海外で賞賛される日本の舶来酒といえばウイスキーが筆頭格だが、近年はワインも大躍進。理由のひとつが、多彩な風土を生かした優美な味だ。代表銘柄と、そのモノづくりを紹介しよう。
スパイス香る果実味になめらかな渋みが調和

サントリーフロムファーム
登美の丘 赤 2022
オープン価格(実勢5940円前後)
この地で個性が開いたプティ・ヴェルドやメルロが中心のミドルボディ。黒い果実やスパイス香、甘くなめらかなタンニンが美味。






※:登美の丘ワイナリーの2025年9月時点の資料をもとに編集部で作成。
TASTING!
「すももやチェリーを思わせる香りに、干しぶどうや熟したイチヂクの果実味と、クローブ的な甘いスパイス感が調和。上品な渋みが心地よく、タレ味の焼鳥やビーフシチューなどが合いそう」
南国調の明るい柑橘香が個性を放つ金賞白ワイン

グランポレール
安曇野池田
ソーヴィニヨン・ブラン〈薫るヴェール〉2023
オープン価格(実勢8000円前後)
香り高さを求めて、最も香気が豊かな時期にぶどうを収穫。「日本ワインコンクール2024」の欧州系品種、白部門で金賞を受賞した。


TASTING!
「ソーヴィニヨン・ブランらしいビターな柑橘香に加え、パッションフルーツ的な南国感が華やか。かすかなはちみつのニュアンスと引き締まった酸も絶妙。魚のフライやマリネにマッチ」
和のテロワールとの対話が日本ワインを旨くした
世界最大級のワインコンペで最高賞に輝いたり、和酒の国際コンクール「Kura Master」に「日本ワイン部門」が新設されたり、近年、日本ワインの国際的な評価が高まっている。背景には業界を盛り上げようとする機運の高まりや、造り手の増加によるボトムアップなどいくつも挙げられるが、特に味に関しては、テロワール(気候風土)を細かく意識したぶどう栽培がある。
成果を上げている一社が、1974年からワイン造りを手掛けるサッポロビールだ。その日本ワインブランドが2003年に誕生した「グランポレール」。名酒を生み出す圃場のひとつ、長野県の「安曇野池田ヴィンヤード」は、水はけの良いやせた土地で、標高が高く冷涼。さらに寒暖差もあるため欧州系品種と相性が良く、ぶどうは小粒で味に凝縮感が出る。さらに、より気温が低い高標高区では白ぶどうやライトな黒ぶどうの「ピノ・ノワール」を、低標高区では黒ぶどうを植えるなど、細分化で素材の個性を最大限に引き出している。こうした施策は味にも反映され、各銘柄が国内外の品評会で受賞することも珍しくない。
適材適所のぶどう栽培は、ワインが祖業のサントリーも名手だ。1909年開園と、100年超の歴史をもつ山梨県の「登美の丘ワイナリー」を例に挙げよう。この地はやわらかな味わいを生み出す、粘土・シルト系の土壌。夏は温暖だが昼夜の寒暖差が激しく、フランス系品種と好相性な環境、というのは前者と同様。その上で同社は長年、黒ぶどうは「メルロ」や「カベルネ・ソーヴィニヨン」を中心に栽培してきたが、研究の末に強い個性をもつ「プティ・ヴェルド」の魅力を最大化できると見出し、数年をかけて本格採用。日当たりが良い南向きの斜面を中心に「垣根仕立て」で栽培し、より小粒で凝縮感にあふれた実の生育を実現している。
また、白ぶどうに関しては特に日本固有品種「甲州」に注力。糖度を向上させるべく、凝縮感が高まる区画を選んだり、完熟ぶどうだけを収穫したりと挑んだ結果、「登美 甲州 2022」は2024年、最高賞に輝いた。ちなみに同ワイナリーは9月に醸造施設や見学ツアーを刷新。ぜひ訪れてみてほしい。


※「GetNavi」2025年12月号に掲載された記事を再編集したものです。
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