使い捨てのカバーがついているんです。なので、汚れたらカバーを取り替えるだけと便利です」

 

LX TYPEは、プレハブ洋室なら27畳まで対応する大部屋向けですが、ひとり暮らしのお部屋や寝室など、狭い部屋では、次の商品がおすすめだそう。

 

ダイニチ工業「ハイブリッド式加湿器RXT TYPE(HD-RXT524)
オープン価格(実勢価格2万2000円前後・税込)

加湿量500mL/h
プレハブ洋室14畳まで/木造和室8.5畳まで
サイズ:高さ375×幅375×奥行き175(mm)
タンク容量:5.0L

 

「LX TYPEと同様、使い捨てトレイカバーなどを備えたお手入れが簡単なタイプ。サイズがLX TYPEよりも小さいので、棚の上などに置くこともできます」

 

・煙突みたいなデザインがかわいく、高い位置からの加湿も可能


レコルト「UVハイブリッド式加湿器
1万5400円(税込)

プレハブ洋室10畳まで/木造和室6畳まで
サイズ:高さ325×幅240×奥行き180(mm)
タンク容量 約2.8L(およそ1日分を推定)

 

加熱超音波式(スチーム式と超音波式)のハイブリッドタイプ。噴射されるミストは、加熱されているだけでなく、抗菌カードリッジによるA+イオンの効果、UV-Cライトの照射も組み合わされているので、高い除菌率を実現しています。

 

「加湿器から噴射された水分は下の方に落ちていくので、効率よく加湿するには高い位置から加湿するのがコツ。そのため加湿器はスツールや棚の上に置くのがおすすめです。
その点、本品は、ミストの噴射口を煙突のように伸ばすことができるので、ミストを高い位置から出すことができます。見た目も煙突みたいでかわいいですし、機能的にも優れているという点でおすすめしたい商品です」

 

ミストパイプをつけることで、高さを3段階に変えることができます。

 

超音波式をはじめ、デザイン性の高い加湿器も多く販売されていますが、加湿器はデザインよりもまずは機能性を重視してほしいと石井さん。

 

「加湿器は水を扱うものなので、デザイン重視で選ぶのではなく、加湿力の高さや衛生面で問題ないかを重視して選んでください。そのうえで、レコルト『UVハイブリッド式加湿器』のようにかわいいと思うものを選んでほしいですね」

 

また、最近は空気清浄機と加湿器が一体型になった商品も多数登場しています。

 

「日本は欧米にくらべ家や部屋が狭いため、空気清浄機と加湿器のように、2つの機能を1台にまとめた商品に人気が集まります。ですが、加湿器が水分を“出す”のに対し、空気清浄機は空気を“吸う”もの。つまり機能が相反するんです。
加湿器が加湿したそばからその空気を空気清浄機が吸ってしまうと、加湿効率が落ちてしまいます。ちゃんと加湿をしたいのであれば、加湿器は加湿機能のみに特化したものを選ぶことをおすすめします」

 

効率よく加湿するには?
加湿器の正しい使い方

加湿器で効率よく加湿するためには、設置場所選びや使い方にもコツがあります。石井さんに気をつけたいポイントを教えていただきました。

 

・置き場所

「窓際に置くと結露によってカビが発生することがあるので、なるべく窓から離れた高い位置に置きましょう。また、換気扇や空気清浄機などのそばに置くと、せっかく加湿した空気が吸い込まれてしまうので、ここもなるべく離しましょう。超音波式のようにミストが出るものは、テレビやパソコンなどの近くに置くと機器に水がかかって危ないので、近くには置かないようにしてください」

 

・つける時間

「一日中つけっぱなしにすると、それはそれで部屋の湿度が高くなりすぎてしまい、場合によってはカビが発生する原因にもなるのでおすすめしません。寝るときも、つけっぱなしにするよりは1〜2時間程度で切ったほうがよいでしょう。
適度に加湿されたら自動で止まるセンサーつきの加湿器もあるので、そういったものを取り入れてもいいですね」

 

・掃除の頻度

「機種や商品によって異なりますが、水を扱うのでなるべく清潔に保ちましょう。スチーム式の場合は、タンク内の水を捨てるタイミングでざっと洗えばOKという商品もたくさんあります。
反対にフィルターを使う気化式であれば、こまめにフィルターのお手入れをする必要があります。取扱説明書を読み、その通りにきちんと掃除するようにしてください」

 

・サーキュレーターと併用で効率化

「部屋全体をむらなく加湿したいのであれば、サーキュレーターを併用するのが効果的です。部屋全体が加湿されて湿度のムラがなくなりますし、エアコンの温度を上げなくても効率よく部屋を暖めることができます」

 

この冬はぜひ、自分に合った加湿器を見つけ、正しい使い方で潤うお部屋づくりを実践してみてください。

 

 

Profile


家電プロレビュアー / 石井和美

家電プロレビュアー歴15年。白物家電や日用品の製品レビューを中心に、新聞、雑誌、WEB媒体や企業のオウンドメディアなどでも多数執筆中。家電をテストするための一戸建てのレビューハウス「家電ラボ」のオーナー。
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