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2020/3/5 19:00

セラーに潜入!“保管のプロ”はワインをどのように保管・熟成しているのか?

お祝いや旅先の思い出に、ちょっと奮発して買った大事なワインを、どう保管すればいいのでしょうか? ボジョレー・ヌーボーなどフレッシュな新酒のような例外もありますが、5〜10年、それ以上と、じっくり熟成されたワインを味わうのはワイン愛飲家にとって格別の楽しみでしょう。

 

“若い”うちはまだ酸味や渋味が強いものの、長期熟成によって味わいはまろやかになり、香りはふくよかでさまざまなニュアンスを含んで、“ブーケ”と呼ばれる特有の香りが引き立つように。“ドライフルーツ”や“なめし皮”といった独特の表現が用いられる、複雑な香りに変化していくのです。

 

ただし、保管する環境には、一定の条件が必要です。

 

ワインが美味しく熟成する条件

・温度:13℃~15℃の低温で温度変化が少ないこと
・湿度:60%~80%程度
・日光:紫外線によってワインは劣化するため、暗所であること
・振動:ボトル内の空気がワインと触れると過度な酸化が促進されるため、振動が少ないこと

 

ワインを熟成させるためには、冷蔵庫に放り込んでおくだけ、はたまた常温で安置しておくなんて、もってのほかというわけです。最近は、ワインを飲む・買うだけでなく、こうした“保管する”ことにも目を向ける人が増えています。家庭用ワインセラーのラインナップが充実してきているほか、建設途中で使われなくなった鉄道のトンネルを改造したセラーが話題になるなど、選択肢も多様。なかでも、もっとも安心で確実な選択肢が、保管のプロに“預ける”という方法ではないでしょうか。

 

東京・品川区の天王洲で倉庫業を母体としながら、その枠を超えたビジネスを幅広く展開する寺田倉庫でも、ワインに特化した保管・管理を行っています。大事なワインを箱単位で預かるサービスはほかにも存在しますが、寺田倉庫のワイン保管サービスは、プライベートラウンジを併設していたり、箱から出して1本1本撮影し、最適な環境で預かってくれたりと、目的によって多様な利用方法があることが特徴。

 

今回、普段はサービスの利用者とスタッフ以外は立ち入ることができないセラールームへ、特別に足を踏み入れました。寺田倉庫が提供する、一歩先行くワイン保管サービスとは?

 

↑今回取材した寺田倉庫の、創業当初(1950年代)の様子。今年創業から70周年を迎えます

 

ベストな環境で熟成させるワイン管理のプロ

2020年で創業70周年を迎える寺田倉庫。企業理念に「余白創造」を掲げ、1975年からは美術品をはじめとする文化的資産の保管業を開始するなど、独自の発展を遂げてきました。そのひとつが、1994年にスタートしたワインセラー事業です。

 

同社のワインセラーについて、同社プレミアムストレージグループ、運営チームのソムリエである、安田海(かい)さんが教えてくれました。

↑安田さんは麻布十番のフレンチ「Craft WINE N」でソムリエ兼フロアマネージャーとして勤務したのち、2018年に寺田倉庫へ。現在はセラーのクライアント業務、ワインのデータ管理のアドバイザーなどワイン業務をメインに活躍しています

 

「東京に3拠点、神奈川に1拠点の合計4カ所でレンタルワインセラーを運営しており、ロッカー、キャビネット、ウォークインの3タイプを用意しています。全室をワインの管理に最適な温度、湿度、照度に設定しており、特にプレミアムウォークインタイプでは500本以上を収納できる上、お客様の好みに温度を設定できるという特徴をもっているんですよ」(安田さん)

↑ワインセラーは、保管したい本数や保管方法に合わせて3種類から選べます。写真は、上からウォークインタイプ、キャビネットタイプ。ロッカータイプでも、木箱やマグナムサイズを収容可能です

 

↑庫内にずらりと並ぶワイン。内部は、ワインを育てる温湿度、14±1℃・70±10%に保たれています。写真はウォークインタイプ

 

利便性は高く、ワインの購入先から直接寺田倉庫のセラーに送り、同社のスタッフに受け取っておいてもらうという使い方も。もちろん耐震設備や管理体制は徹底されており、天王洲のセラーはスタッフによる対面サービス付き。他の3拠点も万全のセキュリティで大切なワインが厳重に守られており、こちらでは24時間365日の入退出が可能となっています。

↑天王洲のセラーでは「TERRADA WINE STORAGE PREMIUM」という最上級のサービスを提供。なんと、セラー内部にバーカウンターやソファなどを配したラウンジスペースを併設しており、自身が預けた大事なワインを取り出してすぐに楽しめるのです(事前予約制)

 

↑利用者が、ワイン仲間とともに自分のコレクションを楽しむための設備として重宝されているといいます

 

あえてタブーに踏み込んで生まれたサービス

寺田倉庫は2012年に、小物用の宅配型トランクルームという画期的なサービス「minikura」をスタートさせました。こちらは、利用者から預かった箱の中身を一品ずつ撮影し、利用者はウェブ上で管理できる、というのが最大の特徴。この手法をワインに応用したのが、「TERRADA WINE STORAGE ONLINE」です。

 

こちらは同社プレミアムストレージグループ、企画チームのサブリーダーを務める林愁人(しゅうと)さんが教えてくれました。

↑林さんは2010年に入社し、2017年から現部署へ。ソムリエの資格ももち、現在は「TERRADA WINE MARKET」(後述)がメイン業務

 

「2013年にオンラインのワインストレージ事業が立ち上がり、2017年に名称が『TERRADA WINE STORAGE』に。現在は、撮影はもちろんのこと、銘柄、ヴィンテージ、生産者といった情報も入力されますので、ワインを倉庫にお送りいただければ自動的にワインリストができ上がるシステムとなっています」(林さん)

↑管理画面のサンプル。こちらも、ワインの熟成に適した14℃(±1℃)と湿度70%(±10%)で徹底管理されます

 

↑スマートフォンからも管理が可能。いつでもどこでも確認と取出し・預け入れが行えます

 

他社でもワインを預かるサービスはあるものの、それは1本1本ではなく箱単位での管理。なぜなら、センシティブな情報である箱の中身に触れることは、業界的にタブーとされているからです。その領域に、あえて踏み込んだのは、美術品や貴重品の保管業に従事し、展覧会まで行う寺田倉庫のイノベーティブな精神ゆえかもしれません。月額保管料90円(税別)で、1本から預けられるサービスとして重宝されています。

 

「たとえば、ご自宅にセラーをもつほどではないものの、記念日やお子様の誕生年などに、1本だけ特別なワインをご購入した方。一方で、1000本以上のワインを所持している方などには、ご自身のコレクションをウェブ上でいつでも閲覧、管理できるサービスとして、メリットを感じていただいています」(林さん)

 

こうしてワインの保管やオンラインでの管理業務を経た寺田倉庫が、2019年から新たに始めたのが「TERRADA WINE MARKET」。ワインに特化したECサイトです。

 

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