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2021/10/16 12:00

鉄道&旅好きにお勧め!車両充実度満点の「えちごトキめき鉄道」

〜〜乗りたい&行きたいローカル線車両事典No.4〜〜

 

前回、本サイトで紹介した千葉県の房総半島を走る「いすみ鉄道」。同鉄道会社の元社長が就任したことにより、がぜん活気づいた鉄道会社がある。新潟県を走る第三セクター経営の鉄道会社「えちごトキめき鉄道」だ。

 

すでにご存知の方も多いと思うが、北陸本線を走っていた交直両用電車をメンテナンスした上で導入。休日に急行列車として走らせている。しかも国鉄当時の塗装で。この電車に乗ろうと全国からファンがつめかけている。

 

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【はじめに】6年目を迎えたえちごトキめき鉄道の2路線

2015(平成27)年3月14日に北陸新幹線の長野駅〜金沢駅間が開業した。以降、併行して走っていた信越本線の妙高高原駅〜直江津駅間と、北陸本線の市振駅〜直江津駅間の運営を引き継いで、列車を走らせているのが「えちごトキめき鉄道」である。

 

旧信越本線は、「妙高はねうまライン」に、北陸本線は「日本海ひすいライン」という路線名が付けられた。両路線とも自社車両だけでなく、他社車両も乗り入れている。さらにガラス窓が大きく、鮮やかな赤色に塗られた「えちごトキめきリゾート雪月花(せつげつか)」という観光列車を創業まもなく走らせ、なかなかの人気の路線となっていた。

 

転機が訪れたのは2019(令和元)年秋。鳥塚 亮(とりづかあきら)氏が新社長に就任したのである。鳥塚氏といえば、元航空会社に勤めた後にいすみ鉄道の社長に就任し、国鉄形気動車を導入するなど思いきったアイデアを取り入れ、いすみ鉄道の存続に貢献した人物だ。2018(平成30)年に社長退任の後、えちごトキめき鉄道(以下「トキ鉄」と略)に移った形となった。

 

新社長に就任して2年たった今年には、4月29日に直江津駅の構内に「直江津D51(デゴイチ)レールパーク」を開業、さらに7月4日には413系・455系を使った観光急行を運転し始めるなど、鉄道ファンやファミリー客の誘致に積極的に乗り出している。

 

筆者も今年の春以降に、すでに同路線に3回ほど訪れているが、コロナ禍による難しい時期にもかかわらず週末には、近隣はもとより、遠くから訪れた鉄道好きの姿も多く、さまざまな企画が実りつつあるように感じられた。

 

【注目の車両&路線①】7月から走り始めた「国鉄形観光急行」

同社の路線を走る車両を見ていこう。

 

同社の車両の中で最も気になる車両といえば413系・455系であろう。両車両は現在、観光急行列車としても使われている。413系・455系はどのような車両なのか見ていこう。

 

413系と455系は同じ交直両用電車ながら、生まれた経緯が異なる。直流電車が主力という地域に住む人にとっては、やや縁が薄い車両で、似た形式番号が多々あり難解な部分もあるが、国鉄時代と引き継いだJRの時代も含めて確認しておこう。

 

○クハ455-701(国鉄形交直両用455系電車)

↑クハ455-701を先頭に妙高はねうまラインを走る〝快速列車〟。この日は「赤倉」のヘッドマークを付けての走行

 

形式は455系電車にあたる。455系は国鉄時代に交流、直流両電化方式に対応した急行列車用の車両で、東北本線の盛岡地区と鹿児島本線の熊本電化開業に合わせ、また北陸地区の急行増発用に1965(昭和40)年に製造された。455系の前には453系、473系といった急行形交直両用電車があったが、これらに比べてより勾配区間のある路線で使うことを考慮し、抑速ブレーキなどの機器を強化している。

 

急行列車用に造られた455系だったが、年を追うごとに、急行列車自体の運行が減少していく。長い編成を組んで長距離を走る列車よりも、短い編成で、短い距離を走る普通列車向けの車両が必要となっていった。そのために、電源を持たない中間車は不要となっていた。

 

そこで中間車のサハ455形(種車はサハ455-1)が、1986(昭和61)年に運転台を持つクハ455-701に改造、さらに413系と組んで走るように改造されたのである。

 

クハ455-701は改造された後に413系とともにJR西日本に引き継がれ、北陸本線を長い間、走り続けた。JRの時にはB04編成という編成名で2010年代に入ると北陸地域色という青一色塗装に変更されている。当時、筆者も出会ったことがあるが、下記がその写真だ。

