ベテラン自動車ライターのMJブロンディとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。最近何かと話題のアメリカ車のなかでもモンスター級にパワルフな一台を試乗して思ったこととは?
【登場人物】
MJブロンディ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。自動車評論家としてはもはやベテランの域で、様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどに寄稿し、独自の視点でクルマを一刀両断しまくっている。
安ド
元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。MJブロンディを慕い「殿」と呼んでいる。
【今月のクルマ】キャデラック CTS-V
安ド「殿! トランプ大統領就任で、久しぶりにアメ車が脚光を浴びてますね」
MJ「うむ。アメ車をもっと買えというセリフは、パパブッシュ大統領以来久しぶりに聞いた」
安ド「今回はキャデラックです」
MJ「しかしこれは最強モデルではないか?」
安ド「やっぱりアメ車ですから、パワフルじゃないと!」
MJ「剛腕大統領に合わせて剛腕キャデラックか」
安ド「乗ってビックリしました。サスペンションがものすごくいいですね!」
MJ「恐ろしいほど乗り心地がいいな」
安ド「しかも、とんでもなくパワフルですね!」
MJ「6・2ℓV8スーパーチャージャーで649馬力。スーパーカー以上のパワーに度肝を抜かれたぞ」
安ド「メーター内ディスプレイは、タイヤの空気圧や前車との車間秒数、バッテリー電圧、油温・油圧まで見ることができます!」
MJ「超ハイテクだな」
安ド「見た目もカッコよくないですか?」
MJ「実にワルでカッコいい」
安ド「悪いところないですね」
MJ「ワルいところはあるぞ」
安ド「いえ、弱点がないってことですが」
MJ「多くの日本人は、いまだにアメ車をローテクのガス食いだと思っているが、このクルマに乗ったら、そんな誤解は吹っ飛ぶな」
安ド「アメ車なんてダメに決まってる、そんなの買えるか! みたいな感じですもんね!」
MJ「うむ。ところで燃費はどうだった?」
安ド「4・9㎞/ℓでした!」
MJ「悪いな」
安ド「何度か全開加速しました」
MJ「しかしまぁ、このパワーで4・9㎞/ℓというのは決して悪くない。我がフェラーリ458イタリアとほぼ同じか、むしろいいくらいだ」
安ド「それって、いいんでしょうか?」
MJ「良くはないが、悪くもない」
安ド「じゃあ、やっぱり弱点はないんですね!」
MJ「デザインもいいしな。弱点はない!」
安ド「なんで日本で売れないんでしょう?」
MJ「買う理由がないからだ」
安ド「ガクー!」
MJ「安ドよ。おまえにキャデラックを買う理由があるか?」
安ド「ありません!」
MJ「俺にもキャデラックを買う理由はない。だから売れない」
安ド「性能はいいのにですか?」
MJ「我々は性能を買っているのではない。幻想を買っているのだ」
安ド「は?」
MJ「我々日本人がアメ車に抱く幻想は、ローテクのガス食いグルマ。フェラーリ抱く幻想はエレガントな女王様。どっちを買う?」
安ド「もちろんフェラーリです!」
【注目パーツ01 リアディフューザー&4本出しマフラー】後ろから見ても鮮烈な印象
高速走行時にボディを路面に向かって押し下げるディフューザーや、ベースモデルにはない4本出しのマフラーが採用されています。機能性については不明ですが、見た目の迫力はすごいものがあります。
【注目パーツ02 スーパーカータイヤ】フェンダーからはみ出す太さ
パフォーマンス志向のミシュラン・パイロット・スポーツタイヤは、まるでスーパーカーが履くような超太いサイズ。フェンダーからはみ出してしまうので、細い枠を追加してカバーしています。
【注目パーツ03 コックピットまわり】レースに出るかのような雰囲気
バックスキン調の素材があしらわれたステアリングはレーシングカー風です。また、メーター内にはタイヤの空気圧なども表示され、サーキット走行能力を備えたクルマならではです。
【注目パーツ04 ルームミラー】アナログデジタル切り替え可能
リアカメラで写した画像をルームミラーに搭載される液晶モニターで表示します。つまり通常のルームミラーでは後方視界を確保できないときなどに便利ですが、慣れないとなんだか気持ち悪くなります。
【注目パーツ05 ウルトラビュー電動スライディングルーフ】開放感あふれる巨大なルーフ
電動でルーフが開閉できます。古来スポーティなモデルはボディ剛性を確保するために開閉ルーフはつけないものですが、きっと最新技術でしっかり剛性を確保できているのでしょう。
【注目パーツ06 ヘッドランプ】同ブランドらしくきらびやかで豪華
現在のキャデラックデザインの特徴でもある縦型ヘッドランプには、HIDやLEDがふんだんに採用されています。下のバンパー側の縦に並んだLEDライトはウインカーとしてオレンジにも光るのが印象的です。
【注目パーツ07 フロント&リアカーボンスポイラー】見るからに速そうな「V」専用パーツ
ラグジュアリーなCTSをパフォマーンスカーへと変貌させるカーボン製のエアロパーツです。凶暴そうな見た目を演出していますが、揚力を低減するなど、走行性能にも寄与してくれます。
【注目パーツ08 フロントエアダム&ベント】空気をたくさん吸ってたくさん出す
大きな穴がたくさん空いています。ナンバープレート上下の穴は、より多くの空気を吸うためのもの。ボンネットの穴は内部の空気を逃がすためのものです。運転中は排出された熱気が見えます。
【注目パーツ09 RECAROパフォーマンスシート】スポーティながら快適性も高い
世界的にも有名なRECARO社製のスペシャルなシートです。身体を包み込むバケット形状ながら、16方向の調整が可能で、身体にフィットします。本革とマイクロファイバー製の見た目もかっこいいです。
【注目パーツ010 6.2ℓスーパーチャージャーエンジン】アメ車の象徴ともいえる大排気量と大パワー
2.0ℓターボエンジンを搭載するベース車に対し、このCTS-Vに積まれるのは6.2Lスーパーチャージャー。これは同じGM社のシボレー・コルベットにも搭載されている、ワールドクラスにパワフルなオバケエンジンです。「アクティブフューエルマネジメント」という気筒休止機能もついていますが、燃費はまあまあといったところです。