これから英国のイングランドで初のベーシックインカム(※1)の実験が行われる可能性があり、賛否を呼んでいます。
※1: ベーシックインカムとは、国民に最低限度の生活を保障するために、無条件かつ定期的に現金を給付する政策(参考:現代カタカナ語辞典)
シンクタンクのAutonomyが計画しているこの実験では、30人の参加者に2年間、毎月1600ポンド(約27万7000円※2)が「タダ」で支払われます。参加者は全く働かなくてよく、仕事を探したり、働く意欲を見せたりする必要もありません。研究者は、このお金が参加者の生活や心身の健康にどのような影響を与えるかを観察する予定。
※2: 1ポンド=約173円で換算(2023年6月7日現在)
この実験に賛否両論が巻き起こりました。賛成の人たちはベーシックインカムのさまざまな長所を挙げます。貧困の撲滅につながったり、より多くの子どもたちが教育を受けることができるようになったり、犯罪を減らしたり。Autonomyの関係者は「ベーシックインカムには複雑な福祉制度を簡素化し、英国の貧困問題と戦う武器になり得る」と言います。
しかし、反対意見も少なくありません。この仕組みを維持するには莫大な費用がかかるという指摘もあれば、受給者はお酒やたばこなどにお金を無駄遣いするという声もあります。また、ベーシックインカムの金額はみんな同じとされていますが、受給者の住んでいる所は異なります。そのため、高級なエリアに住んでいる人にとってはメリットが少ないとも。
Autonomyはそのような短所を認めつつ、定期的な所得があることで、受給者はお金の使い方について長期的に考えるようになり、快楽消費は減ると見ています。
同シンクタンクでリサーチディレクターを務めるウィル・ストロング氏は「気候変動や破壊的技術、これから起きる産業革命を考慮すると、私たちはこれから何らかの形でベーシックインカムが必要になる」と述べています。
この実験が実施されて成功すれば、英国政府はどんどん大きくなりそうですが、その代償も気になるところです。
【主な参考】
This is MONEY. Sit around, do nothing… and get paid £1,600 a month! Universal income benefits trial will see people rake in cash for doing zilch. 2023 June 5