各地の予選会を勝ち上がってきた12組の名店が一堂に
昨年秋、「SA・PAメニューコンテスト全国大会」の予選会が開催。その模様を本サイトでお伝えしましたが、ついに全国大会が行われました。なお、対象は屋台やフードコートなどの手軽な料理の店舗ではなく、あくまでもレストラン。各地域の農作物や伝統食材がふんだんに盛り込まれた、御膳やコースが中心です。
↑全国大会の審査の様子。厨房から運ばれてきた各料理を審査員が実食し、点数を付けて集計するストロングスタイルです
なんといっても注目なのは、全国規模での開催は今回が初ということ。各エリアで予選会が行われ、計158店から勝ち上がってきた12組のレストランが、日本一の高速道グルメを競い合ったのです。早速レポートしていきましょう。
審査委員長は“中華の鉄人“として知られる陳 建一氏
会場となったのは、池袋にある武蔵野調理師専門学校。ここに各店の料理人とスタッフ、さらに審査員や高速道路の関係者などが集結。われわれ報道陣も予選時の数倍の規模で集まり、高まる緊張感のなか試食審査の火蓋が切って落とされました。
↑審査委員にも、料理や旅行に関するスペシャリストがズラリ! 委員長は伝説のTV番組「料理の鉄人」において“中華の鉄人”として活躍した陳建一氏が務めるなど、大会のスゴさを物語っています
審査の基準は予選と同じ5項目。「美味しさ、料理としてのバランス」、「彩り、盛り付け、器のこだわり」、「コストパフォーマンス」、「地元食材のこだわり、ご当地感の演出、開発ストーリー」、「独創的なアイデア、工夫」となり、料理としての完成度だけではなく物語性などさまざまな要素が重要というハードルの高さです。
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白熱のご当地グルメ決定戦がスタート!
審査は、1組約10分という短い時間内で行われました。試食と同時に各店の代表が、使用した食材や調理法、器、エピソードなどを解説。アピールの後には審査員が感想を述べたり、質疑応答をしたりという流れです。一部のシーンを紹介していきましょう。
↑岡山県・蒜山(ひるぜん)高原SA(上り)による、「ひるぜん白蕎麦御膳」のプレゼン。ここではスタッフの大田未来さんが、山林十三総料理長に代わってハキハキとPR
↑陳氏のほか、料理人では料亭「菊乃井」の村田吉弘氏も審査委員に。また料理研究家の白井 操氏や、「関東・東北じゃらん」編集長の森田拓朗氏など、6人の審査員が総評にあたりました
↑イタリアンのコースを提供した茨城県・守谷SA(上り)。プレゼンではゆるキャラ「もりやもり」も登場し、副支配人が演奏とともに名曲「アンダルシア」を熱唱するシーンも
↑埼玉県・上里SA(下り)による厨房での調理シーン。仕上げに差し掛かり、料理長の小林 進氏の表情もより真剣に
↑料理研究家の白井 操氏。「地産地消は地方創生に大切な事。旅行客はもちろん、故郷を離れた人が帰省した時に郷土料理を知るきっかけになれば」と、今後のSA・PAに期待する声も
気になったメニューを抜粋して紹介!
審査は前半のAブロックと、後半のBブロックの2回に分けて実施。その裏では別の部屋にて関係者向けの試食会も行われました。全国の頂点に立とうとする高速道グルメですから、見た目はもちろんおいしさも抜群! そのなかから、フードアナリストである筆者が特に注目した料理を紹介します。
↑佐賀県・川登SA(上り)の「九州三都大名椀御膳~長崎街道 味の大名行列~(1706円)」。佐賀県産黒毛和牛ステーキや若楠ポークの角煮などをメインに、長崎、佐賀、福岡の美味が凝縮されています。原価率40%というコスパの高さには陳氏も驚いていました
↑兵庫県・西紀SA(上り)の「農都篠山今昔味わい御膳(1280円)」。京懐石の八寸風に盛り付けられた大皿料理が華やかで、メインは丹波鹿のステーキと豪華。そこに豆腐の炊き込みご飯と、手延べ黒豆そうめんの澄まし汁なども並びます
↑宮城県・長者原SA(上り)の「旬遊闊歩 ~大地の饗(1680円)」。蔵王爽清牛を塩焼きにし、牛タン焼をそぼろにしてアレンジしたタコライス風の一皿など、オリジナリティーに富んだメニューです
[nextpage title=”絶対立ち寄るべき美食はこれ!”]
ついに決定。高速爆走中でも絶対立ち寄るべき美食はこれ!
12メニューの審査と試食が終わると、会場を別室に移して表彰式へ。採点が非常に難航したようでしたがなんとかまとまり、緊張の瞬間が訪れました。賞は「グランプリ」が1品、「準グランプリ」が2品、そのほかの9品が「審査委員特別賞受賞メニュー」と「優秀賞」という内訳でしたが、ここでは「準グランプリ」と「グランプリ」に絞って紹介します。まずは「準グランプリ」から!
↑山口県・下松SA(上り)の「~やまぐち 味百景~(1850円)」。小皿料理は店のスタッフが家庭で親しんでいるメニューを元にしたもので、リアルな郷土食が多彩に詰め込まれています。あえて山口名物のフグは入れず、知られざる地元食材をアピールしたいという情熱に敬服
↑茨城県・守谷SA(上り)の「茨城イタリアン フルコース ファンタジーな料理の世界(2980円)」。常陸牛の煮込み、黒トリュフ、つくば鶏のコンフィが一皿になったメインをはじめ、贅沢な茨城県産食材が散りばめられた全6皿フルコースです
そしてついに「グランプリ」の発表です。このSAがある場所は北陸。新幹線が開通したトピックスを中心に注目を集めている地域ですが、クルマでの観光客も増えているとか。地域的に米どころであり、日本海の恵みも豊富な美食スポットですから料理のおいしさもひとしお。ということで、栄えある受賞メニューをご覧いただきましょう。
↑富山県・有磯海SA(下り)の「越中とやま 食の玉手箱”旅のしおりに想いを込めて”(3200円)」。メインは国産牛サーロインのロティと黒部名水ポークの煮込みとなり、さらに濃厚な白子と味わう鱈のブランダードや、ブリ、甘海老等のカルパッチョなど彩りも鮮やか。ラストは紅ズワイガニの蟹御飯と味噌汁でほっくりと締めくくるという、豪華なコースです
↑審査委員長の陳氏が、有磯海SA(下り)料理長の畑謙太郎氏を労うひとコマ。伝統だという「杏仁プリン」には、陳氏も思わず「とてもおいしくてレシピが気になる!」と大絶賛でした
総評には「知らなかった料理がたくさんあって勉強になった。今後積極的に取り上げていきたい(毎日新聞社・食生活ジャーナリストの会代表幹事・小島正美氏)」、「どの料理にも和洋中の多彩なアイデアが組み合わされていて、お客様を楽しませたいという想いが素晴らしかった(「菊乃井」主人・村田氏)」といった声が。
一方、受賞した畑料理長は「グランプリの受賞を、早く仲間達に伝えたい!」と感謝を述べつつ、「これからも高速道路の料理を盛り上げていきます。次回はもっと凄い料理を作ります!」と意気込みも語ってくれました。
なお、本大会に出品されたメニューは今年の3月31日まで各SA・PAで提供されています。高速道路を利用する際に、味わってみてはいかがでしょうか!(※詳細につきましては、各社にお問い合わせください。)