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2024/8/5 19:00

“効率より充実”で目標を達成!脱タイパの1・1・1・1時間術を提唱者が解説

この10年で浸透し追求されるようになった、コストパフォーマンス、通称コスパ。これを追いかけるように、ここ2〜3年で急速に存在感を増すのが、“タイパ”と呼ばれるタイムパフォーマンス、つまり時間的な効率を求める価値観です。

 

効率を求めることはけっして悪いことではありません。ただ、効率性や生産性を重視するあまり本質を見失ってしまう……そんな空虚な先例に異を唱えるように、を新たなタイムマネジメント術を提唱する人がいます。

 

『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』(かんき出版)の著者で、「タイムコーディネーター」として活躍する著者の吉武麻子さん。効率より充実を重要視するという“1・1・1・1時間術”と、その活用方法を教えていただきました。

 

この記事でわかること

 

本当にやりたいことほど後回しになる……
「時間が足りない!」はなぜ起こる?

 

ほとんどの人が、時間管理方法を習うことはありません。自己流で挫折してしまうことも多いはず。多くの時間管理がうまくいかない理由はなぜですか?

 

「そもそも人にはなまけぐせがあり、楽な方向へと流れていってしまうものです。また、自分の予定よりも緊急なことや、パッと目に入ったこと、自分以外の他人から頼まれたことなど、自分のやりたいこと以外の何かに時間を差し出してしまいがちです。
24時間という時間は限られているのに、あれもこれもと予定を詰めこみ、結果、最も大切な“自分の将来のための時間“を犠牲にしてしまう。そして、目につくのは、できない自分への自己嫌悪ばかり。その結果、気持ちがついて行かず、自己流のタイムマネジメントの継続が難しくなってしまうのです」(タイムコーディネーター・吉武麻子さん、以下同)

 

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「今日もまた、時間を無駄にしてしまった!」
忙しい時ほど“だらだらスマホ”の時間が増える理由

 

予定になかった緊急案件、納期の迫った仕事など、時間に追われて取り組んだ仕事があるときほど、ついだらだらとスマホを見てしまい、無駄な時間を過ごしてしまいがちだと吉武さんは言います。

 

「経営コンサルタントのスティーブン・R・コヴィー博士が世界的なベストセラー『7つの習慣』の中で、タスクの優先順位を下図のように『緊急性』と『重要度』を軸に、4領域に分けています。
緊急であり、重要である第一領域の案件が増えれば増えるほど、その反動で、比例的に第4領域であるだらだらスマホや将来にプラスにならない時間が増えます。緊急で重要な案件は、体力も精神も消費するため、疲弊して思考停止状態になってしまうためです。この緊急性と重要度のものさしは、あくまでも自分。第4領域の無駄な時間を防ぐには、意識的に第2領域、緊急度が低く、重要度が高い案件、つまり“自分のやりたいことを叶える”ための時間を、第一に確保することが大切です」

 

出典=『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』かんき出版

 

第1領域……緊急であり、重要であること
第2領域……緊急ではないが、重要なこと
第3領域……緊急ではあるが、重要ではないこと
第四領域……緊急でもなく、重要でもないこと

 

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時間の使い方を考えることは
“どう生きたいか”を考えること!

時間の不足感を感じる人と感じない人との徹底的な違いは何でしょうか?

 

「自分が“どう生きたいか”があり、その軸に基づいて日々の時間を使っているかどうかです。時間の使い方を考えるとは、“自分が何を大事に生きていたいか”という具体的な人生のイメージ=ビジョンを考えることから始まります。“人生”というと仰々しく感じるかもしれませんが、自分が後悔しない人生とは? と考えてみてください。先が見通せると不安もなくなり、時間の不足感からくる焦りもなくなります」

 

 

