ビジネス
2021/11/17 18:00

ニューバランス×カドーとの対談から読み解く、コロナ禍以降も生き残る「ハイブリッドなプロダクト」

1906年、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンで新しい(new)バランス(balance)感覚の矯正靴メーカーとして誕生し、様々なカルチャーと融合しながら進化し続けているニューバランス。そして2012年に「空気をデザインする」と掲げ、家電業界におけるこれまでの概念を一新させた日本のcado(カドー)。

 

本記事では、アスレチックブランドのニューバランスジャパン・小澤真琴さんと、家電メーカーのカドー・鈴木 健さんに登場していただき、対談をお届けします。「シューズと家電って、まったく関係ないジャンルでは?なぜ?」と思うかもしれません。ですが、2社には共通する部分があります。それは、必然性のあるデザインと徹底的に機能にこだわるプロダクトであること。

 

それゆえ、コロナ禍での暮らしや、新しい時代に求められるハイブリッドな働き方に対しての考え方も共鳴する部分がたくさんありました。モノづくりに魂を込める2社が考えるこれからとは、どんなものでしょうか?

↑左:株式会社カドー・取締役副社長/デザイナーの鈴木 健さん。右:ニューバランスジャパン・PRシニアスペシャリストの小澤真琴さん

 

この1年半で、働き方のメリット・デメリットが浮き彫りに

ーーコロナによってリモートワークが定着し、働き方を自由に選択できる時代になってきました。ニューバランスとカドーでは、今どのような働き方をされているのでしょうか?

 

小澤真琴さん(以下、小澤) ニューバランス ジャパンの働き方は大きく変わりましたね。現在は月曜日と木曜日のみ30%の人数までオフィスに出社してOKとしていますが、ほぼ出社せずにリモートワークが中心となっている社員もいます。この新しい働き方に慣れてきて、また大きな支障もないので、フルで全員が出社するという以前のような働き方には戻らないように感じています。

 

鈴木 健さん(以下、鈴木) カドーも、コロナになってから自由に働き方を選んでもらうようにしました。以前のように全員が同じ場所、時間に出社する働き方には戻らないでしょうね。ただ、新入社員や仕事管理能力が不十分な人にとっては厳しい状況とも言えます。机を並べていたからこそ学べた部分もあるので、リモートと出社の割合を3:2にするのがちょうど良いのかな? と考えていたところです。

 

小澤 そうなんですよね。リモートにも良し悪しがあるな、と感じています。一人暮らしだと誰とも会話することなく1日が終わってしまうなんてこともありますし、新入社員はチームメンバーと画面越しでしか会ったことがない場合もありますよね。

 

鈴木 私たちもリモート環境でのアイディア出しには歯痒さを感じました。最初にAさんが話して、次にBさんと形式的になってしまうことが多いので、自由に意見を言い合うのは対面で同じ空間を共有してこそだったのか、と。あとは、忙しい人や手が空いている人が見えないのも辛かったですね。

 

小澤 オンラインでは、画面越しの相手がどんな状況か把握しにくいですからね。出勤していれば無意識に雑談もできましたが、リモートワーク中はその時間も意図的に作らないといけないので同僚から「雑談したいです」と連絡もらうこともありました。働き方だけで切り取るとリモートで助けられた部分はたくさんありますが、コミュニケーションについてはまだまだ課題がありますね。

 

コロナ禍で生まれたハイブリッドなプロダクト

ーーコロナ禍で働き方が変わっていく中で、ニューバランスではリモートワークアイテムとしても話題になったアパレルシリーズTHE CITYの21秋冬コレクションが9月に発売されました。カドーでも11月30日にモバイルディフューザー「STEM Mini(ステム ミニ)」が発売されます。それぞれコロナ禍で新プロダクトを生み出すにあたり、工夫された点を教えてください。

 

