5. ワシントン州
− コストパフォーマンス抜群、ワシントンワインの未来は明るい −
アメリカ西海岸の最北に位置するワシントン州は、カリフォルニアに次いでアメリカで2番目にワイン生産量の多い州です。それでも、カリフォルニアに比較すると10分の1ほどの生産量でもあり、知名度も日本人にとって広く知られているとはいえず、いかにカリフォルニアワインが質、量ともにアメリカワインの中心地であるかがうかがえます。ワシントンの中心都市であるシアトルは、野球チームやスターバックスと日本でも馴染みのある街なのに、ワインが知られていないのは残念でなりません。
ただ、ワシントンのワイン産業のめざましい発展ぶりは近年のことで、ここ20年ほどでワイナリーは10倍ほども増え、1000軒を超えるほどだといいます。大きくはカリフォルニアに比べ地価が安いこと、ブドウ栽培農家からのブドウの購入がオレゴンに比べ盛んなため、畑を持たず醸造設備だけのワイナリー開業もできると、新規参入のハードルが低いのです。
主だったブドウ畑はオレゴンとの州境から内陸に広がっており、シアトルからはだいぶ距離がありますが、シアトル都市部から車で30分ほどの距離にあるワイン村ウッディンヒルには、小規模ワイナリーが200軒ほども集まっていることからもわかるように、栽培と醸造の分業が他の産地よりも一般的になされ、造られるワインも複数の農家の生産するブドウを混合することも多く、ワイナリーの立地とブドウ畑は直接結びついていません。
ラベル表示も広範囲を網羅するAVAコロンビア・ヴァレーやより柔軟な「ワシントン」といった表記も多い一方、徐々に自家栽培や単一畑表示のワインも増えてきています。
赤ワインではボルドー品種に加え、広く栽培されてきているのがシラー。フルーティーでみずみずしい完熟感を楽しめるワインが、リーズナブルな価格帯から高級レンジまで幅広く造られ、ローヌともオーストラリアともまた違った個性を持っています。個人的にもっとも期待しているのは、リースリングをはじめとしたゲヴュルツトラミネールやピノ・グリといった芳香のあるアルザス品種です。
今現在でも、驚くほどのお値打ちワインに出会えますが、今後ブドウ樹が古くなり、新しい生産者もヴィンテージを重ねることでより素晴らしいワインを産み出すであろう未来がたやすく想像できるワイン産地が、ワシントンです。アメリカワインに馴染みのない方でも機会がありましたら、ワシントンのリースリングをお試しください。
Dunham Cellars(ダンハム・セラーズ)
「Riesling Lewis Estate Vinyard2015(リースリング・ルイス・エステート・ヴィンヤード2015)」
3150円
輸入元=オルカ・インターナショナル
※ワインの価格はすべて希望小売価格です。
【プロフィール】
ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)
カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/