「例えば、会社で決められた目標があったとします。仕事は仕事と割り切って、会社が抱える目標に対して淡々とこなしていくことも、もちろんできますよね。でも、どうせ動くのであれば、会社の目標に対して自分が手綱を握って、会社の目標を達成しながら、自分もどう成長していくかを考えてみることのほうが、豊かな時間の使い方につながるのではないでしょうか。
そこで、大切になってくるのがビジョンです。例えば、『得意な英語を使って社会貢献がしてみたい』というざっくりとしたビジョンを持っていたとします。会社で出された目標数値を追いながら、個人目標として、『英語の実力を上げて海外の新規取引先と契約する』と掲げてもよいでしょう。
やりたいことが明確になれば、やりたくて仕方がなくなり、“達成したくて仕方のない目標”ができます。その目標は、行動を起こすための原動力になります。はじめは、明確でなくてもいいのです。行動を起こしながら、自分の心の真ん中がどこにあるのかを探っていきましょう。まずは、どんな生き方をしたいかを書き出すことから始めてみましょう」

 

時間の不足感を感じる人

・自分のやりたいことの予定よりも、緊急なことやパッと目に入ったことに真っ先に取り組みがち。
・他人から頼まれたことに時間を差し出してしまう。
・自分は“どう生きたいか”が明確でない。

 

時間の不足感を感じない人

・自分が何をしているときが心地よいか、何を大事に生きていたいかを知っている。
・達成したくて仕方がない夢や目標があり、そのために時間を使えている。
・夢や目標に向かって、自分がどうしたら初めの一歩が出せるかの術を持っている。

 

夢や目標を叶える
「1・1・1・1時間術」とは?

「1・1・1・1時間術」とは、ビジョンを決め、1年、1ヶ月、1週間、1日と目標を分解して実行していく時間術。ビジョンが決まったら、次は具体的にどんなアクションを取っていけばよいのでしょうか?

 

出典=『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』かんき出版

 

「まず大前提に、目標を達成するために必要な3つの要素があります。それは、“達成したくて仕方がない目標”、“実行可能な計画”、“未来を変える今すぐの行動“です。1・1・1・1時間術とは、この実行可能な計画を立てるための時間管理術です」

 

ビジョンから、まずは“やりたくて仕方がない1年で叶えられる目標“を立てます。

 

「1年の目標は、目標というよりはテーマと考えてもらってかまいません。ビジョンが『価値観の書き出し』だとすると、1年目標は『得たい結果の書き出し』です。転職する、資格を取る、家を購入するなど、ざっくりしたテーマを書き出してみましょう。
その目標を3ヶ月目標に分解し、さらに1ヶ月、1週間単位に分解する。1週間単位に分解するときには、すぐに取り掛かれるタスクにまで落とし込みます。それが、“1・1・1・1の時間術”です」

 

では、最後の1日は?

 

「最後の1日は、タスクを細かく管理することではなく、タスクを実行するための時間を確保し、今日という日のやることを明確にすることです。大きなタスクを小さく分解し、逆算して今日=1日にやることを決めます。タスク管理は1週間単位で行えばよいでしょう。限られた時間を何にどう使うかを明確にし、実行できれば、“できた!”という達成感で充実度がアップ、次もやってみようと考え、継続につながります」

 

1・1・1・1時間術の例

例を挙げて、具体的に分解してみましょう。

 

1.1年で達成できそうな目標を考える。

1年のテーマを、まずはざっくりと決める。「ベジタリアン・ビーガンメニューを開発する」。
続いて、それはなぜか?を考える。「担当しているレストランで、海外のお客様が増えているため、そのお客様の風習を理解してメニューを出したい。そのためにも英語で会話できるようになりたい」。
なぜかを考えることで、より目標が具体的になる。

 

2.1年目標を分解する。

上記の目標の場合、3つの軸の目標に分解できる。
・海外のお客様の風習を調査する。
・ベジタリアン・ビーガンメニューを開発する。
・日常会話レベルの英会話を習得する。

 

3.1年で目標を達成するための具体的な行動を思いつく限り、すべて書き出す。

・ベジタリアン・ビーガンメニューに関する資格を取る。
・ベジタリアン・ビーガンメニューを開発できるよう上司にプレゼンする。
・上司の承認を得るために企画書を作成する。
・英会話教室に通う。……など

 

4.3ヶ月目標に分解する。

例えば、書き出した具体的行動から、“ベジタリアン・ビーガンメニューの資格取得講座に通い、座学とレシピ習得し、実際にベジタリアンの方に料理をふるまう”を3ヶ月目標に設定する。

 

