グルメ
お酒
2020/11/26 20:30

キリンとサッポロの対談が実現! ライバルが語り合った「日本産ホップ」のアツい話

ふだんはライバルとして切磋琢磨しているキリンビールとサッポロビールが、メーカーの垣根を超えて対談するイベントがオンラインで実現しました。メインのテーマは「日本産ホップ」。各社の取り組みや、ホップとビールの未来に込めたアツい想いなどをレポートするとともに、注力している商品の味や特徴を紹介していきます。

↑素材を通じてライバル同士が手を取り合う。これもホップならではの面白さです

 

ビールがホップで選ばれるようになればもっと面白くなる

イベントは2部制で、前半の1部はホップスペシャリスト対談として、キリンホールディングス 飲料未来研究所の杉村哲さんと、サッポロビールのSORACHI1984 ブリューイングデザイナーである新井健司さんが登壇。ふたりはビール醸造学の最高学府「ミュンヘン工科大学」に留学していた共通点があり、対談のなかでは当時を振り返る場面も。時期が違ったので交流はなかったものの、日本の他社メーカーには当時の学友がいて、それぞれいまも親交があるそうです。

↑左上が新井さんで、右下が杉村さん。後半から参加したのが、左下の金惠允さん(ブックリンブルワリー・ジャパン アカウントダイレクター)と右上の中水和弘さん(スプリングバレーブルワリー ブランドアンバサダー)

 

自己紹介のあとはいよいよホップの話。キリンとサッポロ、ともに日本産ホップは100年以上前から栽培しているとのことで、さすがは老舗です。キリンは東北を拠点に育種、栽培。技術開発や分析は杉村さんが所属する横浜の飲料未来研究所が主体で行い、商品開発は同場所にある商品開発研究所と中野の本社が連携して様々なビールを生み出しています。

↑特に岩手の遠野では、「ホップの里からビールの里へ」を合言葉にしたまちづくりが行われています

 

サッポロの栽培拠点は北海道の上富良野にあり、品種開発や技術研究なども行っています。そして、ビールにおける香りなどの研究開発は、静岡にある価値創造フロンティア研究所と商品技術イノベーション部が担当。商品開発は商品技術イノベーション部と恵比寿本社の新価値開発部が連携して行っています。

↑ホップ名に「ソラチ」や「フラノ」といった地名が付けられているのは、北海道をルーツとするサッポロビールらしい特徴といえるでしょう

 

1部のラストでは、杉村さん新井さんそれぞれがホップに対する想いを語りました。

 

「ドイツに留学して、ホップが現地の一大産業であるとともに人々の誇りになっていることを感じました。この豊かなホップ文化が、ドイツをビール大国にしている大きな要素だと思います。日本も同じように盛り上げていきたいですね。そのためには日本産ホップを通じた取り組みでお客様に新しい価値を提案しながら、ホップ産地も活性化させたいです。そして、その先にビール市場の発展があると確信しています」(杉村さん)

 

杉村さんの先輩には、ドイツの研究団体からの要請で、世界で6人しかいない「ホップに関する技術アドバイザー」を務めた“ホップ博士”こと村上敦司さんがいます。村上さんは定年退職しましたが、その集大成ともいえるホップ「MURAKAMI SEVEN」のように、自分のホップや開発製法がビール文化の発展に寄与できれば技術者・研究者冥利に尽きるというもの。

↑「MURAKAMI SEVEN IPA」6本セット3432円(DRINX)。いちじく、みかん、マスカットをイメージさせる香りが特徴です

 

新井さんは、サッポロビールが手掛けた世界的に有名な日本産ホップ「ソラチエース」を、ビールの魅力とともにさらに広めていきたいと言います。

 

「まずは自身がブリューイングデザイナーを務める『Innovative Brewer SORACHI1984(以下「SORACHI1984」)』を多くの方に楽しんでいただけるようにと、使命感をもっています。そこから『ソラチエース』を知っていただき、日本産ホップにも興味をもっていただけたら。クラフトビールが少しずつ浸透して、ヴァイツェンやペールエールなどビアスタイルで選ぶ方も増えていますけど、その先にホップがあるのかなと。たとえばワインがシャルドネやピノ・ノワールなどのぶどう品種で選ばれているように、ビールもホップの品種で選ばれるようになれば、もっと面白くなると思います」(新井さん)

↑昨年限定発売された、「SORACHI1984」のエクステンションモデル。「ソラチエース」に「アマリロ」というホップを掛け合わせたビールなどがファンを喜ばせました

 

  1. 1
  2. 2
全文表示