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ランニング
2022/11/5 20:45

名門ニューバランス、新たなランニング文化への本物の“厚底”戦略/「大田原 透のランニングシューズ戦線異状なし」

【商品企画に聞く③】ニューヨークのランカルチャーとは?

では、海外ではどうなのだろう? 北米のボストンに本社機能を持つニューバランスは、ランニングカルチャーの先進エリアのひとつでもあるニューヨークとの結びつきが深い。

 

「ニューバランスは、ニューヨークロードランナーズという組織と複数年の契約を結んでいます。この組織は、世界最大規模の『ニューヨークシティマラソン』の運営をしていますが、同時にエリアのさまざまなランニングコンテンツにも協賛しています。そうした草の根的な情報もこまめに得て、日本での応用を検討しています」(間宮さん)

 

そうしたランニングカルチャーの先進的な事例、日本のランニングカルチャーへの翻訳をニューバランスは近年積極的に続けてきた。先ほどのランニングに何かを掛け合わせるイベントだけでなく、「マイルレース」と呼ばれる1600m走への取り組みもそのひとつだという。

 

「ニューヨークのイベントでも、先頭を走っている方たちは確かにガチなランナーたちですが、後ろの方々は、楽しく走るパレードのノリです。日本でも、自治体と一緒に“新しい走る環境作り”にも取り組んでいるところです」(間宮さん)

 

1600mという中距離を走る、大都市型のショートなイベント。従来の中距離のレースが持つコンペティティブな面を残しつつ、エンタメ要素も付加していく……。こうした新たなランニングカルチャーを育てていく動きは、ランニングシューズ界の名門ニューバランスならではの発想だ。

 

【商品企画に聞く④】シューズ開発、2つの軸

では、こうしたランニングカルチャーに応えるシューズとして、ニューバランスは何を重視しているのだろうか?

 

「他社にはないオリジナリティやユニークさは、シューズの開発で重要視しています。さらに、走られる方が、より競技志向なのか、より健康志向なのか。大きくこの2軸のカテゴリーで、ニューバランスはシューズをご用意しています」(間宮さん)

 

続く間宮さんの話を、簡単にまとめると以下となる。

 

【ニューバランスのランニングシューズ開発、2つの軸】

▶ 速く走りたい競技志向の方に向け、反発性をより重視=「フューエルセル」シリーズ

▶ 楽しく走りたい健康志向の方に向け、クッション性を重視=「フレッシュフォーム」シリーズ

 

ランニング向けのシューズを2つに大別し、商品名の冠に「フューエルセル」もしくは「フレッシュフォーム」を打ち出し、分かりやすく提示している。例えば、次回紹介する「Fresh Foam X More v4」、3回目に紹介する「FuelCell Rebel v3」(11月5日発売予定)といった具合で、商品名自体に込めているのだ。

 

「シューズ開発で大切なのは、走るひとのニーズに応えることです。その機能を司るのが、ミッドソールという部材です」(間宮さん)

↑次回紹介する「Fresh Foam X More v4」。早く履いて走りたくてムズムズしている私

 

【商品企画に聞く⑤】“厚底ブーム”の正体は、ミッドソール!

ミッドソールは、足を包むアッパーと、地面に接するアウトソールの中間にある、着地時の衝撃緩衝のためのクッション性、推進力を生みだす反発性のあるフォーム。上記の「フューエルセル」も「フレッシュフォーム」も、まさにニューバランスご自慢のミッドソールのカテゴリーを示す総称なのだ。

 

「大きく言えば、『フューエルセル』も『フレッシュフォーム』も、いずれも素材はEVA(イーブイエー)です」(間宮さん)

 

EVAは、発泡ゴムとも言われる、ミッドソールに使用される一般的な素材名である。しかしEVAは、混ぜ合わせる原料の配合や成型時の発泡の密度を変えることで、さまざまな特性を持たせられるため、各社とも研究開発を一瞬も止めるワケにはいかない素材でもある。

 

ミッドソールをクルマに例えると、エンジンとシャシーを一体にしたモノと言っても過言ではない。まさに、ランニングシューズの心臓部なのだ。ニューバランスが、商品名の冠に打ち出す理由も、まさにココに在る。さらには厚底ブーム”の正体も、ミッドソール開発競争の申し子として生まれたと言える。

↑“Head to Toe”をスローガンに、ニューバランスはランニングアパレルを強化。全てのランナーのニーズに応える高機能の「Impact」シリーズ。いよいよスタートを開始したファッション性重視の「Q Speed」シリーズ。そして、汎用性の高いアパレルを提供する「Accelerate」シリーズ。急ピッチで、各陣容を整えている

 

次回は、厚底ブームへの挑戦状「Fresh Foam X More v4」レビュー

「現在のところ、ランニングシューズに求められるニーズを満たそうとすると、EVAの特性をフルに生かした方が近道だと考えています。もちろん近い将来、全く違った素材が登場するかもしれません」(間宮さん)

 

ミッドソールの素材開発は、ランニングメーカーたちの開発競争の主戦場だ。EVA以外にも、プラスチック系のエラストマーもメジャーになりつつあり、モデルチェンジのたびに、その素材からは目を離すことができない。

 

いよいよ次回からは、クラシックな風貌も持つパフォーマンスライン「Fresh Foam X 860 v13」の大ヒットしているニューバランスが投入する期待の2足を、2回にわたってご紹介しよう!

 

2回目は、ニューバランスとしての“厚底ブーム”への回答となる、「Fresh Foam X More v4」。そして3回目は、大幅な仕様変更となった期待の万能シューズ、「FuelCell Rebel v3」。いずれも、私の実走レポート付きです!

 

撮影/中田 悟

 

 

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