文房具
筆記用具
2022/1/24 19:00

【文具ソムリエール・菅未里の自腹買い文房具】極細ボールペンのカリカリ筆記を解消しただけじゃない「サラサナノ」の意外なこだわり

イベントやメディアへの出演、新作文房具のプロモーションなどに引っ張りだこの文具ソムリエール・菅未里さん。文房具の新作からロングセラーまでを知り尽くした菅さんが、自腹を切ってまで手に入れた愛用の文房具とは? 今回は、書き味を克服する内部機構に加え、意外な部分のデザインにも気を配ったボールペン。

 

秘密は内部のスプリング。カリカリしない極細ボールペン「サラサナノ」

2021年11月、なめらかな書き味で知られるジェルインクボールペン「サラサ」シリーズ(ゼブラ)に、新作が加わりました。芯が0.3mmの「サラサナノ」です。すでに「サラサクリップ」に0.3mmの商品はあるのですが、新たに登場したサラサナノは新しい機構を備えていることで、話題になっています。

ゼブラ
サラサナノ 0.3
各220円(税込)

 

一般に、ペン先が細ければ細いほど書き味はカリカリしたものになりがちです。筆圧が小さいボールに集中し、紙の凹凸を拾ってしまうからですね。

 

この問題を、サラサナノは大胆な方法で解決しました。内部に、衝撃を吸収するサスペンションとなる小型スプリングを入れたのです。芯やペン先を改良するのではなく、自動車のサスペンションが路面からの振動を和らげるように、内部のサスペンションによって振動そのものを緩和する手に出たのですね。

 

ゼブラが「うるふわクッション」と呼ぶこの機構の効果は抜群です。実は、サラサナノの芯・ペン先はサラサクリップ0.3mmと同じものを使っているのですが、書き味はなめらかになっています。

 

もっとも、サラサナノは発売直後から話題になっていましたから、文房具好きの方々なら、ここまで書いたことはとっくにご存じでしょう。しかし、注目すべきポイントは書き味だけではないことをご存じでしょうか?

 

シックな色が増えた

まず注目したいのが、色数の多さです。0.3mmという、市場にはけっして多くない極細ボールペンにもかかわらず、32色ものインクカラーが用意されています。

↑極細にもかかわらず、色数が豊富。使い道が広がります

 

なかでも興味深いのは、近年需要が増している、大人っぽいビンテージカラーがたくさん用意されていることです。片手ですぐに書き始められるノック式で極細、しかもなめらかな水性顔料で32色ものカラーバリエーションを持つのは、サラサナノくらいです。

↑大人っぽいビンテージカラーが多いのも特徴。トレンドを抑えています

 

驚くほど細部まで作り込まれたデザイン

さらに、ビンテージカラーと呼応するように、デザインに高級感ただよう、落ち着いたものへと変わりました。

 

情報量が多かったクリップですが、そこに記されているのはサラサナノの名前と「.3」という太さを表す数字だけ。「0.3mm」ではなく、「0.3」ですらないのです。

↑上は従来のサラサクリップ。情報量が多いですね。一方、下のサラサナノでは情報量がそぎ落とされ、見違えるようになりました

 

このクリップは胸ポケットの縁などに挟みやすい可動式なのですが、動かすための金具も、サラサナノでは見えないように隠されています。上からのぞき込むと、スプリングがあるのがわかりますね。

↑クリップを動かすための金属は、正面からは見えないよう隠されています

 

このクリップ、不思議な透明感があるのですが、それは白っぽい樹脂の上に透明な樹脂を重ねているためです。さらにその上に文字が乗っているため、光に当てると微妙に影ができます。複雑かつ美しい作りです。

↑白っぽい樹脂の上に透明な樹脂を乗せ、さらに文字を乗せた複雑な構造。美しいですよね

 

↑並べて鑑賞したくなります

 

グリップ部分も変わりました。以下の写真の上が従来品で下がサラサナノなのですが、滑り止めの溝の形が変わっているのがわかるでしょうか。メーカーのゼブラに聞いてみたところ、デザイナーによりデザインされた、「細く書ける」ことを表現した模様とのこと。そういわれると、なんとなくそんな気もしてきます。

↑「細く書ける」ことを表現したグリップの溝(下)。性能には関係ありませんが、作り手のこだわりが伝わってきます

 

税込み220円とサラサクリップの倍のお値段ですが、性能面はもちろん、このデザイン面での作り込みを見れば納得なのではないでしょうか。手に入れたら、ぜひ細部までその美しさを味わってください。

 

 

連載「文具ソムリエール・菅 未里の自腹買い文房具」アーカイブ
https://getnavi.jp/author/misato-kan/