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2021/7/25 6:00

車両がおもしろい!昭和レトロが楽しめる「三重県3路線」に乗る

 〜〜乗りたい&行きたいローカル線車両事典No.1〜〜

 

トップの写真を見て昭和期の西武鉄道なのでは? と思われた方もいるのではないだろうか。これは三重県を走る三岐鉄道三岐線の光景だ。三岐線ではこうしたレトロ感満点の風景に出会うことができる。

 

古い車両を大事に使っている路線が全国には数多く残っている。今回は昭和レトロが楽しめる三重県内を走る3路線を中心にお届けしたい。

 

【乗りたい三岐線①】始発駅で出会った古めかしい音

三岐鉄道(さんぎてつどう)三岐線は近鉄富田駅(きんてつとみだえき)〜西藤原駅間を結ぶ26.6kmの路線で、四日市街といなべ市の郊外を結ぶ。

 

旅客だけでなく貨物輸送が盛んで、首都圏で言えば、秩父鉄道の姿にやや近い。旅客列車は近鉄富田駅の3番線ホームから発車する。同じホーム上の2番線は近鉄名古屋線の名古屋方面のホームとなっている。近鉄と三岐鉄道がホームを共有しているのだ。ホーム上に両線を隔てる仕切りなどはなく、近鉄電車からすぐに乗り換えることが可能だ。

 

とはいっても近鉄で利用可能な交通系ICカードは、三岐鉄道路線内では使えない。近鉄から乗継ぎ、三岐鉄道に乗る場合には、近鉄富田駅までの切符を買い求めて、さらに三岐線内の降りる駅での精算をした方が賢明だろう。発車時間まで余裕があれば改札を一度出て、硬券切符を購入して乗車したい。

↑始発駅の近鉄富田駅に停まる三岐鉄道101系。ホームは近鉄名古屋線との共用で乗換えが便利。切符は昔ながらの硬券だ(右上)

 

近鉄富田駅に停まっていた電車は三岐鉄道101系。西武時代には401系だった電車である。停車している時から今の電車らしくない、コンプレッサーの甲高い音がする。グワグワグワッ……カランカラン。表現が難しいが、とにかく静かではないのだ。古い西武電車は旧式の部品を流用することが多く、それが三岐鉄道にやってきても活かされている。客室の床にも整備用のフタが設けられているなど、旧式タイプの電車らしい姿もしっかり残る。

 

昨今の大都市圏を走る電車では聞かれない音でもあろう。微振動が体にも伝わるようだ。ただ、中高年世代以上の鉄道好きにはとても懐かしく、また若い世代にはいかにも機械が動いている感覚で、新鮮な音に感じると思う。

↑今回紹介の三岐鉄道三岐線ほか2路線は、みなJR線、近鉄線から郊外へ向けて走っている

 

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【乗りたい三岐線②】西武鉄道の旧形電車ばかりとなった三岐線

三岐鉄道三岐線の電車は先の101系のほかにも801系(元西武701系)が主力となっている。どちらも1960年代から70年代にかけて西武の所沢車両工場で造られた車両だ。

 

旧西武の701系は、高度成長期に西武鉄道沿線で急増していた旅客需要に応えるべく造られた電車で、西武初のカルダン駆動方式を採用していた。だが、先頭の制御車の台車は国鉄の払下げ品を使うなど、経済性を重んじた電車でもあった。経済性を重んじたといえば聞こえは良いが、当時の西武は実に“しぶちん”だったわけである。現在の西武鉄道の車両とはだいぶ趣が異なっていた。

 

とはいえ、筆者はこの沿線で育ったこともあり、特有の乗り心地の悪さながら親しみがあったし、赤電塗装といわれるレトロカラーも好きだった。

↑保々駅の車庫に停まる赤電塗装の801系の横を、レモンイエローの801系が走り抜ける。1970年代の西武鉄道沿線を思い起こさせる光景だ

 

三岐鉄道の電車の通常塗装は黄色ベースで、車体下部にオレンジ色の太いラインが入る。

 

そんな三岐の標準塗装が、ここ数年変わりつつある。まずは801系の805編成が2018(平成30)年3月、黄色塗装(レモンイエロー)に塗り替えられた。黄色塗装といえば、西武では1969(昭和44)年に誕生した101系以降が黄色ベースの色づかいで、赤電塗装だった車両も徐々に黄色塗装に塗り替えられていった。西武の路線網から遠く離れた三岐鉄道で1970年代の西武当時の色が完全復活したのである。

 

さらに801系803編成が、2019(平成31)年4月に赤とベージュに塗り替えられた。西武鉄道では“赤電塗装”というリバイバル塗装に変わったのである。

 

三岐鉄道では、元西武701系ができた当時の色と、その後に塗り替えられた色の2パターンが走るようになったのだった。

 

ちなみに西武鉄道の中でもリバイバル塗装車は走っている。最も古参の新101系が“赤電塗装”や黄色ベースの塗装に塗り替えられた。とはいえ、西武鉄道好きにとっては、赤電塗装といえば、湘南形と呼ばれる正面の古い形を残した元西武701系こそが似合うと思う。

 

あとは三岐鉄道の車両がはいた台車が、旧西武の時とは異なるのだが、そこまで昔の姿を求めては酷というものだろう。

 

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↑旧三岐色に塗られた101系。1970年代までは三岐線の電車はこの深緑地ベースの黄色塗装というカラーで走っていた

 

赤電塗装と黄色塗装に関心が集まりがちだが、三岐線にはほかにも注目したい電車が走る。101系101編成が2020(令和2)年4月、地を深緑に窓部分を黄色に塗装変更されている。同カラーは旧三岐色と呼ばれる塗り分けで1970年代中盤までの三岐線の代表的な色づかいだった。

 

塗装だけでなくレアな編成もある。851系3両編成は、前後で形が異なる。近鉄富田駅側は801系と同一、西藤原駅側は西武の新101系となっている。2013(平成25)年の脱線事故で廃車となった車両の代わりに、元西武新101系を新たに連結したためである。

 

ほかに751系3両1編成が走るが、こちらは元西武新101系が譲渡されたものだ。大元の西武鉄道では現在、新101系の車両数が減りつつあるが、今後、三岐鉄道に元西武新101系が譲渡されていくのだろうか。一方で、三岐101系(元西武401系)は引退になるのだろうか。とても気になるところだ。

↑851系の先頭車は旧西武新101系、後ろ2両は旧西武701系。前後で先頭の形が異なる。左上は反対側。雨どいの形なども3両で異なる

 

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