ヘルスケア
2021/6/5 18:45

猫背を治せば「膝痛」が治る!? プロトレーナーが解説する膝痛予防のための注意点と簡単ストレッチ

階段を上り下りするときや立ち上がろうとしたとき、突然、膝の痛みを感じたことはありませんか? 現在、40歳以上の中高年者数は、7838万人にのぼります。総人口の約62%にあたる中高年の多くの人たちが悩まされている膝の痛みは、なぜ起きるのか? そして進行するとどうなるのでしょうか? プロトレーナーの稲田信幸さんに、膝痛の予防法と改善法について解説してもらいました。

 

プロトレーナー/稲田信幸さん

トレーナー歴25年。「ITRANERS conditioning & care」代表。鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師。アビスパ福岡、コンサドーレ札幌、静岡FC(現・藤枝MYFC)など、Jクラブでの経験も豊富。現在は名門大学サッカー部(関東大学リーグ所属)のチーフトレーナーも務める。一般からアスリートまでの 個人コンディショニングケアも受け付けている。

 

膝痛のおもな原因は“軟骨のすり減り”

―――稲田さんはプロのフィジカルトレーナーとして膝の痛みに苦しんでいる患者さんをたくさん見てきていますが、そもそも膝の痛みはどうして起こるのでしょうか?

 

稲田「さまざまな原因から起こります。膝痛は膝関節の痛みのことをいいますが、大きく分けて2つの種類があります。1つは怪我による急性的な痛み、もう1つは慢性的な痛みです

 

―――急性的な痛みとはどのようなものがありますか?

 

稲田「打撲や転倒といった外的圧力によって急激に発生する痛みです。サッカーなどのスポーツの現場は、このケースによる怪我が大半になります。具体的には半月板や内側・外側側副じん帯、前十字じん帯などの損傷といった怪我ですね」

 

―――慢性的な痛みでは?

 

稲田「変形性の関節症や関節リウマチといったものです

 

―――膝の痛みのなかでも、とくに多い症状はなんでしょうか?

 

稲田「変形性の関節症ですね。“関節の老化”ともいわれる症状で、おもに“軟骨のすり減り”が原因で引き起こります

 

―――軟骨?

 

稲田「軟骨は『骨』と書きますが、骨ではなくて、90パーセント以上が水分できていてクッション性と耐摩擦性に優れているものなんです。私たちの関節は、軟骨がクッションとなってスムーズに動くようにできていますが、その軟骨は年齢を重ねるにつれてすり減って、膝の関節自体が変形します。それによって骨同士が接触して炎症が起きる……つまり、痛みが出るのです」

 

―――なるほど。

 

稲田「変形性の膝関節症の代表的な症状としては、階段を上り下りがつらい、正座がしにくい、膝が曲げにくい、膝を真っ直ぐ伸ばすことができない、といったことが挙げられます」

 

―――では、膝の軟骨を再生させることはできるのでしょうか?

 

稲田「残念ながら、軟骨は一度ダメージを受けてしまうと再生しません

 

―――ということは、膝も一度変形してしまったら……?

 

稲田「元には戻りません」

 

 

変形性の膝関節痛と診断されたら……

―――では実際に変形性の膝関節症と診断された場合、どのようなことをすればいいのでしょうか?

 

稲田「まずは、症状の進行を止めることです。先ほども言いましたが、膝痛のおもな要因は変形性の膝関節症と呼ばれる膝の老化です。加齢とともに誰にでも起こりえます。実際、高齢者の8〜9割の方が悩まされているといわれています。だからといって放っておいたら、歩けなくなるほどの痛みが出てしまう可能性があります

 

―――膝の痛みにはヒアルロン酸注射を打つといい、といった話をよく耳にしますが。

 

稲田「ヒアルロン酸注射は、たしかに痛みが緩和したり、膝の動きが良くなったりするなどの効果は期待できます。ただ、ヒアルロン酸注射は膝の滑りをうながすだけで、軟骨が再生されるわけではないんです(注:ヒアルロン酸とは軟骨の成分に近い関節液で、軟骨を保護する作用があるとされている)」

 

―――症状を進行させないための予防法はありますか?

 

稲田「運動療法です。予防には痛みが出ない程度に、とにかく運動すること。要するに筋トレやストレッチなどのエクササイズを普段から行なってください。筋肉は老化とともに衰えますが、軟骨と違って筋肉は再生可能です。また、膝の関節には、つねに体重の約4~5倍の負荷がかかっているといわれています。肥満の方は膝を痛めやすいので、ダイエットにも励んでください」

 

―――とくに鍛えたほうがいい筋肉はどこでしょう?

 

稲田「太ももの前側にある上部大腿四頭筋です。膝関節の伸展機能をつかさどる、まさに膝を支える大事な筋肉で、その筋肉がだんだん衰えていくと、膝がグラグラしてカラダのバランスを保てなくなります。通称“ブレーキ筋”と呼ばれる筋肉で、階段の上り下りの際、とくに下りるときにブレーキをかからなくなるんですね」

 

―――膝痛予防のために、普段の生活から注意すべきことはありますか?

 

稲田「猫背で生活しないことですね。猫背の方のほとんどが膝が悪いといいます。背中が丸い姿勢の状態だと、カラダを支えるためにどうしても膝が曲がってしまう。ずっと膝に負担をかけた状態で生活することになります。ですからお年寄りの方は腰が曲がっている方が多く、膝の痛みが出てしまうんです」

 

―――つまり、猫背を治せば、膝の痛みが改善されるということですか?

 

稲田「そうですね。猫背はストレートネックの原因にもなります。今はスマホ時代ですから、背中を丸めて手元のスマホを覗き込む姿勢になることが多いため、とくに猫背の方が増えています。背中の筋肉が硬くなると猫背になるため、まずは肩甲骨周りの動きをよくしてあげること。そして、できるかぎり上体を起こして生活すること。しっかりと胸を張って生きる! というのは健康上でも大事なんです」

 

膝痛の原因や予防策を解説していただいた上で、次はスキマ時間にも取り組める、膝痛予防&改善ストレッチを教えていただきます。

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