稲川淳二との出会いがすべてのはじまり──怪談研究家・吉田悠軌が語る怪談の魅力と使命

ink_pen 2025/8/15
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稲川淳二との出会いがすべてのはじまり──怪談研究家・吉田悠軌が語る怪談の魅力と使命
水谷花楓
みずたにかえで
水谷花楓

出版社勤務、受付嬢、社長秘書を経て、フリーライターに。男・女・女の3児の母。子育てメディアをはじめ、美容、健康、旅行、ビジネスなど多ジャンルの媒体で記事を執筆する一方、企業の広報業務なども行っている。

怪談研究家・吉田悠軌さんは、その肩書通り「怪談ブームの牽引者」として知られている。彼の著書『教養としての最恐怪談』シリーズは、怪談をエンターテインメントとしてだけでなく、文化や歴史と結びつけて読み解く教養という側面からもアプローチし、多くの読者を引きつけて止まない。

そんな吉田さんが怪談の世界に足を踏み入れたきっかけこそ、怪談界のレジェンド・稲川淳二さんだった。2人の意外な接点と関係性について、吉田さん本人に聞いた。 

吉田悠軌(よしだ ゆうき)
  作家。怪談・都市伝説研究家。1980年東京都八王子市出身。実話怪談の語り手としてイベントやメディアに出演するほか、テレビ番組「クレイジージャーニー」では禁足地や信仰文化を案内している。 

怪談人生のはじまりは、20年前の「稲川淳二の怪談ナイト」 

怪談に関する仕事を始めたのは、昔から怪談に興味があったからでも、オカルトが好きだったからでもありません。むしろ、私にとって怪談はサブカルチャーの一種であり、どちらかと言うとダサいもの、というイメージでした。 

その認識が大きく覆されたのは、いまから20年前。就職氷河期でなかなか職が見つからず、悶々としていた24歳のときのことです。たまたまチケットを入手したので、高校時代の先輩を誘って軽い気持ちで足を運んだのが、稲川淳二さんの怪談ライブでした。 

「怪談って、めちゃめちゃおもしろいじゃないか! 自分でもやろう!」。そうすぐに決意するほど、稲川さんの語りに大きな衝撃を受けました。そしてこの日を境に、怪談というジャンルに魅せられ、深く掘り下げていくこととなったのです。 

最新刊の推薦文に込められた特別な想い 

じつは、先日発売となった私の新刊『教養としての名作怪談』の推薦文を稲川さんに書いていただきました。ダメ元で編集部から依頼したところ、快くお受けいただいて……。 

しかも、しっかりと読み込んでくださったことが伝わってくる推薦文。稲川さんは、プレイヤーとしてはもちろん、怪談に対して情熱を持って調べたり思考したりしている方なので、私の本に興味を持ってもらえたことは、本当に感無量でした。 

稲川さんは、私にとって東京のお父さん……いや、怪談のお父さんですね。なぜか、私のことを「ゆうちゃん」と呼んでくださいます。反対に、私は「稲川さん」と呼んでいます。ファンの方からの愛称である「座長」とは、まだまだ畏れ多くて呼べませんね(笑)。 

「食いぶち」として怪談を広める使命 

稲川さんは私にとって憧れの存在ですが、稲川さんの語りを目指そう、なんて大それたことは思っていません。私なりのアプローチで怪談を世に広め、稲川さんの功績に並ぶ、あるいは追いつけるぐらいの、別の功績が成し遂げられればいいな、とは思っています。 

私にとって怪談とは、「食いぶち」です。 

細々と始めたものが、いつのまにか怪談だけで生計が立てられるようになった。その事実は、「怪談」というジャンルが確立され、需要が大きく拡大した証でもあります。 

とはいえ、まだまだ怪談を「教養なんかとは結びつかない下等な文化」だと思っている人、興味がない人も世の中にはたくさんいるでしょう。そんな人にこそ、私の本を手に取ってほしいですね。怪談の持つエンターテインメント性や、その背景にある深い教養や歴史を伝えるきっかけになれば、と思っています。 

↑吉田悠軌『教養としての名作怪談 日本書紀から小泉八雲まで』(ワン・パブリッシング) 
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