大切だとわかっていてもついついサボりがちになってしまうのがセルフメンテナンス。しかし、デイリーケアを怠ることは故障やトラブルのもと。将来的に考えればオーバーホールの料金が高額になる可能性だって高いです。大切な腕時計と賢く付き合っていくために、絶対に押えておきたいパーツ別セルフメンテナンス術を覚えましょう。
デイリーケアを習慣づけてトラブルを未然に回避
繊細な機械製品である腕時計には、サビの発生や作動不良など、さまざまなトラブルが発生しやすいものです。でも、デイリーケアをしっかり行なっておけば、それらのトラブルもある程度は未然に防ぐことができます。たとえば、ケースやブレスに付着した皮脂などはサビの発生を招きますし、リューズに溜まった汚れは防水性能の悪化や水気の侵入を誘引。回転ベゼルの砂やチリは、作動不良を誘発することも……。これらのトラブルが起これば、時計のダメージは深刻。修理には多額の費用を要することも多いので要注意です。下記に実施しておきたいデイリーケアをパーツ別に紹介。難しそうに見えても、やってみれば意外に簡単。数分程度で終わるので、面倒がらずに数日〜数週間おきに必ず実行することを心がけましょう。
用意しておくと便利! セルフケアに必須の3種の神器
①メイコー ナイロンブラシ/MKS43800 参考価格648円
毛先が密で柔らかく、適度な弾力があるので使いやすいプロ用ブラシ。ラグやベゼル、裏蓋、ブレスなどディテールケアの必需品。
②HELI マイクロファイバークロス/参考価格1296円
超極細繊維が、微細なチリ汚れや皮脂などをしっかり吸収。柔らか素材でSSはもちろん、貴金属やガラスなどにも安心して使用できます。
③ベルジョン窓付きキズミ/BE2611 参考価格3780円
サビや汚れ、傷みなどを観察する際に役立つ 拡大ルーペ(倍率3.3倍)。サイドに明り取り用の小窓付きなので、見やすさは抜群です。
必ず実施しておきたいパーツ別のケア
【ケース回り】
乾いたクロスとブラシで順番を決めてケア
ケースのケアは、柔らかいクロスで乾拭きが鉄則(水拭きは水気の侵入の危険があるので)。表や裏、サイド、ガラスなど順番を決めて丁寧に(順番を決めておくと、拭き残しを防げる)。ラグやリューズなど細部は、ブラシで汚れを掻き出しましょう。
【ブレスレット】
表裏だけでなくコマ間やバックルも忘れずに
ブレスのケアも、クロスで表裏を丁寧に。コマの間やバックルなどにも汚れが溜まりやすいので、週1回程度はブラッシングを。 面倒な時は、スプレーするだけで隙間汚れもスッキリ掃除してくれる「HELI メタルブレスレットクリーナー」が便利です。
【革ベルト】
コマメなケアで、水気と汚れを除去しよう
革ベルトは濡れると水気が内部へ染み込んでしまうので、汗などをかいたらその都度、柔らかなクロスで乾拭きを。着け終えたら同じく、クロスで表裏を拭っておきましょう。また、毎日同じ革ベルトを着用し続けるのも「劣化」の原因。数日おきに付け替えて着用を。
もしもケアやメンテをサボると、オーバーホール料金が高くなることも……。
正しくケアやメンテを実施した時計――オーバーホール料金 約3万1000円~
何の問題も発生せずに基本料金のみで完了
こちらは、デイリーケアを正しく、オーバーホールもメーカーが推奨する期間ごとにキチンと行なった時計。ケアを正しく行なっているので、ケースやブレスにサビは皆無。オーバーホールも期間内に実施しているため、機械油も新鮮さを保ったままで、部品の損傷や摩耗もないベストな状態です(この状態を維持し続けていれば、時計の寿命も「半永久的」に保たれます)。オ ーバーホールの料金も、機械式クロノの基本料金(メーカーや機種によって異なる)の範囲内に収まるはずです。
ケアやメンテを怠りがちな時計――オーバーホール料金 約6万円~10万円以上
サビ落としのための研磨や部品交換代が重む
ケアやオーバーホールを、ほとんど実施していない時計。ブレスやケースに皮脂などが溜まっていると、本来は空気中の酸素と反応して表面に薄い保護膜を形成するSS素材が、酸素が遮断されてサビやすくなります。この時計もリューズやブレスなどに薄いサビが発生。サビが発生するとオーバーホールの基本料金に、ケースやブレスのサビ落とし研磨料金が加算。また、サビたリューズの部品代など(サビが他にも広がっている場合は、その料金)も必要となってしまいます。
よく機械式腕時計は一生モノと言われますが、これは正しいメンテナンスを施すことが大前提。ここで紹介したセルフメンテナンスをしっかりと覚えて、快適な腕時計ライフを送りましょう。