5.3ヶ月目標を、さらに1ヶ月ごとの目標に分解する。

・1ヶ月目=講座を決定するための情報を集め比較検討を行い、申し込み、通学する。
・2ヶ月目=講座を復習し、自身で料理を作れるようになる。
・3ヶ月目=実際にベジタリアンの方に食べてもらう機会を作る。

 

6.1ヶ月目標を、さらに1週間ごとの目標に分解する。

1ヶ月目標=講座を決定するための情報を集め比較検討を行い、申し込み、通い始める。

1週目=講座の資料を集める。
2週目=比較検討し2〜3社に絞る。
3週目=通っている方の口コミや話を聞く。実際に体験に行く。
4週目=講座を決定し申し込み、通学を始める。

 

7.今日という日に何をしなければいけないかが明確になっている。

「1週目=講座の資料を集める」を具体的な行動タスクに棚卸し、先にスケジュールに組み込む。

 

この際、私たちは他にもやることを抱えているため、目の前のことで追われて1週間が終わってしまわないよう、先に「緊急ではないが、重要なこと」の第2領域の時間を確保することが重要です。

 

「ここで目標を立てるときに、本当にこのタスクで目標が達成できるのか心配になる人もいらっしゃるでしょう。そんなときは、その道の先輩や、本から知識を取り入れ真似るのもいいと思います。しかし、その後の振り返りが大切です。実行してみて、その方法は自分にとって、現実からかけ離れた設定ではなかったか、今後も継続できるのかを振り返りましょう。人の方法が自分にフィットするとは限りません。合っていなければ、別の方法を考えてみる。そうすることで目標が再設定されることもあります。それらを繰り返していくことで、自分のやりたいことの“的の中心”を狙っていく。行動を起こしながら、修正していきましょう」

 

時間が足りない人がすべき3ステップ

 

1年単位の目標というと、初めての人にはハードルが高いかもしれません。「1・1・1・1時間術」のメソッドに沿って、時間が足りない人が最初にすべき3ステップを教えてください。

 

「自分が自分の時間のコントロール権を握っていることを実感する必要があります。まずはやりたいことを決めます。ジムに通う、きれいな部屋をキープするなど、なんでもよいです。
目標を決めたら、1週間単位で自分の時間を何に使っているか、自分の時間を全て広げて整理しましょう。時間の整理をせずに、いきなりノウハウを活用するのは荒地を耕さずに、いきなり苗を植えるようなもの。時間を整理したら、目標のための時間を押さえます。予定通り実行してみて、振り返りを行い改善していきましょう」

 

ステップ1.動ける時間がどのくらいあるかを整理する

「例えば健康のために週2回ピラティスに通いたいと考えたとき、まずはその時間があるかを確認します。確保できれば、次のステップに進みましょう。ない場合には、ピラティスに通うための時間を捻出する必要があります。把握した仕事や家事のなかに短縮できるものはあるかを確認します。自分がやらなくてはと思っていた仕事を誰かに任せる。やらないことを決め、時間を生み出すことも、ときには必要です」

 

ステップ2.やりたいことのための時間を確保する

「ピラティスに行きたいのであれば、移動時間を含め余裕をもった時間をブロックします。あらかじめ予定が決まっていれば、予定ありきで他の予定を組み立てられるので迷いがなくなります。当日実行できなかったとしても、1週間のなかで調整できるようにしましょう」

 

ステップ3.ログを取り、振り返りを行う

「確保した時間を実際のどのように使ったかの記録を取り、ふり返りをしましょう。この計画が今後も継続できそうか確認するのです。うまく行かなかった原因や、気持ちが追いついてこない原因を探ります。単純に、ピラティスに向いていなかったということもあるでしょう。やらない理由がどんなところにあるか、どう対処するか、ひとつひとつ潰し、自分のベストなスタイルを模索します」

 

では、時間のプロ自身は、1・1・1・1時間術をどのように実践したのか、またどのように夢を叶えたのか、次のページで伺います。

 

実際に継続できたピラティス。
吉武麻子さんが実践した成功の秘訣とは?

