Appleが「WWDC19」で発表した技術に関して、ARの進化に注目したい。筆者としては、今年のアップデートでようやくARが一般に普及する準備が整ったと感じている。
【関連記事】
【WWDC19考察】iTunes終了、Sign in with Appleの意図は?一見ではわかりにくい5つのAppleトピックス
まず「ARKit」とは何か
そもそもAR (拡張現実、Augmented Reality)とは、スマートフォンなどのカメラを通じて撮影した現実世界の映像に対し、リアルタイムで映像を重ねる技術だ。映像だけの世界観に没入するVR(仮想現実、Virtual Reaklity)と比べると、「現実」が見えているのが特徴。例えば、セルフィー用のカメラアプリで、顔にリアルタイムで猫耳とヒゲを付け加えるような機能も、広義のARに相当する。カメラが読み込んだ顔のパーツを自動で認識し、必要な部分に必要な映像を重ねているわけだ。
しかし、ご想像の通り、AR対応のアプリをディベロッパが自力で開発するには、相当のリソースを要する。よほど精通した者でない限り、独自開発は現実的ではないだろう。だからこそ、AppleはARアプリの開発に必要な部品を「ARKit」としてディベロッパに解放してきた。ディベロッパはこのフレームワークを活用することで、比較的簡単にARアプリを開発できるようになった。
ARKitはiOS11とともに登場した。そして、昨年のWWDC18では「ARkit 2」が発表され、同年秋からすでに提供されていた。こちらのバージョンでは、環境マッピングが強化され、壁や床、机の上などを正しく認識するようになった。影や反射もリアルに再現される。また、ARの世界を複数人で共有し、一度表示したARをその場に固定できるまでに達していた。要するに、ARKit3が一般に提供されていない現時点でも、ARのクオリティは相当高かったのだ。
例えば、今回のWWDC19で発表された「Mac Pro」は、公式サイト上でUSDZファイル(3D画像のデータ)が用意されており、iOSデバイスのカメラを通じてAR表示で製品を確認することができるようになっている。試してみてもらうのが一番手っ取り早いが、表示させるオブジェクトがリアリスティックであれば、現実と見間違うほどのクオリティで再現されるのが分かる。手動でサイズを調整できることもあり、巷では巨大なMac Proを表示させたり、手のひらサイズのMac Proを表示させたりして記念撮影を楽しむ人も多く見られた。これらはARKit 2で既に実現できていたものだ。
しかし、既存のARには弱点もあった。それは人がAR空間に正しく介在できないということだ。ARKit3ではこの辺りが大きく改善される。