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2023/3/11 21:00

祝・総延長250kmの鉄道ネットワーク完成! 3.18開業「相鉄・東急直通線」のお洒落な新駅探訪レポート

〜〜相鉄・東急直通線しゅん功開業式典・新綱島駅見学会(神奈川県)〜〜

 

3月18日、いよいよ相鉄本線と東急東横線を結ぶ「相鉄・東急直通線」が開業する。相模鉄道沿線から東京都心へのアクセスが便利になり、東急沿線からも東海道新幹線・新横浜駅へ行きやすくなる。

 

開業日が間近に迫る3月5日に「相鉄・東急直通線」しゅん功開業式典および試乗会、途中駅となる新綱島駅の見学会が開かれた。ここでは試乗会と新駅見学会の話題を中心にお届け。さらに同時期に開業を迎える大阪市と福岡市の新駅と新線の話題に触れてみたい。

 

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【新線レポート①】計画から38年!いよいよ開業する直通線

3月18日に開業するのは「相鉄・東急直通線」の営業キロ10kmの路線だ。内訳は相鉄新横浜線・羽沢横浜国大駅〜新横浜駅間(営業キロ:4.2km)と、東急新横浜線・新横浜駅〜日吉駅間(営業キロ:5.8km)。新横浜駅が2社の境界駅となり、列車の相互乗り入れが行われる。

↑開業するのは東急東横線の日吉駅と相鉄・JR直通線の羽沢横浜国大駅を結ぶ区間で、途中、新横浜駅と新綱島駅の新駅が開業する

 

この相鉄・東急新横浜線は「神奈川東部方面線」の一部区間として計画された。「神奈川東部方面線」のこれまでの経緯に関して触れておこう。

1985(昭和60)年運輸政策審議会答申第7号で東京圏の交通網整備について答申が行われ、その中で「二俣川から新横浜を経て大倉山・川崎方面へ至る路線」が検討路線として盛り込まれた
2000(平成12)年運輸政策審議会の第18号答申で「神奈川東部方面線(仮称)」の名で路線計画がより具体化
2005(平成17)年都市鉄道等利便増進法が成立、上下分離方式の導入により、円滑に路線開業を行えるようシステムが整備
2007(平成19)年国土交通省が相鉄・東急直通線の速達性向上計画を認定
2012(平成24)年国土交通省から相鉄・東急直通線の工事施工認可を受け、工事を開始
2019(令和元)年11月30日相鉄・JR直通線の相互直通運転を開始、羽沢横浜国大駅が開業
2023(令和5)年3月18日相鉄・東急直通線開業予定、新横浜駅、新綱島駅が開業の予定

 

最初の計画が立てられたのは38年前の1985(昭和60)年。改めて相鉄・東急直通線の誕生には非常に長い期間が必要だったことが分かる。

 

計画の進行を促進したのは2005(平成17)年に生まれた「都市鉄道等利便増進法」の成立が大きかった。それまで、JRグループと多くの民間の鉄道事業者が並び立ち、成長を遂げた日本の都市の鉄道網だが、増進法成立後は、各会社間の乗り入れを密にして、乗換えの手間を解消するなどの基本方針が打ち出された。さらに新線の開業を促進するために、鉄道事業者だけに建設を任せることなく、整備主体と営業本体(鉄道事業者)を分離する、いわゆる「上下分離方式」が利用しやすいように法の整備が行われた。

 

今回の相鉄・東急直通線では、整備主体は「鉄道・運輸機構(JRTT)」が行い、営業主体の相模鉄道・東急電鉄に路線を貸付し、施設使用料(受益相当額)を受け取る仕組みとなっている。

 

【新線レポート②】新横浜駅に「祝!新線開業」の垂れ幕がかかる

開業が間近に迫る3月5日に、来賓を招いて「しゅん功開業式典および新綱島駅見学会」が行われた。まずその模様をレポートしたい。

 

筆者が早朝に向かった新横浜駅の西口。駅前の歩道橋から円形ペデストリアンデッキ(円形歩道橋)への途中、「キュービックプラザ新横浜」には「相鉄・東急 新横浜線 開業おめでとう」という垂れ幕が掲げられていた。地元でも新線、新駅開業のお祝いムードが高まっていることがわかる。

↑JR新横浜駅の北西側にある円形ペデストリアンデッキ付近に新駅ができる。地上の工事箇所もかなり縮小されつつあった

 

