軽自動車の領域をはるかに超える上質さとトルクフルな走り
そんな使い方を思い描きつつ、eKクロス EVに乗り込みました。運転席に座って真っ先に感心したのは、フロアにバッテリーを搭載している感じが一切なかったことです。乗降性も自然で、ガソリン車のeKクロスと比べてもほとんど違いはありません。さらに後席も十分なスペースを確保しており、大人4人が乗車しても楽に過ごせそうです。
これを実現した背景として三菱の開発担当者は、「eKクロスの開発時に、バッテリーを搭載することも想定していた」ことを明かしてくれました。なるほど、だからこそ、BEVとしても優れたパッケージングを実現できていたんですね。
内装はダッシュボードにソフトパッドが貼られ、スイッチ一つひとつにまで質感があります。軽自動車特有の室内幅の狭さを除けば、もはや軽自動車とは思えない上質さを感じるほどです。車載ナビも「アウトランダー」などと基本機能が同様なもので、スマホ連携やSOSコールにも対応した先進性に富んだシステムとなっています(“G”ではオプション)。
いよいよ公道へと繰り出します。踏み込んだ瞬間、その力強さが半端ないことに気付きました。それもそのはず、最高出力こそ軽自動車の自主規制に合わせて47kW(64PS)にとどまっていますが、規制がない最大トルクはなんと195Nm(19.9kg-m)! これは軽自動車ならターボ付エンジン車の約2倍に相当します。しかも、これがスタート当初から発揮されるのです。この力強い走りは、もはや軽自動車の領域を遙かに超えているとみて間違いありません。実力としていえば2.5L車ぐらいのレベルはあるのではないでしょうか。
フロアに搭載したバッテリーの効果もあり、乗り心地は常に上質です。BEVだから静粛性も極めて高く、オーディオを楽しむ人にとってもうれしい空間となることでしょう。カーブでは若干ロールがきつめに出ますが、シートがたっぷりとしたサイズで背もたれが包み込む形状なので、コーナリング中もしっかり身体を支えてくれて不安はありません。これなら、たとえ長く乗っても疲れにくいのではないかとも思いました。
路面からの突き上げ感は低速域で少し強めに出ますが、それも不快な印象はまったくありません。とにかく、軽自動車でここまで仕上がったことにBEVならではのメリットを感じないではいられませんでした。
おすすめグレードは「G」。これに適宜オプションを加えるのがベスト
最後に購入することを前提に、標準グレードの「G」と上級グレードの「P」、どちらが良いのかを考えてみたいと思います。
「P」は前述したように。スマホ連携カーナビやSOSコール、ステアリングヒーターなどを装備したフル装備モデルです。そのため、価格は293万2600円と300万円に迫る金額となります。ただ、これでも先行車に自動的に追従して走行するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)である「マイパイロット」は“先進安全快適パッケージ(PKG3)”としてオプションになります。走りの良さや車内の居心地の良さを考えると、ちょっと贅沢してみたくなりますが、考えてみるとそれを享受できるほどバッテリーの容量はないのも事実です。
これを踏まえると、あえて「P」よりも下位グレードの「G」を選び、そこに“寒冷地パッケージ(PKG6)”を装備して、ステアリングヒーターや前席シートヒーター(座面)、電動格納式ヒーテッドドアミラー、リアヒーターダクトを追加。さらにカーナビが欲しければ、ディーラーオプションの手軽な機種を組み合わせることで価格も抑えられます。この組み合わせで補助金を考慮すれば200万円前後に収まるはずです。これなら軽自動車の予算ギリギリで収まり、この「G」こそがeKクロス EVのコンセプトに叶った最良の選択になるのではないかと思いました。
SPEC【P】●全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm●車両重量:1080kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:20kWh●最高出力:47PS/2302〜10455rpm●最大トルク:195N・m/0〜2302rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):180km
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