バーデン 〜地球温暖化とドイツの赤ワイン〜
地球温暖化と技術革新によって、ブドウの栽培地域は年々広がっています。北半球ではイギリス、そしてロシアが加わり、中央アジアの栽培もこれからより本格的なものになっていくでしょう。従来“北限の産地”として白ワインのイメージの強いドイツでも「シュペートブルグンダー」(≒ピノ・ノワール)の栽培面積は、この20年で倍増したと言われています。
そして、ドイツの南端に位置しフランス、スイスと国境を接する、元々比較的温暖な気候であったバーデンにとって、温暖化の影響は晩熟であるシュペートブルグンダーの栽培にいち早く成功する、ひとつの要因になりました。現在では、ドイツのシュペートブルグンダーのおよそ半分を占め、ドイツの赤ワイン産地としては先駆者的な役割を担う産地です。
そうはいっても、かつて協同組合の廉価ワインの割合が高かったこの産地が、意欲的な生産者によって素晴らしい赤ワインを産み出すようになったのは、やはりつい最近のことなのです。下写真のベルンハルト・フーバーの設立は1987年、「18世紀から続く~」といったよく耳にするワイナリー紹介と比較すれば、ほんの最近のことのようにも思えますが、7世紀頃にはピノ・ノワールの存在が文献に残されていたことを考えると、この地域の赤ワインの歴史は“古き伝統を踏襲しながら新たな一歩を刻んだところ”と言ってもいいのかもしれません。
ブルゴーニュのピノ・ノワールは、世界中の愛好家をその官能性で魅了していますが、ようやくブルゴーニュ以外の産地のピノ・ノワールに、徐々にスポットライトが当たるようになってきました。バーデンには、ドイツのリーディング的なシュペートブルグンダー産地として、期待せずにはいられません。
そして、温暖化はもうここまでにしないといけないという思いは、ワインに関わるすべての人が気持ちを同じくしているテーマでもあるのです。
Benhard Huber(ベルンハルト・フーバー)
「Malterdinger Spätburgunder2016(マルターディンガー・シュペートブルグンダー2016)」
5000円
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ
最後に取り上げるのは、ドイツにおける新進の“ワイン産業の街”、ファルツです。