【きだてたく文房具レビュー】軸細・強グリップ・低粘度インクのオールマイティ・ボールペン
ボールペンのインキは、大きく分けて油性・ゲル・水性の3タイプがある、ということはご存知のことと思う。
それぞれ筆記感や特性が違うわけで、どのインキが良いというわけではない。人それぞれの書き方や持ち癖、使うシチュエーションと好みに合わせて選ぶのがベストなのである。筆者も基本的にはゲルインク+カリカリとした細いボール径のペンを好んで使っているのだが、ただ、こればかりはどうしても油性ボールペンでないと、というシーンがある。
例えば、宅配便などの複写式伝票を書く場合は、できるだけ筆圧強めに書きたいので、筆圧をかける前提で作られた油性ボールペンを使う。また、はがきや封書の宛名書きも、雨などの水濡れを考慮すると油性を使いたい。耐水性のあるゲルや水性の顔料インクもあるが、やはり安心感で言うと素直に油性インキを選んだ方が確実だ。
そしてあとひとつ。多色ペンを持ち歩きたい場合も油性を選ぶ。ゲル・水性はインクフローの関係上、どうしてもリフィルが太くなりがちで、それを3色4色と束ねると軸も太くなってしまう。細いリフィルでたっぷり書ける油性インクの方が、スリムに収まるのである。
で、そんなスリムさが身上の油性多色ボールペンの中でも、特にスリムで良くできてるなー!と感じたのが、つい先日発売されたばかりの「スーパーグリップG 2/3/4色」だ。
パイロットの低価格帯(100円)油性ボールペン「スーパーグリップ」が2017年末にリニューアルしたのが「スーパーグリップG」。「スーパーグリップG 2/3/4色」は、その多色タイプという位置づけとなる。
一般的なゲル3色のボールペンで軸径が13~14㎜、油性3色で12㎜といったところ。ところがこのスーパーグリップGは、2色と3色が最太部でも10.7㎜、4色でも11.8㎜と驚くほど軸が細い。
わずか数㎜じゃないかと言うことなかれ。ペン軸で直径が1㎜違えば誰の目にも明らかだし、コンマ㎜以下でも、握ればはっきりと差は感じられるはずだ。
もちろん軸の太さも好みの範疇なので、太い軸の方が好きという方がいるのは分かる。ただ、多色ペンをわざわざチョイスするというのは、ペンケースの容量が限られていたり、胸ポケットに1本だけ差して運用したい、というケースだったりするはずだ。
であれば、多色ペンにおけるスリムさはそれだけで正義なのである。
また、もうひとつ感心したのがノック精度の高さだ。
多色ペンは構造が複雑なため、ノックをして色を入れ替える際にノックノブがひっかかる(ジャム)ことが、ままある。ところがスーパーグリップG多色は、このジャムがやたらと少ない。というか、いま2週間ほどメイン筆記具として試用しているが、まだ1度もジャムってないのだ(もちろん、個体差はあるだろうが)。
ただでさえスリムにするために軸内がギチギチに詰まっているはずなのに、この精度はちょっとすごいことだと思う。
単色タイプから引き続き、新開発の低粘度油性インキや、ペン先に近いところまでカバーされた滑り止め効果抜群のグリッドパターングリップといった、スーパーグリップGの良さはそのまま。さらに軸径も単色と変わらず、ノックジャムもなく堅実に書ける。おまけに4色で350円というローコストさなのだから、すごい。
残念ながら、店頭で目立つタイプではない地味なペンだが、多色の油性としては、探してでも入手しておくべき1本だと思う。
【著者プロフィール】
きだてたく
最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。近著にブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。