2013年ごろから始まったコード式キャニスター掃除機とコードレススティック掃除機のシェア争いは、いまやコードレススティック掃除機が優勢。コードレススティックは、元々コンセントに電源を抜き挿しする必要がなく、使いたいときにさっと取り出せるのが魅力でしたが、弱点だった運転時間と吸引力の強化により、メイン掃除機として十分に使える性能を獲得しました。
一方、コードレススティック型に押されて苦しい状況にあったキャニスター掃除機ですが、2017年秋に起死回生を狙った2モデルが相次いで発売されました。それが東芝「VC-NX1」とシャープ「Ractive Air EC-ASシリーズ(サイクロン式)・EC-APシリーズ(紙パック式)」です。
コードレスキャニスター掃除機の注目2モデルの使い勝手を検証!
「VC-NX1」と「Ractive Air」はともに、キャニスター型ながら「コードレス」を実現したモデル。コードレススティック掃除機で培ったバッテリー技術・モーター技術を応用し、コード式に迫る吸引力と長い連続運転時間を実現したのが特徴。コードがモノに引っかかることもなく、 「コードの抜き挿し」という面倒な作業がなくなったうえ、本体の重さが手首や腕にかかりません。「コードレス」となったことで、キャニスター掃除機は、より快適な操作が期待できるのです。しかし、その使い勝手の良し悪しは、実際に使ってみないとわからない……。
ということで今回は、新発売の東芝「VC-NX1」と、シャープのEC-ASシリーズのなかから「Ractive Air EC-AS500」(以下、Ractive Air)を取り上げ、「吸引力(フローリング)」「吸引力(カーペット)」「操作性」「設置性」「ゴミ捨てのしやすさ/メンテナンス性」「汎用性」「独自機能」の7項目で、前・後編の2回に分けて比較検証。前編では、「吸引力(フローリング)」「吸引力(カーペット)」「操作性」「設置性」の4項目を見ていきましょう!
【検証する機種はコチラ】
エントリーその1
コード式に迫る吸引力と約1時間という長時間の連続運転を実現
東芝
VC-NX1
実売価格10万2370円
リチウムイオン電池を同社のコードレススティック掃除機の2倍搭載し、最長約60分の連続運転が可能に。最大毎分約12万回転する高速DCモーターを新採用し、同社のコードレススティックを超えるパワフルな吸引力を実現しました。凹凸の少ない本体デザインで狭いスペースでも動きやすく、本体が上下反転しても体勢を直さずそのまま掃除が続けられます。スイスイ自走する「ラクトルパワーヘッド」やゴミの有無を知らせる「ゴミ残しまセンサー」など、同社の高度な機能を多数装備。●サイズ/本体質量:W261×H185×D234mm/2.8kg
エントリーその2
徹底した軽量化によりスティック型を超える使いやすさが魅力!
