Vol.160-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は9万9800円(税込)から購入できる「MacBook Neo」の話題。教育市場での普及を目指す狙いと、他のMacBookとの違いを解説する。
今月の注目アイテム
アップル
MacBook Neo
9万9800円~
13インチのLiquid RetinaディスプレイとA18 Proプロセッサーを搭載し、高度なAI性能を実現。アルミ製ボディは軽量で、最大16時間の駆動が可能だ。カラーはブラッシュ、インディゴ、シルバー、シトラスの4色が揃う。

MacBook Neoは、プロセッサーに「A18 Pro」を採用している。これは2024年秋発売の「iPhone 16 Pro」シリーズに使われたもの。これまで、Macには「M1」「M5」などの「Mシリーズ」プロセッサーが使われてきたが、ここではより性能の低いものが選択された。
その理由は、量産されていてよりコストが安いプロセッサーだからだ。メモリーもiPhone用のものと同じ8GBで、他のMacよりも少ない。現在他のMacのメモリーは16GBからで、半分になっている。
iPhone用でメモリーが8GBしかないということで、発表直後には「性能は大丈夫なのか?」という声も多く出た。しかし実際に試してみると、性能面での懸念は杞憂に終わった。
もちろん、上位機種ほどは速くない。価格が2倍であるMacBook Air(M5版)は、MacBook Neoに比べ2.5倍以上の性能を持つ。価格以上の差があるといってもいい。だが、MacBook Neoは意外なほど快適だ。web閲覧や文書作成などで性能不足を感じることはないし、4Kの動画編集などもこなせる。
ただし、動画編集や写真加工後に書き出したり、ソフト開発のために巨大なデータを使ったりすると、上位機種に比べてかなり待たされる。それらの作業をする人々はなんらかの仕事のプロであることが多く、1分1秒を短縮することが、仕事の効率化につながる。それらの人々は、上位機種に投資して時間を買うほうが良い。
だが、学生なら“まず何でもできること”を求めるだろう。作業時間はかかっても価格が安く、自分で買えることが最優先だ。またビジネスパーソンの中にも、そこまでヘビーな作業をしないという人は多いはず。その場合、いままでは“最も安価な機種”としてMacBook Airを選んでいたかもしれないが、それがMacBook Neoに切り替わる可能性もあるだろう。
低価格機種がここまで快適な製品になるのはうれしい誤算だった。日本での「10万円以下」という価格はインパクトがあるが、アメリカでの「600ドル以下」という価格は、もっとインパクトを持っている。
このことはMacユーザーだけでなくWindowsユーザーにも影響を持つ。現状、Windowsには快適な低価格機種があまりない。メモリーを16GB搭載していないと快適にならないこと、コスト重視のx86系プロセッサーでは求める性能が出づらいことが理由だ。ミドルクラス以上ならMacとWindowsの差は大きなものではなく、ハードウェア構成によってはWindowsのほうが高性能。しかし、低価格機種での差は、MacBook Neoの登場で目立ってきてしまった。
マイクロソフトは「2026年中にWindowsの使用メモリー量を削減する」とのコメントを出しているが、その結果として8GBで快適な低価格機になるかはまだわからない。
仕事環境などの影響もあるので、低価格機種があるからWindowsからMacへの移行者が増えるというほど簡単なものではない。
とはいえ、PC市場に新しいインパクトをもたらす存在だったのは間違いない。2026年後半に向けてどのような変化が現れるか、楽しみではある。
では、同じMacの中で、上位機種にはどう影響が出たのだろうか? この点は次回解説する。
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