新横浜駅は地下4層構造になっている。横浜市営地下鉄ブルーラインの新横浜駅ホームが地下2階、東西方向に設けられ、新しい駅のホームはさらに2階ほど掘り下げた地下4階部分の南北方向にクロスして設けられた。

 

筆者は昨年の11月24日にも建設中の新横浜駅を訪れたが、このときは諸施設が設置間もない状況で、地上と地下4階にあるホームへの上り下りは階段を使わざるをえない状況だった。しかし、今回はエスカレーターが作動していてスムーズに下りていくことができた。開業のほぼ2週間前ということもあって、自動改札機などの防護カバーも外され、開業に向けてあとは利用者を待つばかりとなっていた。

↑地下1階に改札階があり、B2階フロア(写真)を経て地下4階のホームへ下りて行く。すでにエスカレーターが稼働していた

 

【新線レポート③】新横浜駅構内でしゅん功開業式典を開催

新横浜駅の地下3階のフロアで「相鉄・東急直通線 しゅん功開業式典」が開かれた。相模鉄道・東急電鉄の関係者だけでなく、相互乗り入れを行う鉄道事業者の代表、横浜市長と横浜18区の区長、神奈川県知事、また国からも斉藤鉄夫国土交通大臣、菅義偉前内閣総理大臣といった錚々たる錚々たる来賓が参加。祝辞の後に、紅白のテープカット、くす玉割りが行われた。

↑新横浜駅地下3階フロアで催されたしゅん功開業式典。来賓が集まり開業を祝い、紅白テープカットとくす玉割が行われた

 

祝辞で印象に残ったのは「首都圏で総延長250kmにも及ぶ広域な鉄道ネットワークが完成する」という言葉だった。相鉄・東急直通線が完成することにより、両鉄道会社だけでなく、東武鉄道、西武鉄道、東京メトロ、都営地下鉄、横浜高速鉄道、埼玉高速鉄道の会社線が線路で結びつく。さらに、相鉄・JR直通線でつながるJR東日本の路線網を加えれば、首都圏の主要鉄道会社の多くが結びついたことになり、このネットワーク効果は大きいように思う。あとは利用者がいかに、この路線網を役立てていけるかということなのだろう。

↑新横浜駅構内のホームのラインカラー入り案内板。1・2番線は相鉄新横浜線、3・4番線は東急新横浜線という区分けになる

 

【新線レポート④】試運転列車で新綱島駅へ向かう

しゅん功式典が終了した後には、来場者は1フロア下りて地下4階のホーム階へ。そこに待っていた試乗会用の試運転列車の運転士に花束贈呈、および記念撮影が行われた。新横浜駅での式典がすべて無事に終了すると、列車は次の駅、新綱島駅へ向けて11時4分に出発した。

↑新横浜駅構内で運転席越しに新綱島駅方向を眺める。トンネル内は真っ暗ではなく、右手に青いランプが連なっていることが分かる

 

新横浜駅〜新綱島駅間は、東急電鉄の路線で最も駅間が長い区間(約3.6km)で、列車は同駅間を約3〜4分で走ることになる。進行方向、右手には青いランプが点灯、左手には黄色いランプが点滅していて、暗いトンネルの中も意外に明るい印象だった。

 

【新線レポート⑤】新開業する新綱島駅に到着

東急電鉄で最も長い駅間とはいえ、乗車時間は3分ちょっとなので、あっという間に電車は新綱島駅へ到着した。新綱島駅はホーム1面に上下2線というシンプルな造りで、試乗した列車の相鉄20000系はその2番線に到着した。

 

駅構内の案内や、3月18日から使われる東急の路線図などの写真を掲載したので参考にしてほしい。

↑試乗会に使われた相鉄20000系20103編成。運転台には式典で贈呈された花束が置かれていた

 

↑新綱島駅の駅名案内。相鉄・東急直通線の東急側のラインカラーはパープルで、駅のナンバリングは「SH02」となった

 

↑新綱島駅1・2番線両ホームの案内。1番線がシンプルなのに対して、2番線の渋谷側は電車の行き先が多いこともあり複数の駅名が入る

 

駅の案内ボードには東急の新しい路線図も掲示された。東急東横線の日吉駅までつながる目黒線の延長線上に「東急新横浜線」として紫色のラインが加えられていた。また東急新横浜線からも東急東横線に向けて細いラインも入る。

 

相模鉄道方面からの電車は開業後に目黒線と、東横線に乗入れる。一方、東急東横線から相模鉄道へ向かう電車は、新横浜駅止まり、および相鉄本線、相鉄いずみ野線へ向かう電車が運行される。間違わずに行き先へ向かうためには、乗車した電車がどこの会社の何線を走る電車なのか注意を払う必要がありそうだ。

