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2023/9/21 21:30

イエス? ノー? 欧米で物議を醸す「プロポーズ」の新トレンド

プロポーズはどこでする? 結婚を考えているカップルにとっては重要な問題かもしれません。ある日本企業の調査によれば、女性が選ぶ人気の場所として「2人の思い出の場所」や「どちらかの家」が多く挙げられています。プライベートな空間が前提となっていると考えられるでしょう。

↑もしかしてやり過ぎ?

 

しかし近年、その前提が崩れつつあります。欧米でプロポーズは2人だけで行うものではなくなりつつあり、急速に「パブリック化」している模様。しかもそこでは、民間企業が商機を捉えているようです。

 

例えば、2023年初めには米・ニューヨークで、ある男性がタイムズ・スクエアにあるディスプレイの一部を借りました。そこにパートナーの女性と彼らの息子の写真を映し出して、見ず知らずの人たちに囲まれながら、この男性は片膝をついてプロポーズ。女性は「イエス」と答え、この作戦は見事に成功しました。

 

男性向け結婚サイトのThe Plungeによれば、プロポーズの場所には4つのレベルがあるそう。

 

レベル1: プライベート型(2人だけ)
レベル2: セミプライベート型(家で友人もしくは身内に囲まれながらプロポーズ)
レベル3: イベントなしのパブリック型(公園や海といった公共の場で行うものの、プロポーズに参加するのは2人だけ)
レベル4: パブリックイベント型(キスカムやフラッシュモブ、スカイライティングを行ったり、撮影クルーやオーケストラを雇ったりして劇的にプロポーズ)

 

この見方をすれば、レベル1のプライベート型からレベル4のパブリックイベント型へシフトしているというプロポーズ。この変化はコロナ禍で生まれたとされています。ロックダウンで自分やパートナーのためにお金を使いたいと考える人が急増したそう。

 

その結果、欧米ではプロポーズプランナーに相談することがトレンドになりました。依頼主の多くは男性で、英国では花婿候補が平均して2000〜2500ポンド(約36万〜46万円※)をプロポーズプランナーに支払っていると言われています(2人だけの特別な場所を用意してもらうのに16万5000ポンド〔3000万円以上〕を支払う人もいるそう)。業者に頼めば、プライベート型からイベント型まで、さまざまなプロポーズプランを作ることができるようで、なかにはヘリコプターやプライベートジェットを使う場合もあるようです。
※1ポンド=約183円で換算(2023年9月20日現在)

 

パブリックイベント型プロポーズには批判もあります。例えば、第三者(見ず知らずの人たち)が押しかけるような場所では、プロポーズされた人はプレッシャーを感じて「イエス」と言わざるを得ないという意見があります。

 

別の見方では、プロポーズプランナーの流行は日常生活のインスタグラム化を反映しているとのこと。日常生活のあらゆる瞬間が写真に撮られたり、動画に記録されたりして、共有されるようになってしまったと嘆いている人もいます。

 

実際には、パブリックイベント型プロポーズを受けても、断る(ことができる)人がいないわけではありません。2022年に米国では、アイスホッケーのプロリーグ・NHLの試合において、他の人が大勢いる観客席で男性が女性にプロポーズ。キスカムまで用意していたそうですが、この結婚の申し込みはあえなく失敗。女性は男性の耳元で何かを囁くと、1人でその場を立ち去ったのです。男性はがっかりして、恥ずかしそうですが、一連の出来事は動画に収められ、YouTubeに公開されてしまいました(以下の動画を参照)。

 

このようなことを考慮すれば、安全なプロポーズは従来のプライベート型になります。プロポーズを断ることができない状況に相手を追い込むこともなければ、プロポーズをした人が相手に「ノー」と言われても公衆の前で恥をかくこともありません。それでも、成功したパブリックイベント型プロポーズに遭遇するようなことがあったら、そのときはカップルを祝福してあげたいですね。

 

【主な参考記事】

The Week. Are public marriage proposals getting out of hand? September 5 2023