薬膳ブームって知ってた?国際中医薬膳師に聞いた、今日から始める「体にいい薬膳」

ink_pen 2025/10/2
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薬膳ブームって知ってた?国際中医薬膳師に聞いた、今日から始める「体にいい薬膳」
水谷花楓
みずたにかえで
水谷花楓

出版社勤務、受付嬢、社長秘書を経て、フリーライターに。男・女・女の3児の母。子育てメディアをはじめ、美容、健康、旅行、ビジネスなど多ジャンルの媒体で記事を執筆する一方、企業の広報業務なども行っている。

今、「薬膳」がアツい。薬膳を題材にした漫画やドラマがヒットしたこともあり、薬膳を取り入れた料理が一躍脚光を浴びるようになった。しかし、生薬や中国料理のイメージが強く、なんだかとっつきにくい、難しそう、と感じている人も少なくないのでは。 

「実は、薬膳ってものすごくシンプルなんです。薬膳を毎日の食事に取り入れることで、無理なく体調管理ができるんですよ。仕事をがんばるビジネスパーソンにこそ、おすすめしたいです」と教えてくれたのは、国際中医薬膳師の資格を持つ料理家・齋藤菜々子さん。日々のパフォーマンスを最大限に発揮するための薬膳活用法を聞いた。 

齋藤 菜々子(さいとう ななこ) 
料理家・国際中医薬膳師。飲食店経営の両親のもとに育ち、大学卒業後、一般企業に就職。忙しい日々の中で食事が心身の充実に繋がることを実感し、料理の道を志す。料理家のアシスタントを務めながら日本中医食養学会・日本中医学院にて中医学を学び、国際中医薬膳師の資格を取得。「今日からできるおうち薬膳」をモットーに、身近な食材のみを使った作りやすいレシピにこだわり、家庭で毎日実践できる薬膳を提案している。 

薬膳は、極めて合理的なセルフケアツール 

「私が薬膳と出合ったのは、今から10年ほど前のこと。もともと料理が好きで、体の中から健康になりたいと思いつつ、知識ゼロの状態から栄養学を身につけるのはちょっとハードルが高いな……と感じていたんです。そんな私にも、わかりやすい! 試してみたい! と刺さったのが薬膳でした。 

以来、日々の食事に薬膳を取り入れていますが、本当に、体調を崩すことがほぼなくなりました。風邪も滅多にひきません」。 

そもそも薬膳とは、「中医学(中国伝統医学)の考えに基づき、食べる人の季節、体質、体調に合わせた目的を持ち、食材選びをされた料理」のことを指す。 

「たとえるなら、『中国版おばあちゃんの知恵』みたいな感じです。どの食材を何グラム使うとか、栄養学の知識とか、難しい話はまったく必要なくて、風邪のときはこの食材、元気がなかったらこれを食べろ、みたいな感じの食材提案だけ。本当にシンプルなので、食の楽しみを奪うことなく気楽にチャレンジできる。だから私も始めました(笑)」 

毎日忙しく働くビジネスパーソンは、睡眠不足やちょっとした体の不調が、その日のパフォーマンスに影響を及ぼすもの。思うように実力を発揮できない状態が続けば、キャリアを左右することにもなりかねない。体調を崩しにくい、風邪をひかない体をぜひとも手に入れたいものだ。 

「中医学が一番大切にしているのは、予防なんです。調子が悪いところを改善するという考えももちろんありますが、より重視するのは、普段からちょっと食べるものを気にして、体調不良にならないようにすること。薬膳はいわば、プチ不調をなくすセルフケアツールのひとつです」 

パフォーマンスの根源「気(エネルギー)」を補う最強食材「長芋」 

ここからは、齋藤さんに「すぐに取り入れられる薬膳の活用法」を聞いていこう。 

なんだか体がだるくてやる気が起きない、午後になると集中力が切れる……そんな人におすすめの食材は、「長芋」。なんでも、齋藤さんの推し食材だと言う。 

「長芋と言うと滋養強壮のイメージが強いかもしれませんが、『気』を補う食材なんですよ。内臓が正常な働きをするためのエネルギー源になるので、元気ややる気、集中力がないときにぜひ食べてほしいです。加えて、乾燥対策にも良いので、これからの季節に必須ですね。 

生でも食べられるから火の通りも気にしなくていいし、煮崩れもしにくい。すごく扱いやすい食材です。我が家の冷蔵庫には長芋が常備されています。 

おすすめは、すりおろして、オクラと納豆とあわせてうどんにかける『ねばねばぶっかけうどん』。火を使わずレンジだけで手早くできるので、ぜひ試してみてください」 

ストレスによる感情の乱れは「お酢」でコントロール 

ストレスが溜まっているせいで「やたらとイライラする」「判断力が低下している」……そんなときは「お酢」を効果的に使いたい。 

「中医学では、『酸味=イライラを鎮める』とされています。ストレスや怒りで頭がカッカしているときは、『気』が上に上がっている状態です。酸っぱいものを食べると、口がキュッとなりますよね。これは一つの収斂作用。頭に上っていた『気』を下げる効果があるんです。 

具体的には、酢のものを意識して摂ったり、ご飯に少しお酢を足したり、レモンなどの柑橘類を食べたりするだけでOK。オレンジジュースを飲むのもいいですね」 

最強のリカバリーを生む「夜の養生ルール」 

パフォーマンスを発揮するためには、翌日に向けてリカバリーを徹底したいもの。そのためには、「睡眠の質を上げることが一番」と齋藤さんは言う。 

「いかにスムーズに入眠できるか、そして睡眠の質を上げられるかが重要です。寝ている間は、内臓がすごくよく動きます。腸のリズムも整うので、しっかり眠るためにも夜間の覚醒刺激は避けた方がベター。スパイスが効いた料理など刺激のあるものを食べると、体がほてって覚醒状態となり、不眠の原因になることがあります。 

スムーズな入眠におすすめなのは、熱を冷ますきゅうりと、体液や血を補って精神を落ち着かせる作用がある卵を使った『塩もみきゅうりのチャーハン』。不眠が解消されると、翌朝のスッキリ度が変わってきますよ。 

もちろん、スパイスにはさまざまな薬効があって、特に冷え性の方にはとても良いので、食べるならお昼がおすすめ。体を覚醒させるものは早めの時間に食べる、が鉄則です」 

薬膳にストイックさは不要。ゆるく、長く、続けよう 

「私にとって、薬膳は生活そのもの。それくらい、ナチュラルに自分の生活に根付いています。一生懸命がんばる必要はないし、本当にゆる~くで大丈夫。 

薬膳は、一朝一夕で効果が出るものではありませんが、2週間、1か月、3か月と続けることで、確実に健康な体が作られていきます。夏だったら、熱を冷ますような夏野菜を選んだり、冬ならサラダはやめて温野菜にしたり、そんな少しの積み重ねで十分。できない日があってもいいから、とにかく続けること。これが一番大切です」 

10月2日に発売された齋藤さんの著書『体にいい思いやり献立』では、日々の食事に取り入れやすい薬膳レシピを献立で提案している。今感じている不調や効能から選んでも、食べたい! と直感で思ったものを選んでもOK。薬膳は、ビジネスのパフォーマンスを底上げする、もっとも手軽な自己投資。ぜひ、齋藤さん直伝の最強食材&献立を試してほしい。 

↑齋藤菜々子『体にいい思いやり献立』(ワン・パブリッシング) 。
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