シチリア ~地中海最大の島にしてイタリア最大の州~
地中海に浮かぶシチリアは、さまざまな文化の影響を受けてきた土地でもあります。ことワインに関しても、アグリジェント市のギリシャ神殿、ピアッツァ・アメリーナのローマ時代のモザイク、パレルモのムーア人の寺院などなど、地中海における宗教の歴史的な遺産を今も多く残しています。
ただ、イタリアワインの世界では、ほんの四半世紀前まで輸出用ワインを大量に、それこそイタリア最大規模の生産量を産出する個性のない地域でもありました。それからの10年で、シチリアワインは量から質へ、大きな転換を果たし、ブドウ畑の面積はほとんど変わらないものの、生産量は3割以上減らしました。パレルモ周辺の協同組合も土着品種への関心を高め、さまざまなルーツを持つマスカット品種もまた、成功を収めつつあります。
そして、安定して高品質なワインを産み出すようになった産地として、シチリア島の東にあるエトナ山が挙げられると思います。エトナ山は、オリーブやピスタチオ、さまざまな果樹が育つ豊饒な火山灰土壌が特徴で、黒ブドウは「ネレッロ・マスカレーゼ」、白ブドウは「カリカンテ」が、約800mの標高に植えられています。高品質ワインが造られるようになったのはここ最近のはずなのに、品質の安定感はイタリアワイン随一といっても大げさではないほど。徐々に価格も上がってきている銘柄もありますが、ワインショップで見かけたら、ぜひ一度お試しいただきたいとおすすめできる銘柄です。
写真の「エトナ・ロッソ」は、スパイスの効いた鮮やかなベリー系の果実に芯のあるストラクチャー、軽やかで、魚介にも肉料理にも幅広く合わせられるワインです。あまりにも幅の広いシチリアのワインも、西と東や南などのイメージがワイン初心者にも伝わるようになったなら、ワイン選びももっと楽になるのかもしれません。
Valenti(ヴァレンティ)
「Etna Rosso“Norma”2014(エトナ・ロッソ“ノルマ”2014)」
3200円
輸入元=ミレニアムマーケティング
4つ目は、中世の街並みを残すヴェローナを擁す、ヴェネトにまつわる話。