 

現在の姿と比べてみると、色の違いこそあれオリジナルな455系の姿はそのままである。ただし、正面の貫通扉上にある方向幕(列車種別の「急行」が表示される部分)がJR時代には表示がなく開口部が埋め込まれていたことが分かる。

↑北陸地域色に塗られたJR西日本時代のクハ455-701。後ろの413系とは乗降扉の位置と窓配置が異なる。撮影日2014(平成26)年4月12日

 

その後の2015(平成27)年には七尾色と呼ばれるあかね色に塗り替えられた。トキ鉄へやってくる前に、大きな改造と、車体色が複数回、変更されたことが分かる。ちなみに現在、455系の電源付きの車両(要するにモハやクモハ)はなく、トキ鉄に譲渡されたクハ455-701と、同じ経歴を持つクハ455-702が金沢総合車両所に1両のみが残るだけとなった。

 

ちなみに455系には微妙に違う姿形と形式がある。下の写真はクハ455-60とモハ474-46、クモハ475-46の編成で2011(平成23)7月19日に直江津駅のホームに停車する姿、クモハ475、モハ474は475系と呼ばれる455系に近い形式の電車で交流60Hzに対応するように造られた。写真のような475系と455系との組み合わせも、北陸本線では多く見受けられた。写真に写り込むクモハ475-46は準鉄道記念物に指定され、白山市の金沢総合車両所で保存されている。455系、475系とともに交直流電車の過渡期の車両であり、日本の鉄道技術を高めていく上で大きな足跡を残した〝歴史に残る車両〟なのである。

 

この車両塗装は急行列車に使われた大もとの色でローズピンク(赤13号)にクリーム色(クリーム4号)の組み合わせで「交直流急行色」と呼ばれている。

↑直江津駅で2011(平成23)年に停車する455系と475系の編成。トキ鉄のクハ455と比べると前照灯が大きい

 

○クモハ413-6・モハ412-6(国鉄形交直両用413系電車)

↑妙高はねうまラインを直江津駅に向けて走る快速列車。先頭が413系で、同車両は貫通扉上の方向幕が埋め込まれている

 

455系に関してだいぶ話が長くなってしまったが、編成を組む413系の特徴も触れておこう。

 

413系は1986(昭和61)年から製造された近郊形の交直両用電車である。453系・475系など急行形交直両用電車の台車、電装品、冷房装置などを再利用、車体を新造した。交流専用の電車717系も同時期に造られている。413系は北陸地方向けに、717系は東北の仙台地区と九州地区に導入された。

 

413系は北陸路の主力として長年走り続けた。JR西日本では近年、521系という交直両用電車を徐々に新造し、古い413系の置き換えを図ってきた。413系はJRの路線からは徐々に消えていき、最後まで走っていた七尾線の413系も、521系の導入により、今年3月12日で運用終了となった。

 

そんな413系は北陸本線を引き継いだ富山県内を走る「あいの風とやま鉄道」に5編成×3両(計15両)が譲渡された。そのうち、2編成は同社の観光列車に改造された。また一部に廃車されたものも出てきている。

 

ちなみに、413系の電車はあいの風とやま鉄道から、トキ鉄の糸魚川駅まで入線していたが、こちらの運行も2018(平成30)年3月17日で直通運転は終了している。

 

トキ鉄にやってきたのはB06編成という413系3両で、JR西日本当時には七尾線を走っている編成だった。交直流急行色に塗り替えられ、413系3両と、455系(クハ455-701)1両が購入されたが、413系のうち1両は直江津のD51レールパークの庫内で保存展示、一方、JR時代とは異なる455系1両と編成を組んで、現在は直江津駅〜妙高高原駅間と直江津駅〜市振駅間を走るようになっている。

↑七尾線を走った当時の413系B06編成で、車体色は茜色だった。撮影日は2020(令和2)年10月30日

 

413系・455系列車の運転ダイヤは下記のとおり。

 

◆快速列車としての運行

直江津8時43分発→上越妙高9時発→妙高高原9時37分着。

妙高高原9時44分発→上越妙高10時19分発→直江津10時35分着

※途中、高田、南高田、新井、二本木、関山の各駅に停車

 

◆急行列車(急行券が必要)としての運行

直江津11時26分発→糸魚川12時34分発→市振12時52分着

市振13時10分発→糸魚川13時42分発→直江津14時31分着

直江津15時03分発→糸魚川15時51分着/16時40分発→直江津17時08分着

 

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