↑新綱島駅に掲示された東急電鉄の新しい路線図

 

【新線レポート⑥】東急電鉄の車両が1番線に入線した

11時24分、新綱島駅の1番線ホームに東急電鉄の5050系が入線してきた。来賓や来場者が新横浜駅へ戻るために用意された列車だ(報道陣を除く)。5050系は東急東横線の主力車両で、10両編成のグループが5050系4000番台に区分けされている。入ってきたのは4000番台にあたる5050系4108編成だった。前面の表示器は「TEST RUN」と記され、正面と側面の表示に東急電鉄のキャラクター「のるるん」のイラストが添えられていた。

 

「のるるん」のイラストは「回送列車」「試運転列車」などに入っているイラストのようで、通常の走行時には表示器に入ることはあまりないレアな表示だった。

↑日吉方面から走ってきた東急5050系4108編成。正面と側面(右下)の表示はキャラクター「のるるん」のイラスト入りだった

 

今回は新綱島駅までの試乗会だったが、この先、日吉駅方面には1356.51mの「綱島トンネル」が延びている。このトンネル内で気になることがあった。列車の接近時、下り新横浜方面線では一定間隔で設けられた青いライトが点滅し、上り日吉方面線では、こちらも一定間隔で設置された黄色いライトが点滅する。このライトが暗いトンネル内で〝一筋の光明〟のように鮮やかに感じられた。

 

この青と黄色のライトは東急電鉄の路線の地上部にも一定間隔に設置された保安装置(列車接近警報器などと呼ばれる)で、列車が接近すると点灯して沿線を巡回する保線係員に知らせている。東急電鉄は大手私鉄の中でもこうした安全装置の導入に積極的で、沿線の地上部で車両の撮影をする場合にも、この装置が目安になり便利だ。トンネル内にも同じ装置が設置されていたわけだ。

↑新綱島駅のホームから日吉駅へ約1.3kmの綱島トンネルが延びる。上り線は黄色、下り線(右下)は青色の保安装置が設置されている

 

ちなみに相鉄・東急直通線では羽沢横浜国大駅〜新横浜駅間の羽沢トンネルを掘り進める時に、シールド機を利用しての掘削に加えて「セグメント」と呼ぶ覆工部材を利用した。セグメント区間に加えてSENS(場所打ちライニング/支保システム)区間を連続させる技術が多用されている。この方法は従来の方法に比べてより経済的だそうで、2020(令和2)年度には優れた技術に贈られる土木学会賞技術賞(Iグループ)を授賞している。そんな先進技術が詰まったトンネルというわけだ。

 

【新線レポート⑦】改札階のデザインウォールがお洒落

試運転列車が到着した新綱島駅は地下駅構内の幅が13.7〜25m、長さ約240mで、約35mの深さにある。ホーム階から2階上がった改札フロアにきて驚いた。

 

改札口の目の前の壁一面にデザインウォールと呼ばれるガラスパネルが設置され、このパネルの上部がピンク色・青紫色と交互に変化を繰り返しながら、美しく輝いていたのだ。

↑新綱島駅の改札フロアに設けられたデザインウォール。上部がピンクから青紫(右上)に鮮やかに変わっていく

 

解説板には「様々な色の光により移ろう季節に彩られた桃の木をデザイン」とあった。横浜市の綱島地区は戦前まで鶴見川の水を生かし、桃の栽培の町として栄えたそうだ。デザインウォールはこの桃をイメージしてピンクや青紫に発色する。今はすっかり住宅街となった綱島だが、桃の花が咲いていた時代を彷彿とさせるこのデザインウォールは美しく〝映える〟設備だと感じた。

↑地上部へは、ホームから改札口(右上)をへてエスカレーターを乗り継いで上がる。自動改札機には防護シートが付けられていた

 

【新線レポート⑧】エスカレータを乗り継いで地上へ

地下の改札口から地上部へ上がる。地上へ上がるには、ホームの地下4階フロアからエスカレーターを合計4つ乗り継ぐ必要がある。ホームまで下りて行くのも、時間がかかりそうだと感じた。

 