シャープ
Ractive Air EC-AS500
実売価格6万7320円
本体構造などの軽量化により、パワーブラシタイプのキャニスター型では最軽量クラスの総質量2.9kgを実現。手元パイプ部に航空機などにも使われる軽量素材「ドライカーボン」を採用し、手や腕への負担を大幅に軽減しました。大風量ターボモーターと高効率リチウムイオンバッテリー、自走パワーヘッドで、同社のコード式キャニスター掃除機と同レベルの集じん力を達成。バッテリーは着脱式なので、置き場所を選ばず手軽に充電が行えます。●サイズ/本体質量:W204×H230×D390mm/1.8kg
【テストの内容はコチラ】
吸引力テストは、フローリング上とカーペット上の幅20cm×長さ70cmの範囲にドライペットフード50粒、重曹20g、長さ5cm×幅1〜2mmに切った紙ゴミ1gを撒き、それぞれ強モードで1回だけ走行。どれだけ取れたかを視認しました。また、フローリングに関しては、壁際に重曹を撒き、その集じん具合も確認しています。
操作性は、ヘッドの前後の動かしやすさ、左右の首振りのしやすさを確認。また、テーブルなどの家具の近くを掃除機がけして、本体が障害物を避けてスムーズに走行できるか、方向転換がスムーズか、などもチェックしました。さらに、ソファやベッドなど高さのない場所の掃除のしやすさにつながる、ヘッドをどこまで寝かせて掃除できるかも吟味。掃除機の連続稼働時間と充電時間も合わせて確認します。
設置性は、掃除終了後に省スペースに収納できるか否か、また収納する手間はどうか、という点を見ていきます。
【検証結果はコチラ】
エントリーその1
東芝
VC-NX1
<吸引力(フローリング)>
ヘッドと床のすき間が十分に取られ、かさのあるドライペットフードも完璧に集じん
1回の走行では紙ゴミがある程度残り、ヘッド両端(特に左端)に重曹が残ってしまいました。一方注目なのは、ドライペットフードを完璧に集じんできていたこと。ペットフードは直径6mm×長さ6mmほどの筒型ですが、コードレススティックが苦手にしている“かさのあるゴミ”をしっかり捕集できるのは大きなメリットです。
ヘッドの形状を確認すると、ヘッド前面カバーと床のすき間が約8mm開いていました。通常のコードレス掃除機の場合、バッテリー消費を抑えつつ吸引力を高めるために、ヘッドと床のすき間を小さくしがちなのですが、そうするとかさのあるゴミはすき間を通れません。その点、本機で大きめのゴミも問題なく集じんできるのは、それだけパワフルなモーター出力とバッテリー容量を確保できていることの証拠です。
また、壁際に重曹をまいての集じんでは、両端にわずかに粉が残るものの、壁と床の間のゴミは完璧に集じんできていました。
<吸引力(カーペット)>
重曹とペットフードは完璧に捕集するも、紙ゴミの集じんはやや苦手
カーペットの掃除では、重曹とドライペットフードは完璧に集じんできていた一方、紙ゴミはカーペットの毛に引っかかる形で、半分ほど残っていました。フローリングの掃除でもそうでしたが、細長くてある程度硬さのある紙ゴミは、ヘッドブラシではかき取りにくいようです。
ちなみに掃除機のなかには、ヘッドがカーペットにぴったり吸い付いて掃除しにくい機種もあるのですが、本機はそれがなく、極めて快適に掃除できたのも印象的でした。
<操作性>
本体が上下反転しても掃除できる特殊構造で方向転換が超スムーズ
キャニスター掃除機の長所は、長時間掃除しても疲れにくいこと。本体がハンドル部分と分離しているので、手首や腕にかかるのがハンドルや延長パイプ、ヘッドの重さだけになるので、快適に操作できるのです。
本機は、そうしたキャニスター型本来の長所に加え、随所に使いやすさの工夫が見られます。なかでも特徴的なのは、本体が上下反転してもそのまま掃除し続けられる構造(東芝はこれを「ダブルフェイススタイル」と名付けています)であること。本体が円筒型でさらに本体より大きい車輪を採用しているため、本体が真上を向いてもひっくり返っても、問題なく走行し続けられます。また、大型車輪なのに加え、柔らかくしなりのあるホースの採用で、急な方向転換にも柔軟に追随。滑らかなラウンドフォルム採用で、家具の間もスルスルと走行できます。
ヘッドは左右にそれぞれ60°以上首振りし、ハンドル部を床にピタッとつけても、ヘッドが浮かず、高さが約6cm以上あるすき間なら奥までしっかり掃除できます。何より自走式パワーヘッドが強力で、フローリングでもカーペット上でも、手を添えておくだけでどんどん前に進み、掃除がとてもラクでした。ハンドルがラウンド形状で、掃除する場所によって最も操作しやすいハンドル位置を選びながら使えるのが便利です。
ただし本機の場合、(あくまでシャープ「Ractive Air」と比較してですが)本体の重さがやや気になりました。特に女性や高齢者が片手で本体を持って階段などを掃除する場合に、その重さが辛く感じるかもしれません。