小澤 THE CITYは新型コロナウイルスの拡大より前に企画していたアパレルプロダクトでした。2020年2月から“働く大人のデイリーウエア”として、ニューバランスがスポーツジャンルで培ってきた快適性と機能性を生かし、どんなシーンでもアクティブに働ける商品を展開しています。2021年はTHE CITYで、自分らしくもっとアクティブに働けるよう、運動習慣を取り入れ仕事のパフォーマンスを向上させる「ワークティブ」という新たな働き方を提案しています。

↑小澤さんが着用しているのは21秋冬から登場した「シューズ パッチ テック カーディガン(7700円・税込)」。男性はもちろん、カジュアルな着心地は女性にもおすすめ。左手首の部分にはニューバランススニーカーのワッペンも付いていて、遊び心も嬉しい

 

21秋冬の新作では、コロナ禍で多様化した働き方にフィットする製品になるようオフィス・在宅・リモート、リラックスタイムどんなシーンでも着こなせるジャケットとパンツに進化させました。ポンチ素材を使用した「テック シティー ジャケット(1万1880円・税込)」は、柔らかい着心地で動きやすく快適。徐々に出張業務も増えてくると思うのですが「テック スリム テーパードパンツ(9790円・税込)」とのセットアップもおすすめです。もちろんニューバランスのスニーカーとの相性も抜群ですので、週に数回の出社日は一駅分ウォーキングして帰る、在宅ワーク中に散歩へ出かけるなどアクティブシーンでも活用できます。

↑THE CITYコレクションは、スポーツデポ・アルペンのみでの限定販売。21秋冬モデルには、進化したジャケット・パンツだけでなく、耐久性に優れた素材を使ったフーディーやボーダーロンT、バッグなども追加されている

 

鈴木 私も実際に着させてもらったのですが、ジャージのような着心地でストレスが少ないんですよね。もうカジュアルな服装に慣れてしまったので、正直カチっとしたジャケットを着るのが億劫で(笑)。

 

小澤 わかります(笑)。「テック スリム テーパードパンツ」は、ウエスト部分にゴムが入っているので、セットアップで着ていただけると上も下もラクに着ていただける商品です。キチッとしたい時には、ベルトも付けられるので、オンオフをシームレスに繋いでくれるアイテムとして使っていただけます。

↑テック スリム テーパードパンツの伸縮性に驚く鈴木さん。撥水性にも優れ、オールシーズン使えるのもTHE CITYの特徴

 

ーーカドーさんが11月30日に発売するステム ミニはコロナ以降に開発された商品なのでしょうか?

 

鈴木 そうです。これまでの空気清浄機や加湿器は、インフルエンザが流行する年末年始と、花粉やPM2.5が出てくる春先に需要が高まる季節家電だったのですが、コロナによって消費者のマインドが変化し1年中使う家電になりました。もともとカドーはBtoB向けの商品が多かったのですが、リモートワークの増加に伴い、個人利用、特にデスク周りのニーズが強まってきたことから、ステム ミニ(1万5400円・税込)の開発をスタートさせました。

 

加湿、ミスト除菌、アロマディフューザーと1台で3つの機能を搭載しています。ご家庭内やオフィスでの活用だけでなく、持ち運びができるので外食時、飲食店のテーブルに置いていただくことも可能です。この1年半で、目には見えない空気の清潔さへのニーズは確実に高くなりました。一度の充電で最大20時間利用できるので、常に持ち歩いてどんな場面でも安心してお使いいただきたいと考えています。

↑写真左にある21畳まで適応した空気清浄機「LEAF 250(3万9800円・税込)」は、これまでの商品と違い、全てのパーツを取り外せ隅々までお手入れできる商品。写真中央にあるのが持ち運びにも便利な専用ポーチ付きの「ステム ミニ」。その隣はiFデザインアワード2020に受賞した人気ポータブル空気清浄機「LEAF Portable(2万1800円・税込)」。その奥に在宅ワークで需要が拡大した除菌サーキュレーター「STREAM1800(2万7280円・税込)」

 