新綱島駅の出口は3月18日開業時には南口のみの設置となる。南口は港北区綱島東1丁目にあり、既存の東急東横線の綱島駅まで県道2号線の綱島交差点を横切れば約200m、徒歩2分と近い。新駅周辺では再開発事業が進んでいて、南口出口の隣接地では新水ビル(仮称)の建設が進み、新綱島駅の綱島方面出入口(仮称)が整備中だった。こちらはビル完成後に第2出口(新綱島駅構内の地図での表記による)となりそうだ。

↑新綱島駅の地上出口として整備された南口。エレベーターの入口(右下)は訪れた時はまだ利用できない状態だった

 

相鉄・東急直通線が3月18日に開業した後には、相鉄本線の二俣川駅から目黒駅まで約38分、さらに渋谷駅から新横浜駅まで東急東横線経由で約25分と所要時間が大幅に短縮される。東京の山の手地区からも新横浜駅へのアクセスが格段に向上する。今後、東海道新幹線を利用する時にどのルートでアクセスしたらより便利か、うれしい悩みとなりそうである。

 

【3月開業の路線①】大阪駅新地下ホームも3月18日に開業

この3月には、相鉄・東急直通線以外にも注目されている新線・新駅の開業がある。大阪市と福岡市という2つの大都市での新線開業だけに、注目度も高い。以下ではこの新たな路線の情報を加えておこう。

 

まず、大阪駅周辺の鉄道網が3月18日に大きく変わる。「東海道線支線地下化・新駅設置」で、大阪駅の北西部に新地下駅(通称うめきた地下ホーム)が誕生する。

↑大阪駅のメイン口として賑わう御堂筋南口。今後は御堂筋側だけでなく新駅ができる北西部も大きく変わっていきそうだ

 

元々、大阪駅の北西部(うめきたエリア)には梅田駅という貨物専用駅があり、広大なヤードが広がり多くの貨物列車の発着があった。この梅田駅の機能を吹田貨物ターミナル駅などに分散し、再開発が行われた。その一環として誕生するのが大阪駅の新地下ホームで、新大阪駅と大阪環状線の福島駅付近を結んでいた梅田貨物線を地下化、さらに大阪駅側に路線をカーブさせて接近させ、大阪駅の隣接地の地下に新ホームを建設した。

 

このうめきた地下ホームが誕生することにより、関西空港と大阪・京都を結ぶ特急「はるか」や和歌山や紀伊半島へ向かう特急「くろしお」の両特急が大阪駅での発着が可能になる。さらに新大阪駅止まりだった「おおさか東線」の電車も大阪駅へ乗入れることになるのも便利だ。

↑大阪駅の北西部を通り抜けていた旧梅田貨物線。同路線はすでに地下へ移行済みで、うめきた(右上)の再開発も進む

 

新ホーム開業後も、地上部では新ビル建設など地区の開発が進められる。うめきたは、この春の新線・新駅開業だけでなく大阪の新たな注目エリアとして大きく変わっていきそうである。

 

【3月開業の路線②】福岡市・七隈線が3月27日に延伸開業

福岡市の橋本駅と天神南駅を結ぶ福岡市地下鉄七隈線(ななくません)が、3月27日に博多駅まで延伸される。延伸される距離は1.6kmで、途中の櫛田神社前駅(くしだじんじゃまえき)もこの日に開業となる。

 

建設が始まったのは2013(平成25)年と今から10年前のこと。当初は2020(令和2)年度に完成予定としていたが、2016(平成28)年に大規模な道路陥没事故が起き、その後に施工方法などの見直しが行われ、開業が遅れていた。

↑橋本駅近くにある橋本車両基地に並ぶ七隈線の車両3000系と3000A車両。同線はミニサイズの鉄輪式リニアモーター車両が使われる

 

これまで多くの利用者が天神駅と天神南駅を結ぶ地下道を歩いての乗り換えを強いられていたものの、新線延長でこの乗り換えが不要となる。七隈線が走る福岡市の西南地区へのアクセスが劇的に改善されそうだ。

 

なお途中駅の櫛田神社前駅は、駅名どおり櫛田神社近くに設けられ、商業施設として人気のキャナルシティにも近く便利になりそうだ。また博多駅の七隈線ホームは博多駅博多口(西口にあたる)直下の地下5階に設けられる。福岡市の東西を結ぶ福岡市地下鉄空港線とは改札口を出ずに約150mの専用通路で乗換えが可能になる。七隈線の延伸は福岡市内の通勤・通学だけでなく観光にも大きく役立ちそうである。

↑JR博多シティを中心に賑わう博多駅博多口の地下5階に新駅が誕生。延伸開業を告知するポスターも市内で見かけるように(右上)