昨今メジャーな国産低粘度油性ボールペンといえば、三菱鉛筆「ジェットストリーム」、パイロット「アクロボール」、ぺんてる「ビクーニャ」、そしてトンボ鉛筆の油性ボールペンに搭載されている「エアータッチインク」あたりが代表格だろう。それぞれに明確な個性があり、「自分の推し油性ボールペンはこれ!」と決めているファンも少なくない。そんな中、まったく新しい低粘度油性ボールペンとして2024年6月に登場したのが、ぺんてるの「FLOATUNE(フローチューン)」である。
“摩擦レスな機構による浮遊感のある書き心地”をうたう本製品は、いったいどんな特徴を備えているのか。同社の「ビクーニャ」との違いは? そして今使っているボールペンから乗り換える価値はあるのか?──それら気になるポイントを掘り下げていきたい。
この記事でわかること
“浮遊感”をテーマにした新感覚の低粘度油性ボールペン
「フローチューン」のテーマは、ズバリ“浮遊感”。製品名の由来も「Float(浮く)」から来ていると考えられる。ボール径は0.3/0.4/0.5mmの3種、それぞれ黒・赤・青のインク色が用意されている。
ぺんてる
フローチューン
ボール径:0.3・0.4・0.5mm
インク色:黒・赤・青
各300円(税別)
デザインは、最近の定番となりつつある凹凸の少ないフラット系。軸は白で統一され、インク色は後端部の色付きパーツで識別する仕様だ。ただし、ノックノブが透明パーツであるため、どの角度からでも色が視認しやすくなっている。

筆記感は“可変性低粘度油性”。摩擦が変化する書き心地
筆記感についてだが、これは“筆圧”と“筆記速度”によって変化する、いわば「可変性低粘度油性」とでも呼べるタイプ。
まず、ニードルチップにやや強めの筆圧をかけて書くと、「本当に低粘度油性か?」と疑いたくなるほど、カリッとしたやや引っかかりのあるタッチになる。一方、筆圧を抜いて滑らせるように動かすと、一転してスルスルとしたなめらかな書き心地に変化するのだ。

さらに驚くべきは、ペン先の速度がある程度まで上がった瞬間、摩擦がほぼ消失し、まさに紙面から浮き上がったような強烈なツルツル感が発生する点だ。

ただし、これは書き心地が暴走するわけではない。通常の筆記速度では「適度ななめらかさと安定感のある書き味」であり、また、どんなにスベスベでも筆圧をかければピタリと止めることができる。
総じて、「超加速モードの疾走感を楽しめるが、普段は安定して書ける、コントロールしやすい低粘度油性ボールペン」と表現できるだろう。まさに新しい筆記感覚である。
驚異のツルツル感の秘密は、超インクフローとチップ構造にあった
この筆記感の源は、インクとチップ、それぞれの設計にある。まず、インクには金属パーツとの摩擦を抑えるクッション成分が配合されており、これによりスムーズな動きが実現されている。粘度も極めて低く、国産低粘度油性インクの中でもトップクラスの低さだろう。

さらに、低粘度インクが止まらず流れるよう、チップ内部の精度も向上。これによりインクが“ダクダク”とオーバーフロー気味に流れ出し、ゲルや水性ペンのような筆記感を実現している。

一方で、筆圧をかけるとチップ内のボールが押され、インクの流量が絞られることで摩擦が発生し、カリッとした書き味に変化。逆に、筆圧を抜いてスピードを上げると、ボールが紙面を転がる速度がインクの染み込みを上回り、摩擦がほぼゼロになる……というわけだ。
裏抜け注意! たっぷりインクが染み込み描線は太め

インクの出方は非常に多く、ペン先を紙に当てただけでインクがじわじわと染み出す。まるで水性ボールペンのような挙動である。
そのため、0.3mmでも「ジェットストリームの0.5mm」と同等の線幅に感じられるほど。また、裏抜けもしやすく、薄手の紙や手帳用途にはやや不向きかもしれない。


ゲルインク級のクッキリ感と発色。特に“黒”は必見!
とはいえ、インクの量が多い分、描線の発色は非常にクッキリとしており、ゲルインクに匹敵する鮮明さを誇る。とくに黒インクに関しては、ぺんてるの人気ゲルボールペン「エナージェル」と比べても、むしろ「フローチューン」の方が黒く感じるほどだ。

まずは“加速”を体験してほしい
筆記感のコントロール性と黒インクの発色は、多くの人に好まれるバランスだと感じる。それに加えて、クセの強い超インクフローや“加速モード”の存在が、筆記そのものを楽しいものにしている。
個人的には、インクの出方と線幅のバランスが良い0.4mmがオススメだが、浮遊感をより強く感じたいなら0.5mmも良い選択肢だ。
まずはぜひ店頭の試し書きで、クルクルと素早く線を引いてみてほしい。“浮遊感”がどこから始まるかを、ぜひその手で体験してもらいたい。