今や、幅広い層に愛好されるようになっている電子書籍。MMD研究所「2016年電子書籍および紙書籍に関する調査」によると、現在、22.9%のユーザーが電子書籍を日常的に利用しているそうです。実に5人に1人!
その原動力となったのがスマートフォンなどのスマートデバイス。MMD研究所「2016年電子書籍に関する利用実態調査」によると、6割強のユーザーが電子書籍を読むのにスマートフォンあるいはタブレットを使っているとのこと。確かに電車の中などでスマホで本を読んでいる人をよく見かけるようになりました。
そんななか、ちょっと元気がないのが本を読むことに特化した専用の電子書籍リーダー。これらの利用者は同調査では全体のわずか9.3%に過ぎません(残りの約25%はPCなど)。電子書籍リーダーは「専用」なだけに、読書に特化したさまざまなメリットがあるのですが、スマホがこれだけ便利に普及してしまうと、あえてそれを選ぶ理由も薄いのかもしれませんね。
電子書籍リーダーを取り巻く環境が厳しくなるなか、電子書籍市場で断トツのシェアを誇るAmazon運営の電子書店Kindleが、実にユニークな電子書籍リーダーを発売しました。それが「Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル」(1万6280円)。その名の通り、マンガに特化した電子書籍リーダーです。
日本市場専用の「マンガモデル」とは?
Kindleはさまざまな種類の自社サービス専用電子書籍リーダーを発売していますが、本機のベースとなったのは、電子ペーパーディスプレイを採用した「Kindle Paperwhite」。この辺、サクッと流してしまいますが(基本的な特徴は最後にまとめています)、ハードウェア的にはある1点を除いて、完全に同等です。
唯一異なっているのは、内蔵ストレージが「Kindle Paperwhite」の8倍である32GBに拡張されていること。このおかげで、通常モデル(内蔵ストレージ=4GB)と比べて、より多くのマンガを保管しておくことができるようになりました。
マンガ単行本のデータサイズは概ね約45MB。つまり32GBのストレージに約700冊のマンガを収納しておくことが可能です。「こち亀」(全200巻)、「ゴルゴ31」(現182巻)、「ONE PIECE」(現83巻)を全てダウンロードしても、まだまだ余裕がありますね。通常モデルでは約88冊しか保存しておけなかったので、これはとてもうれしい機能アップです。
反面、残念ながら通常モデルで選択可能だった無料3G通信機能は非搭載(選択できません)。まあ、この無料3G通信機能ではマンガのような大容量コンテンツはダウンロードできませんでしたから、問題になることはないでしょう。自宅で大容量ストレージにマンガをたっぷりダウンロードして持ち出すというのが正しい使い方です。
読みたいシーンがパッと見つかる「連続ページターン」
その上で、本機はソフトウェア面も大きく進歩。マンガを読む点で便利な機能が大きく2つ追加されています。
1つ目が、画面の書き換えが約33%高速化したこと。「Kindle Paperwhite」が採用している電子ペーパーディスプレイは、紙に読書感・視認性が近い反面、液晶ディスプレイと比べて書き換えが遅いという弱点がありました。最新モデルではこれをかなり改善してきているのですが、「Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル」ではそこからさらに約33%もページめくりが高速化したと言うのです。
論より証拠。実際に旧ファームウェアの通常モデルと比較してみましょう。
確かにタップしてからページが切り替わるまでの時間がわずかに高速化しています。動画で見るとわずかな違いに感じますが、この「わずかな違い」が読書感を大きく高めるのは間違いありません。大昔に電子ペーパーディスプレイ搭載の電子書籍リーダーを使って、この点にガッカリしていた人も、これなら満足できるかも?(ただし、ページをめくるごとに白黒反転する点はそのままです……)
そしてもう1つの新機能が「連続ページターン」。ページめくり時に指をそのまま押しっぱなしにすることで、自動的にページがパラパラとめくれていくのです。「ザッピングできない」という、電子書籍の最大の弱点の1つが見事に解消されています。あのシーンが見たいんだけどどこだったっけな……なんて時に便利です。
こちらも動画で実際の動作を確認してみましょう。
指を離したところでピタっと止まるのもポイントの1つ。しっかり実用的な機能に仕上がっています。なお、ページめくり速度は1度読み込み済みのページだとグッと高速になります(動画の後半参照)。これはなかなか気持ち良い。画面書き換えが高速な液晶ディスプレイ搭載のスマートデバイスにもないアドバンテージです。
なお、これら新機能はどちらも最新ファームウェア(Kindleソフトウェアアップデート5.8.5)の適用によって従来モデルでも利用可能。2013年9月に発売された第6世代の「Kindle Paperwhite」以降の製品に適用できます。
ほか、基本機能は以下の通り。本当の本当に、「Kindle Paperwhite」通常モデルと完全に同一です。
「電子インク」という技術を使い、電源オフの状態でも表示が消えない電子ペーパーディスプレイ。内蔵LEDライトをオフにした状態(写真)なら、画面書き換え時にしか電力を消費しないため、一度の充電で数週間使えるというメリットもあります。カラー表示はできませんが、基本モノクロのマンガなら問題ないでしょう。
Paperwhiteという名称の由来となっているのがこの内蔵LEDライト。画面を白く明るくムラなく照らしてくれるため、暗い場所でもストレスなく読書できます。バックライトを使った液晶ディスプレイと比べてギラギラしておらず、目に優しいのもいいですね。
画面サイズは6型。マンガの単行本よりは小さいのですが、スマホ(写真右は4.7型液晶ディスプレイ搭載の「iPhone 7」)よりは大きく快適です。画面比率が4:3なので無駄な余白が少ないのもポイント。
重量は約207g(編集部実測)と、ちょっと厚めの文庫本と同程度の重さ。エッジ部分がなだらかな曲面になっており、表面にサラサラとした触感のテクスチャーが施されているため、非常に持ちやすくなっています。
ボタン類は電源ボタンのみ。それ以外の操作はタッチパネルで行ないます。書籍データのダウンロードには要Wi-Fi。ストア機能も付いているので、本機単体でも書籍購入も可能です。
身も蓋もない言い方をしてしまうと、通常モデルの内蔵メモリを32GBに増量しただけという「Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル」。現行モデルなら、すべて最新ファームウェア適用で機能面は同等になりますから、本当に違いはこの点だけです。
ただし、その上で、通常モデル(1万4280円)との価格差はたったの2000円。であれば、間違いなくこちらの方が買い得と言えるでしょう。「マンガモデル」と銘打っていますが、もちろん小説なども利用できますので、マンガを読まないという人にもおすすめの選択肢です。
出典:佐藤秀峰「ブラックジャックによろしく」(漫画 on web)