大便の写真ばかりを大量に集めた世界初のデータベースを作ろう――。そんなプロジェクトが最近、世界中で始まりました。そのデータベースの作成とAIの学習のために必要なのが便の写真。目標として10万点の画像募集が呼びかけられていますが、誰が、どんな目的で、こんな計画を行おうとしているのでしょうか?
便の写真だけを集めた世界初のデータベースを開発するプロジェクトを立ち上げたのは、アメリカの微生物研究を行うシードという企業。同社は、「Auggi」と名づけたれたAIの開発を行う米マサチューセッツ工科大学の研究者と共同でそのデータベースの写真を使い、AIに学習させようとしているのです。
AIであっても、経験や知識がなければ正しい結論を導きだすことができず、そのために多くのデータを学習させていくことがAIの開発段階で必要となります。しかし人の顔といったパーツと違って、便の写真なんて撮る人はどこにもいないし、AI学習用の便の画像サンプルは簡単に入手ができません。そこで、便の写真を広く一般から集め、それでデータベース化しようというのです。もちろん、こんなリアルな便の写真を集めたデータベースなんてこれまで存在しておらず、これが世界で初めての試みとなるのです。
毎日トイレに流す便はデータの宝庫
このプロジェクトでは、便の写真募集の専用サイトから簡単に写真の送付が可能です。送られた便の写真はすべて、胃腸分野の7名の専門医が便の状態を確認し、臨床分野でも使われている「ブリストル便性状スケール」にしたがって7つに分類。このスケールでは、硬くてコロコロしたナッツのようなタイプ1、やわらかなソーセージ型のタイプ4、やわらかな半固形状のタイプ5のように、便秘ぎみな便からやわらかめの便までカテゴリー分けをしていくのです。
このデータベースが完成した際には、学術研究で自由に使えるツールとして公開することも検討されているのだそう。アメリカでは5人に1人が腸に関する疾患を抱えていると言われ、この便のデータベースが実現できれば医師がそのような疾患を持つ患者の診断にも利用することができる可能性もあると言われています。
便の写真を送る際は、名前やEメールアドレスなどの入力が必要ですが、便の画像とは別で保管されるため、便の写真は匿名で保存されることとなります。この募集サイトによると、いまこの瞬間も世界中では7900万人が大便をしているのだとか。“市民サイエンティスト”として便の写真に協力したい方は、スマホ専用の募集サイトをチェックしてみてはいかがですか?