機能が土台にあってこその美しいデザイン

小澤 ステム ミニのような家電で心身を健康に保つことは、リモートワークでの仕事のパフォーマンス向上につながると思います。だけど、これだけの機能を搭載しているのに、ステム ミニはコンパクトですよね。首からかけてマスク代わりにもできそう。

 

鈴木 正直コロナがなかったら生まれていなかった商品です。この商品を開発するにあたって、社内でもたくさんの議論を進めていったのですが、首からかけるというのはアイディアとしてでましたよ。

↑カドーのデザインフィロソフィーは、普遍的な「美しさ」と「使いやすさ」、そして「感動を追求していくこと」

 

コロナ禍で生活様式も大きく変化したので、空間の清潔をどのように保つか? は、かなり議論されている部分だと思います。カドーでは、創業当時から機能・技術と美しいデザインが融合した商品を開発し続けています。ただ美しいだけでなく、機能に下支えされたデザイン、さらにこだわりやストーリー(心)が見える商品を開発しています。今回のステム ミニも機能+美しさ×心の視点から生み出した商品です。

↑コンパクトで高性能なステム ミニを眺める小澤さん

 

小澤 なるほど。実はニューバランスのシューズについている「N」もただのロゴデザインとして付けているものではないんですよ。足の甲を支えるという機能面においてもNが必要不可欠でして、必然性のあるデザインとしてこれまで受け継がれています。カドーさんがこだわり抜いたものづくりのコンセプトに通じるものを感じて、嬉しくなりました。

 

鈴木 私も今日はニューバランスのスニーカー「990」を履いてきたのですが、そのお話を聞いてますますニューバランスが好きになりました。知人のスタイリストに「今買わないと後悔する!」とおすすめしてもらって購入したのですが、足のサイズだけでなく足の幅も合わせて選べるので、履き心地もしっくりはまって、主張しすぎないデザインもちょうどいい。今まで履いてきたスニーカーの中で一番です。

 

小澤 ありがとうございます! ニューバランスの990番台シリーズは、USA工場で一足ずつ丁寧に作られているファンの多いシリーズです。1982年に初代となる990がリリースされ、今まで13代に渡って進化し続けてきました。スティーブ・ジョブズ(Apple創業者の一人)も「M991」や「M992」を愛用していたと言われていますよ。

 

鈴木 そうなんですよね、あのジョブズが認めた機能性とデザインですからね。機能が優れているだけ、かっこいいだけじゃなく両方兼ね備えたハイブリッドなプロダクトが求められるでしょうね。それを何十年と受け継いでいるブランドはそれだけでも価値になりますね。

 

これから迎える新しい時代に向けて

↑ニューバランスとカドーのコンセプトが重なり、意気投合する二人。プロダクトへのこだわり、思いが溢れる取材となった

 

ーー最後に、今後の2社の展開をお聞かせください。

 

小澤 今後、THE CITYではウィメンズラインの展開を予定しています。働く男性に向けたプロダクトとして始まりましたが、コロナ禍で女性の働き方も大きく変化しています。多様な働き方が認められていく中で、働く全ての方に機能面とデザイン面どちらも満足いただけるような、時代に寄り添った、ストーリー性をもった商品を展開していきたいと考えています。

 

鈴木 直近ですとモバイルディフューザー、ステム ミニの発売が控えていますが、来年以降には睡眠に特化した商品を発売予定です。空気と睡眠には深い関係があります。コロナ禍によって自宅で過ごす時間が多くなり、睡眠への関心も強くなりました。仕事や睡眠だけでなく暮らしの中におけるさまざまなシーンに合った空気、新しい時代に合わせた空気をデザインし続けたいです。

 

アスレチックブランドであるニューバランスと、家電メーカーであるカドーとの異業種対談でしたが、変化が激しい転換期において大切にすべきモノ・コトは共通していると感じました。多様な時代を先駆けるTHE CITY、そしてカドーのプロダクトから目が離せません!

 

 

撮影/中田 悟

 

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