プーマ=“お店で出逢える”ブランドを目指す
ランニングシューズの企画開発のレジェンドである萩尾さんは、4年前にボストンから日本へ拠点を移した。その理由は、日本におけるプーマブランドの成長。そして3年後、グローバル企業であるプーマは、販売の責任者であった萩尾さんを日本支社の社長に据える。プーマの“本気度”は、半端なものではない。
「今は、本当に“ちゃんと一緒に取り組みをしていきましょう”という意識を感じられるお取引先を中心にお取り扱いいただいています。取り扱いを拡げても、お店に来るお客さまが手に取ってくれなければ、最終的にはマークダウン(値引き)です。選手が履いて信頼性を高めようとしている一方で、店頭で何%オフっていうのは、やはり正しくありません。
お店のスタッフも、プーマのシューズを履いてくれていて、お客さまに“良かったです”というコミュニケーションができる環境を整えています。昨年やったことは、試し履きイベントです。週末、プーマのスタッフを、さまざまなスポーツショップへ派遣して、お客さまひとりひとりとのコミュニケーションを、丁寧にやっています」(萩尾さん)
確かに、ネット通販の拡大などを受けて、店舗でのイベントは減少している。しかも新型コロナの流行は、こうした流れを一気に加速した。ひと昔前は、萩尾さんの指摘するように、毎週末、新製品の販促イベントで小売店の店頭は賑わっていたのだ。“お店で出逢う”楽しみを、無くすには余りに惜しい体験だ。
「今年はさらに拡大して、店頭でプーマの製品を試すだけでないイベントを、主要都市を中心にしようと思っています。それは、シューズを実際に履いて、プーマのメンバーと、普段できない練習を体験するイベントです。製品の良さを体験してもらって、“こんな走り方すると、この機能ってすごく出せるんですよ”ということをしたいのです。お客さまが製品の良さを感じてもらえるアクティビティを、グラスルーツでやっていきたいのです」(萩尾さん)
ビジネスミーティングは、走りながら(例えじゃなく、マジで!)
「お取引先とのミーティングも、走りながらすることが少なからずあります。先日も、九州のある専門店さんが東京に来られた際、スケジュールがないので、朝7時に皇居で待ち合わせて、1時間ほど走りながらミーティングしました(笑)」(萩尾さん)
萩尾さんは、社長にしてランナー。例え話ではなく、実際にビジネスミーティングを走りながら行う。かく申す筆者も、以前、ニューヨークで行われたプーマの記者発表の朝、一緒に走りながら開発秘話を聞き出した。萩尾さんは、ビジネスでもタフだが、マインドとフィジカルはさらにタフなのだ。
「しかし今、個人的に大切にしているのは、走り続けるカラダの維持です。フルマラソンなどを頑張ってしまうと、怪我して走れなくなります……。実際私自身がそうなりかけていたので、毎朝、自分のカラダと相談しながら走っています。走るのは朝なので、ペースは5分半ぐらいからスタートして、上げても4分40ぐらいまでですね。月間の走行距離は、300~350㎞ほどでしょうか。まぁ、日課ですから。マラソン大会に行きましょうって、お取引先の方からも、いつもけしかけられています(笑)。
カーボンが入っているシューズは、ストライドの伸びが、やはり全然違います。一般の人たちにも、カーボンによって、もっと気持ちよく走れる感覚を得てもらいたいと思っています。今回、実際に試してもらうシューズは、“軟らかい着地だけど、進む”のが最大の特徴です。トゥスプリントの傾斜も緩やかなので、一般の人たちが踵着地で走るゆっくりのペースでも違和感がありません。軟らかくもあり、弾いてくれる感覚もあるすごいシューズだと思います。“誰でも履けるみんなの厚底”モデル、楽しんでください」(萩尾さん)
走るテンションもマックスになったところで、萩尾さんイチオシのシューズ「DEVIATE NITRO 2(ディヴィエイト ニトロ 2)」の紹介、そして実際に走ったインプレは、次回にお預けだ!
撮影/中田 悟
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