吉武さんが実際に実行できた目標について、その内容と理由を教えてください。

 

「私もやりたいと思いながら始められなかったピラティスを、環境を整えることで始められるようになりました。もともと健康のためにピラティスを始めたいと考えていたのですが、なかなか始めることができませんでした。そこで、やりたいことなのになぜできないのか原因を探ってみました。すると、外出が億劫、予約が苦手、他のやりたいことを優先してしまうなどやりたい理由より、やりたくない理由が上回っていて、腰が重たくなってしまっていたのです。

 

それらの原因を1つ1つ潰していきました。例えば外出が億劫であること。カフェが好きだった私は、カフェで仕事をすることをルーティンにしていました。ピラティススタジオの近くので仕事ができるカフェを探し、そのカフェで仕事をするように切り替えました。カフェで仕事をし、集中力が切れたら、ピラティススタジオに向かう。そのようなルーティーンを開始しすることで、6ヶ月以上継続に成功しています。人それぞれ、自分の個性に合わせた、取り組み方があると実感しました」

 

時間のプロは、どうやって夢を叶えたのか?

 

書籍のなかで、「3年間ぐらいには法人化できるといいな」「この仕事は3年以内にはは卒業しているといいな」と思ったことが1年で実現した、とありました。どのように計画したのですか?

 

「“本を出版する” “事業を法人化する”ということは、どれも私の本来の目標達成に付随して起きた“結果”であり、目標ではありませんでした。私の目標は、“タイムコーディネートで皆さんの人生を豊かにすること”です。その目標のために、自身の話に説得性を持たせるための“法人化”であり、出版も、タイムコーディネートの考え方を多くの方に届けるために取り組んだことです。
もともと、私は教育に興味があり教育学部に進みました。家裁調査官の試験を受けたものの不合格となり、一般企業に就職。その後、方向転換して韓国に留学し、現地でキャスティングディレクターとして働きました。丸4年が経った頃、韓国語も、キャスティングの仕事も、やり切ったと思える瞬間がやってきました。それはスキル云々ではなく、自分で選択して、自分で決めて、自分で動いた結果だからこそ得られる「納得感」からくるものでした。これがまさに、自分の人生の手綱を握るということなんだと実感しました。だからこそ、自分でやり切ったという経験を何よりも大事にしてほしいと思っています」

 

現在では、子どもたちに生きる楽しさを伝えたいというビジョンとともに、タイムコーディネートの概念を通して、心地よい時間の使い方を実践するためのサポートを仕事にしているそう。

 

「私にずば抜けた能力があるわけではありません。“やりたいこと”という漠然としたものを、“現実の1歩”に落とし込み、ただただ目の前のことに取り組んでき結果です。皆さんも、ぜひ1・1・1・1時間術を使って、まずは初めの一歩一を踏み出してみませんか?」

 

 

時間を管理することは、自分がどう生きたいかを明確にしていく作業でもあります。どう生きたいかを考えることが、大きなタスクになってしまっているのならば、もう少し小さくし、“時間に追われる毎日をこの先もずっと続けることになったらどうだろう?”、“理想的な一日とはどんな日?”など、自分自身に問いかけてみてください。自分の気持ちに素直になることが、私らしい時間の過ごし方の第一歩になるはずです。

 

 

Profile

タイムコーディネーター / 吉武麻子

TIME COORDINATE株式会社 代表。大学卒業後、旅行会社勤務を経て、26歳で韓国留学。その後、現地法人でキャスティングディレクターとして24時間365日仕事に追われる日々を過ごす。帰国後、キャリアとライフイベントの狭間で葛藤した経験から、疲弊せずに毎日を楽しみながら仕事のパフォーマンスもあげていく「タイムコーディネート術」を考案し、のべ3000名以上に指南。心地よい時間の使い方で、ありたい未来をつかみに行くための「タイムコーディネート実践プログラム」や「タイムコーディネーター養成講座」を開講。また、シリーズ135万部発行の『時短・効率化の前に今さら聞けない時間の超基本』、『やりたいことがどんどん叶う!じぶん時間割の作り方』の監修や、タイムコーディネート手帳の製作販売、企業研修、時間の専門家として各種メディアにて掲載・連載執筆を行っている。プライベートでは2児の母。
HP

 

吉武麻子『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』(かんき出版)