世界最高峰のエベレスト登頂に挑む登山家たちを阻む壁に、気候変動があるかもしれません。2023年に入って史上最悪となる17人もの死者を出している理由について、専門家が気候変動を指摘しています。
ネパール観光局によると、2023年にエベレスト登頂によって死亡が確認された人は12人。さらに5人が行方不明になっており、すでに17人が死亡したと見られています。エベレストでは毎年、登頂に挑んだ人の5~10人ほどが不運にも亡くなっており、2014年には死者数が過去最高の17人となりました。しかし、2023年は既にそれと同じ数の死者が確認されており、エベレストでの死者数が史上最悪の年となると見られています。
その主な原因について、専門家は近年の気候変動を指摘。気候変動によって、天候が非常に変わりやすくなり、今シーズンはその傾向が強いと言います。天候の変化が読めずに、吹雪に巻き込まれたり雪崩に遭遇したりすることも考えられるのでしょう。
2022年の夏はヨーロッパが熱波に襲われ、厳しい暑さとなりました。日本を含め、世界各国の人々が異常気象を実感していますが、その影響はエベレストにも及んでいるようです。
その一方、ネパール政府が2023年にエベレストの登頂許可証を過去最多となる479件も発行していることにも批判が寄せられています。登頂許可証の発行は1枚1万2000ポンド(約209万円※)にもなり、ネパールのような小さな国では大きな収入源の一つになっているのだとか。登頂許可証が乱発されたことで、多くの登山家がエベレストを訪れ、それが山に圧力をかけていると指摘する声もあります。
※1ポンド=約174円で換算(2023年6月2日現在)
さらにエベレストでは、ベースキャンプの下にある氷河が温暖化で不安定になっていることや、登山者がごみを持ち帰らずに捨てていくことで、大量のごみが散乱していることなど、さまざまな問題が持ち上がっています。
エベレストの自然環境と登山家の安全を守ること。これらを両立させるためには規制が必要になるかもしれません。
【主な参考記事】
Ther Guardian. Climate change to blame for up to 17 deaths on Mount Everest, experts say. May 30 2023