充電時間は約5時間で、連続運転時間は標準モードで約60分。約1時間の掃除ができれば、コード式掃除機と同じ感覚で掃除しても、ほぼ問題がないと思われます。また、ゴミの有無を「ゴミ残しまセンサー」が見分けて吸引力を自動調節する「おまかせ」モードでも、約20〜30分の掃除が可能です。
<設置性>
セットにコツがいるものの、ほぼA4サイズの充電台にすっきり収納
本機は掃除終了後は付属の充電台に戻して収納することになります。充電台は幅25cm×奥行26.5cmとA4用紙よりやや大きいサイズの設置面積。ホースをハンドルの裏に引っ掛けるフックが付いており、見た目にもすっきりと収納できます。ただし、充電台に本体をセットする際は、最初なかなかうまくセットできませんでした。
また、本機は東芝の製品らしく豊富なアタッチメントを付属していますが、それらは充電台にはセットできず、別の場所に収納する必要があります。もっとも、アタッチメントも充電台に収納できるようにするとコンパクトさが失われますから、本体の設置性向上とトレードオフだと考えれば納得できるでしょう。
エントリーその2
シャープ
Ractive Air EC-AS500
<吸引力(フローリング)>
微細な重曹はしっかり吸引。ドライペットフードはヘッドを浮かせる必要あり
重曹はほぼ完璧に集じん。ヘッドが走行したあとにはまったくゴミが残りませんでした。一方、ドライペットフードと紙ゴミは通常の掃除のやり方だと取り残しあり。特にドライフードはほぼ集じんできませんでしたが、これは、ヘッドと床面のすき間が3mmしか空いていないため。紙ゴミが残っていたのもペットフードがヘッド前面に溜まってしまい、吸引の障害になったと考えられます。ちなみに、ヘッドを浮かせてペットフードの上にかぶせて掃除すると問題なく集じんできました。
なお、壁際に重曹をまいての吸引テストでは、両端にわずかに重曹が残ったものの、壁と床の境界のゴミはしっかり吸引できていました。
<吸引力(カーペット)>
カーペットにヘッドが吸い付いて掃除しにくい点が惜しい
カーペットの集じんに関しては問題がありました。ヘッドの吸引力でカーペットとくっついてしまい、かなりヘッドが動かしにくかったのです。これはテストに使ったカーペットが薄型で軽いのも影響したのかもしれません。試しに弱モードで掃除してみましたが、こちらも強モードとあまり差がありませんでした。
結局力を入れてなんとか走行してみましたが、ヘッドに押し出されるかたちで、ドライペットフードと紙ゴミがヘッド前面にかなり残ってしまいました。重曹はところどころに取り残しが出たものの、あらかた集じんできている印象です。
ちなみに、ペットフードの残量がフローリングのときより明らかに少なくなっていますが、これはペットフードがカーペットに沈み込むため、ヘッド前面のすき間を通り抜けられたのだと考えられます。
<操作性>
ハンドル部も本体も軽くて様々な場所で軽快に掃除できた!
本機の最大の特徴は本体質量が1.8kg、総質量が2.9kgと極めて軽いこと。ハンドル部からヘッドまでが特に軽く、掃除が驚くほどスムーズです。特に階段の掃除は、同社のコードレススティック掃除機に比べ、腕への負担を最大約20%低減しているとか。これならスティック型以上に快適に使えると実感しました。
ホースも柔らかくしなりがあるので、急な方向転換にもスムーズに対応。本体が細身なので狭い場所にもどんどん入っていけますし、走行できない場所なら片手で本体を持ちながら掃除しても、それほど苦になりません。東芝のように狭い場所での方向転換はできませんが、本機の場合は軽量な本体をひょいと持ち上げれば済む問題で、それほどデメリットには感じられませんでした。本体前面に大型の取っ手があり、持ちやすいのもうれしいポイントです。
また、「設置性」の検証でも触れますが、本機はどんな場所でも自立できるのが魅力。モノを動かすときにいちいち腰をかがめて床にハンドルを置いて……という作業が不要です。
ヘッドの左右の首振りは各45°程度。ヘッドの首振り角度は東芝より小さめですが、ヘッド自体が軽くスイスイ動かせるので、イスの脚回りなども快適に掃除できます。ハンドルをペタッと床に置けば、高さ約6cmのすき間にも入って掃除が可能。ちなみに、フローリング上では自走式ヘッドが機能しますが、カーペット上ではブラシがカーペットとの摩擦で止まってしまい、うまく機能しませんでした。
充電時間は約80分で、連続運転時間は弱モードで約30分。バッテリーをもう1個用意すれば、差し替えて連続約60分の掃除も可能です。フローリングとカーペットなど、掃除する場所に合わせて吸引力を変える「自動エコモード」では約20分の連続運転ができます。
<設置性>
本体のみで自立できるうえバッテリーを外して充電でき、設置場所は自由!
