世界各国の気になる話題をお届けしているGetNavi webですが、一方で日本が世界に向けて行っている貢献活動についても積極的にリポートしていきます。そこで、日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」をスタートしました。今回はタンザニアにおける女子陸上支援の取り組みをご紹介します――。
女性ランナー育成を通じ、女性の地位向上を支援
タンザニアの女性の地位向上を目指す取り組みの一つとして、女子陸上選手を育成するJICAの協力が成果をみせ始めています。
JICAが2017年に始めた女子陸上競技会「LADIES FIRST」をきっかけに、選手にスポンサーがつき、練習環境が改善。日本のマラソン大会で優勝するタンザニアの女子ランナーも登場しています。今年1月には、JICAオフィシャルサポーターでシドニーオリンピックの金メダリストの高橋尚子さんが現地でマラソン教室を開き、選手たちを直接指導しました。2020年の東京オリンピックで、タンザニア女子ランナーたちの活躍が期待されています。
「LADIES FIRST」第2回大会に女性129人が出場
タンザニアでは「スポーツは男性がするもの」という考え方が根強く、女性がスポーツに取り組む機会は限られています。
陸上競技大会を通じ、男女平等を実現しようと、JICAは、同国代表としてロサンゼルスとソウルのオリンピックで入賞した元マラソン選手、ジュマ・イカンガーさん(JICAタンザニア事務所広報大使)と協力し、2017年に「LADIES FIRST」を初開催。これをきっかけに、日本企業や地元の団体などがスポンサーとしてタンザニアの女子選手たちを支援するようになりました。
昨年11月の「LADIES FIRST」第2回大会には短距離や長距離、やり投げなど計7種目に総勢129人が出場。出場選手は、第1回大会から20人以上増えました。
「東京オリンピックでメダルを」 成長する女子ランナーたち
「LADIES FIRST」第1回大会で活躍したシルビア・マサトゥリアムさんは大会後、タンザニアの陸上の本場アルーシャで、陸上選手の支援に力を入れている教会からサポートを受けるようになりました。元陸上選手がシビルアさんのコーチとなり、自宅に住まわせ、学校にも通わせながら親身に指導しています。
ビクトリア湖に浮かぶ小さな島で生まれ育ったシルビアさん。整った練習環境に置かれたことによって、マラソンに専念できるようになり、昨年10月には山形県長井市での長井マラソンに出場し、ハーフマラソンで3位入賞を果たしました。同市は、東京オリンピック・パラリンピックでタンザニアのホストタウンに登録されています。
また、長井マラソンのフルマラソンで優勝したアンジェリーナ・ジョン選手も、タンザニアの有望女子ランナーの一人です。2人の子どもを育てながら合宿に参加するなどして練習に励んでおり、「東京オリンピックで出場してメダルを取り、母国が誇る選手になりたい。出場に向け、できることはすべてしたい」と、力強く抱負を語ります。
オリンピック金メダリスト、高橋尚子さんがタンザニアで指導
「背中を伸ばして、姿勢よく!」「目線を高く」。今年1月、JICAオフィシャルサポーターの高橋尚子さんがタンザニアのアルーシャスタジアムでマラソン教室を開き、女子選手を中心に約100人が参加しました。
参加者たちは高橋さんの指導に、真剣なまなざしを向けていました。ひざを高く上げて跳ねるように走ったり、手足を異なるリズムで動かしたりするなど、日本選手が取り組むトレーニング法なども学び、参加した女子選手の一人は「効果的な練習方法を教えてもらうことができた」と話しました。
高橋さんも「選手たちの『強くなりたい』という気持ちがひしひしと伝わってきた。環境が整わない中でも、自ら道を切り開こうとする女性たちの力強さを感じた」と語ります。
女性の地位向上とともに、スポーツ振興を
途上国でのスポーツ普及には、男女格差だけでなく、体育教育のあり方や指導者不足などの課題もあります。タンザニアでも、体育の授業は講義中心で実技が少なく、専門知識を持った指導者が不足しています。
そんな中、女子ランナーたちを育成する取り組みは「タンザニアの体育教育、指導者養成にも良い影響を与えてくれます」とイカンガーさんは話します。「LADIES FIRST」に出場して東京オリンピックを目指す選手たちの姿がタンザニアのテレビで紹介され、同じようにスポーツに取り組み始めた若い女性たちが現れているといいます。
「東京オリンピックにタンザニアの女子選手が出場すれば、それが一つの成功例となって女性アスリートへの理解が広がり、女性の地位向上につながることを期待しています」と語るイカンガーさんや、タンザニアの女子ランナーたちの挑戦は続きます。
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