プレスとビルドアップ
『サッカー最新戦術ラボ プレスVSビルドアップ』(西部謙司・著/学研プラス・刊)は、実際の試合のデータを駆使しながら展開していく戦術解説書だ。2016~2017年シーズンのUEFAチャンピオンズリーグを中心にした世界のトップレベルの試合で繰り広げられた一流チームの実際の戦術がリアルデータとして扱われる。
定点観測的な考察のキーワードとなるのは、プレスとビルドアップだ。誤解を恐れず、ごく簡単に言ってしまおう。ハリルホジッチ監督が戦術の核として強く意識しているのがプレス。そして、長友選手をはじめとするフィールドプレイヤーの脳裏に浮かんでいるはずなのがビルドアップ。まさに、これからの日本代表の戦術を考えていく上で必要なコンセプトがすべて語られている。
本書の結論は明らかだ。「どちらか」では、トップクラスの試合――もちろんワールドカップも含まれる――では勝ちきれない。
日本のサッカーの方向性を見きわめるためのツール
こうしたコンセプトは、「はじめに」に書かれた次のような文章からも理解できる。
実際にCLの上位に進出するようなチームはビルドアップの能力が高く、同時に強烈なハイプレスを仕掛けています。ビルドアップはできるがハイプレスはやや苦手、逆にハイプレスは得意だがビルドアップがうまくいかない、そういうチームもまだあります。しかし、両方できなければ勝ち抜いていけないという時期はすぐに来ることでしょう。
『サッカー最新戦術ラボ プレスVSビルドアップ』より引用
ワールドカップ開幕までの3戦で、ハリルホジッチ監督は思い切った手を打つだろうか。2010年大会の直前、岡田武史監督はフォーメーション変更を含む戦術の大幅な見直しを行い、結果を出した。
自分が代表チームを任されたら、誰をどこに配置して、どういうサッカーを目指すか。ファンなら誰でもするはずの妄想に、具体的な理由とリアリティを加えてくれるのが本書だ。ゲームとは系統が違う脳内シミュレーションを徹底的に楽しむための一冊とも言えるだろう。
筆者はこの本で、開幕までの時間をひたすら理論武装に充てていくことに決めました。
【著書紹介】
サッカー最新戦術ラボ プレスvsビルドアップ
著者:西部謙司
発行:学研プラス
現代サッカー最先端は、前線からボールを奪いにいく「プレス」と、GKからボールをつないで攻める「ビルドアップ」のせめぎあい。今のサッカーの最新面白観戦ポイントだ。試合の趨勢を握るこの戦術対決の詳細を、著者が豊富な事例を交えながら明らかにする。
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