掃除終了後は本体をタテに起き上がらせ、延長パイプ本体底面のフックに掛けて収納。ホースもハンドル裏に引っ掛けてスリムに設置できます。バッテリーが着脱式なのでバッテリーだけ外して別の場所で充電でき、本体の収納場所が自由なのもメリットです。掃除中に本体を立ててパイプをフックに収め、イスやモノを片付けるという作業も快適に行えます。
【今回のテストのまとめ】
<吸引力>
大小のゴミなら東芝が有利だが微細ゴミ中心ならシャープも優秀! ただしカーペットの掃除に注意
吸引力に関しては、東芝「VC-NX1」はかなりパワフルで、大小のゴミをしっかり集じんできる一方、ヘッドの両端の吸引力はわずかに落ちるようです。それに対してシャープ「Ractive Air」は、ヘッド前面と床の間が狭いものの、ヘッドの下に潜り込んだゴミは逃さず集じんできていました。ただし、カーペットにヘッドが吸い付く場合があり、その際は掃除が大変になります。
総合的に見ると、基本的なモーターパワーが強く、ヘッドと床面の間のすき間が大きくても問題なく掃除できる東芝のほうが、吸引力ではやや優勢だと感じました。ただし、通常のフローリング上の綿ボコリやチリなどをメインに掃除するなら、シャープでもまったく問題ありません。
<操作性>
どちらもスムーズに掃除できるが、より快適なのは軽さを極めたシャープ!
まず、コードレスキャニスター掃除機に共通して言えることですが、キャニスター型でコードの抜き挿しがなく、複数の部屋をどんどん掃除できるのはかなり新鮮でした。これまでキャニスター型を使ってきた人なら、この利便性だけで、コードレスキャニスターを導入する価値はあると思います。
特に本体もその他のパーツも徹底的に軽量化したシャープ「Ractive Air」は、文句なしの使いやすさ。スティック型よりも手や腕に負担がかからず、片手で本体を持てばスティック型同様の使い方もできる、まさにキャニスター型とスティック型のいいとこどりのハイブリッドモデルだといえます。
一方東芝「VC-NX1」は、上下反転機能を採用するなど、これまでにないスタイルを実現しているとはいえ、本体の重さがどうしても気になります。もちろん、従来のキャニスター型掃除機と比べて重いわけではないのですが、コードレススティック型に慣れてしまった人は、本体の存在感に少々違和感を覚えるかもしれません。
<設置性>
部屋置きなら東芝、自由に収納するならシャープがオススメ!
設置性に関しては、東芝「VC-NX1」はコードレススティック掃除機とほぼ同様のスタイル(特にエレクトロラックス製品と近いです)。本体を充電台にセットするのに若干の慣れが必要ですが、ホースもスリムにまとめられ、部屋置きしてもそれほどうるさくは感じません。
一方のシャープ「Ractive Air」は、バッテリーを外して充電するので、設置場所の自由度が格段に高いのが魅力。収納場所を特に決めず、掃除が終わった場所にとりあえず置いておく、というズボラな使い方もできてしまいます。
次回は連載企画の後編。「ゴミ捨てのしやすさ/メンテナンス性」「汎用性」「独自機能」について検証していきたいと思います。