アメリカ航空宇宙局(NASA)というと、世界トップクラスの秀才が集まり、一般人には到底理解しがたい難解な問題に取り組んでいる……と思われるかもしれませんが、現在、一般人でも気軽にNASAのプロジェクトに参加できるものがあるんです。それが、スマートフォンで雲の写真を撮って、NASAに送るというもの。
人工衛星だけでは認識しにくい雲の形状を把握
現在NASAが一般市民に広く協力を呼びかけているのが、スマートフォンで雲の写真を撮影し、送信する「Citizen Science Cloud Observation Challenge」。NASAでは、「雲及び地球放射エネルギー観測装置(CERES)」という人工衛星を利用した機器を使って、地球規模で雲の観察を行っています。しかし、最新テクノロジーを駆使していても、CERESですべての雲のタイプを認識していくのは簡単ではないのだとか。特に冬から春に季節が移り変わる今の時期は、雲の形状も大きく変化するシーズンなのだそう。
そこで、市民に雲の写真を送信してもらい、CERESから送られる衛星画像と、地上から撮影した画像が合致するか解析し、CERESの精度を確認する等研究に利用されるのです。
ちなみに、現在あるCERESは全部で6台で、最新のものは2017年11月18日に打ち上げられ、2018年1月5日からデータの測定を開始したばかりです。
市民参加型プロジェクト
このプロジェクトはNASAが呼びかけているものですが、「GLOBE(グローブ)」と呼ばれるプログラムの一貫です。GLOBEは、一般市民や学生たちにデータ収集に参加する機会を作り、地球環境や地球のシステムについて理解を深めることを目的に1995年に発足したプログラムで、日本を含めた世界120か国が参加しています。
今回の雲の観察のような気候に関するものの他にも、このプログラムは水質や土壌など様々なものを調査しています。2017年には、ジカ熱やテング熱などの媒介となる蚊について、蚊がいる場所や蚊の幼虫の有無などを世界で一斉に調べるプロジェクトも実施。市民が参加することで、研究者だけでは限界があった広範囲のデータ収集が可能になり、地球環境や生活環境改善などに生かされているのです。
NASAへ雲の写真を送る方法は?
では、「Citizen Science Cloud Observation Challenge」に参加し、雲の写真をNASAに送るにはどうしたらいいでしょうか。方法はいくつかありますが、専用アプリ「GLOBE Observer」を利用するのがとても簡単。アプリを起動して「GLOBE clouds」を選択し、指示に従って一日最大10枚の写真をアップロード。雲の形状や撮影日時、場所などを入力するだけです。
NASAでは「雲を観察する専門家である必要はありません。とにかく外に出てみてください。雲を観察すればするほど、データ収集も気軽にできるようになるでしょう」と呼びかけています。
このプロジェクトによる雲の写真の応募期間は2018年4月15日まで。参加者の年齢制限はありません。アプリは英語での表示になりますが、NASAの世界規模のプロジェクトに参加してみたい方はぜひ試してみてはいかがでしょうか。