“消せるボールペン”として人気の高い、おなじみのパイロットの「フリクションボール」シリーズは、2025年末に世界発売累計50億本を突破したとのこと。ボールペンに限らずフリクションシリーズのマーカーやスタンプも含めての数であるとはいえ、文房具界隈の数字としては破格の数字と言えるだろう。
筆者もメモ書きなど日常的な筆記で長年使い続けており、いまやフリクションがないと仕事がいろいろと滞ってしまうぐらいである。
ただし、そんなフリクションボールにも弱点がある。シーンによって使い所が限られているのだ。
フリクションは確かに消せるのは助かるが、公式の書類などでは筆跡が消えてしまうためNG。特に署名を入れたり、領収書に金額を書き込んだりという用途では絶対に使えない。
そこでパイロットが打ち出してきたのが、「消せるフリクション」+「消えない油性インク」が合体した多機能タイプの「フリクションボールスイッチ」(以下、フリクションスイッチ)だ。

ペン1本で完結する「全局面対応」フリクション
移動の多い営業職や立ち仕事がメインの人たちは、ペンケースを持つ代わりに、胸ポケットに1本だけボールペンを挿して持ち歩くことが多い。
しかしペン1本に限るとなると、使い所が限られるフリクションボールはどうしても持ちづらいのである。

フリクションスイッチは、フリクションボール黒・赤・青の3色+油性顔料インク黒の4機能を搭載した多機能ボールペンで、「なるほど、これなら1本でどんなシーンにも対応可能」というわけだ。
ちなみにボール径のラインアップは、「フリクション3色: 0.38mm/油性0.5mm」と「フリクション3色: 0.5mm/油性0.7mm」の2タイプ。ゲルであるフリクションは油性よりもにじみやすい(=線幅が太くなる)ので、結果的にこの組み合わせだと線幅に違和感が出にくいということだろう。

ノックは、フリクションが通常のスライドレバーノックで、油性だけがクリップ兼用スライドノックとなっている。
油性とフリクションは、ペン先を出し間違えて書くといろいろなトラブルを生みそうなので、少しでも間違いを減らすための工夫としてノックを変えているようだ。

フリクションのペン先の謎
少し気になったのは、フリクションのペン先が最新のシナジーチップではなく、古いコーンチップであるということ。
インクフローが良く書き味が滑らかなシナジーチップとフリクションの相性は抜群だし、そもそも2024年の「フリクションシナジーノック」発売以降、フリクションボールの標準はシナジーチップに切り替えていく、という話だっただけに、これは少し釈然としない。
特にフリクション0.38mmには、シナジーチップに慣れたいまとなっては、かなりガリガリとした引っかかりを感じてしまった。

そこでおすすめなのが、リフィルを「シナジー3用リフィル」(フリクションシナジー多色用 レフィル LFRF-2 0.4mm)のものに替えてしまうこと。
替芯分の初期コストはかかるが、これなら書き味は最新のサラサラとした滑らかなものになるので、非常に快適だ。

新開発油性インクの筆跡堅牢性
他方、書いてみて「おっ、これいいな」と驚いたのが、消えない油性インクだ。
最初はパイロットの低粘度油性インク「アクロインキ」を搭載しているのかと思ったが、書き味がやや違う。実はフリクションスイッチ用に新規開発されたインクが搭載されているのだ。

アクロは非常になめらかながら、早書きするとたまにダマ(インク溜まり)や轍(筆記線の中にペン先で掘ってしまう溝)が発生するのだが、フリクションスイッチの油性インクはそれが起きにくい。
それでいて滑らかさは文句なく、正直、これだけ独立して単品のボールペンとして売ってくれてもいいのに……と思うぐらいに書きやすい油性インクだ。

さらに油性顔料インクということで、筆跡堅牢性が高いのもポイント。
耐水・耐光性はもちろん、一般的な油性インクが弱点としているアルコールにも強い(耐アルコール性)。手指に消毒用のアルコールが残ったまま筆跡を触って汚してしまうというトラブルが起きる心配はない。

油性インクには強い耐擦過性も
もう1つの見落とせない点は、フリクションスイッチの油性インクは強い耐擦過性も持っていることだ。
一般的にゲルや水性と比較しても乾燥が速い油性インクではあるが、それでも筆跡を強くゴシゴシと擦るとスレ汚れが発生することがある。
それに比べて、耐擦過性のフリクションスイッチ油性インクはフリクション消去用のラバーで擦っても、このスレ汚れがかなり少ない。 フリクションの筆跡と間違えてゴシゴシ擦ってしまう可能性のあるインクだけに、これは重要な能力といって良いだろう(もちろん、フリクションと油性を間違えて書いてしまったという時点でなかなかのアクシデントなわけだが)。

ノック部に工夫があるとはいえ、やはり書くべきインクの取り違えが発生する可能性はあり、そこは予めしっかりと認識して使うべきペンだと思う。
とはいえ、持ち歩くペンがこれ1本で済むというメリットは非常に大きく、「こんなフリクションを待っていた!」というユーザーも多いのではないだろうか。
フリクションスイッチは、いままでは「仕方ない」とフリクションを諦めていた層にもリーチできるはずで、かなり売れるような気はしている。


