友人と家飲み、楽しいですよね。ワインの本場・フランスの家飲み事情もユニーク。日本人は、フランスの文化に刺激を受けることが多いと思います。そこできょうは、フランスの家飲みの日本と同じ部分、違う部分をご紹介しましょう。
フランスの家飲みソワレとはどんなものか?
フランスの友人たちの間でよく交わされるフレーズのひとつに、「来週ソワレするんだけど、うちに来ない?」というものがあります。ソワレはパーティを表す言葉のひとつで、夜に行われるパーティのことをいいます。夜を表すsoirが語源です。
フランスの家飲みは、金曜日の夜や土曜日に行われることが多く、仕事が終わって着替えたりひと休みしたりしたあと、20時あたりから始まるのが一般的です。
日本に比べると、ちょっと遅めのスタートといった感覚でしょうか。しかし、これはフランスでは一般的なもので、レストランのディナータイムも19時30分からというところが結構あります。
ソワレでの食事はホストが用意しますが、招かれた人たちもたいていハムやソーセージなどのおつまみやチーズ、デザート、ワインなど、一品を持参することが多いです。
かぶらないように事前に指示してくれるホストもいますし、ゲスト同士で「何持っていく?」と相談するケースもあり、バラエティに富んだフードを楽しむことができます。
日本と似ているフランスの家飲みパターン
ソワレには、日本の家飲みと同じようにいくつかのパターンがあります。それは、大きく分けて(1)女子飲み、(2)男子飲み、(3)カップル飲み、(4)ノーテーマの単なる飲み、の4つ。
もっとも特徴的なのは男子飲みです。
フランスの男子飲みはサッカー観戦飲みと決まっています。女子(妻であろうと彼女であろうと)には遠慮してもらい、ビールとポテトチップス、フライドポテト、ピザなどジャンクフードをどっさり買い込んで試合に臨み、大画面のテレビの前ですべての感情を解放します。ワインと美食の国、のはずのフランスですが、男性同士だとこんなものです。
女子飲みの場合は、シングルだった女友だちに彼氏ができたり、逆に別れたりといったことが起きると、「東京タラレバ娘」のように緊急招集がかかります。
男女、あるいはシングルか恋人持ちか問わないソワレは、出会いの場になることもしばしばあります。
フランス人はソワレでさまざまなことを長時間話すため、相手がどんな考えを(とくに仕事や人生に関して)持っているか、また、自分と異なる意見に遭遇した時にどんな反応をするかなどがよくわかる人間観察の場ともなっているのです。ここが日本とは大きく違う部分でしょう。
それぞれの近況報告から始まるのが一般的ですが、自分の現在の仕事や将来のキャリアについての考え、家族、政治、経済、例えばそこに外国人がいればその国の文化についてなど、いろいろなテーマについて(しかもひとつひとつ長時間)語り合います。
とくに今年は大統領選挙の年にあたるため、各候補の公約(失業対策、教育、福祉対策など)に関する話題も盛り上がります。
フランスは日本のように源泉徴収制ではなく、各自が確定申告を行うため、税金の使われ方についての意識はとても高いです。また、それ以前に、政治・経済の話は必ずと言っていいほど話題にのぼります。
ソワレに参加すると、「あなたは(これについて)どう思う?」とよく聞かれます。
フランス人は自分の意見を話すことも大好きなのですが、自分以外の人がどのように物事を捉え、分析するのか知ることにとても興味を持っているのです。私も意見を聞かれた時は日本の状況を交えながら答えることにしていますが、やはりフランス独自のことに関する話題となると、留学生の私としては返答に困ることがあります。
大切なのは、自分の意見をわかるところまででもしっかりと話すことです。相手と反対意見を言っても険悪になることはまずありません。もちろん、いろいろと質問されることはありますが、個人の意見は違って当然という意識がベースにあるということを感じます。
ただし、サッカーの話は別です。親友が絶交してしまうこともしばしばあります。
フランスの家飲みで食べるものと飲むもの
ソワレでの料理は、生ハムやサラミなどのフィンガーフードに始まり、その後は、サラダ、メイン(料理好きなホストの場合はお魚とお肉の両方)、チーズ、デザート、カフェといった流れになります。
お酒はアペリティフ(食前酒)から始まります。男性は少しこだわったベルギービール、女性はフルーティなカクテルが人気ですが、ここブルゴーニュでは何と言ってもクレマンドブルゴーニュ! これは、ブルゴーニュで生産されるスパークリングワインで、近年では高品質化が著しいです。
そこから白ワイン(暖かくなるとロゼワインも人気です)、赤ワインへと移り延々と飲み続けます。ワインは、数本を開けてデギュスタシオン(テイスティング)したのち、自分の好きなものをグラスに注ぐ場合が多いです。
これまで参加したソワレを振り返ると、なんだかんだとワインは1人ボトル1本くらい消費しているように思いますが、お酒は基本的に自分で注ぎます。そのため、自分の限界を超えて酔っ払ってしまう人は見たことありません。
それは、基本的に男女ともに自分で注ぐため自分のペースで飲むことができるから。男性は女性がボトルを手にした時に気を回して注いでくれることはありますが、日本のようにすすめることがないのです。
話が弾んで、零時まではあっという間、長い時には夜中の3時くらいまでソワレが続きます。帰る時の友人たちの顔は、よく食べよく飲み話し尽くした満足感ですっきりしています。日本人の私としては、これだけの長時間エネルギッシュに笑い、話せる場のあるフランス人が羨ましくもあり、その体力にも脱帽です。
家族や友人と日常を楽しむことを大切にするフランス人にとって、気心知れた仲間と存分に語り合うことは、明日への活力、元気の源。日本人の私たちも、たまにはこんな家飲みをしてみてはいかがでしょうか?