[ドバイ]
ドバイは人口の8割以上が外国人。特に西洋人がストローラーを使うため、アメリカやヨーロッパのブランド(Uppa babyやStokkeやCiccoやBagabooなど)が主流で、シングルタイヤのものは多くのベビー用品店でも大きく展示されています。ローカルのアラブ人向けには、ゴールドカラーや高級車とコラボした約50万円もするストローラーも販売されている一方(写真下)、インド人やパキスタン人が多く住む「オールドドバイ」とよばれる地域では、ダブルタイヤや小型で軽量のベビーカーを見ることもあります。
1年間の最低気温が20度、夏は50度まで上がるドバイでは、外でベビーカーを押す姿はあまり見かけません。ベビーカーはショッピングモールやレストラン、カフェで見かけることが多く、特にモールやメトロも広いスペースなので、大型ベビーカーを押す人が多いです。たまに駅の改札を通れる日本製ベビーカーを見かけることもありますが、とても小さく見えます。クルマ社会なので、アメリカのように直接取り付け可能なシートも人気。
身長が高い西洋人はなるべく赤ちゃんと距離が近くなるようハイシートを重視。「Uppa bab」や「Stokke」などの使用率が高いのが特徴です。その一方、現地のアラブ人は一夫多妻制なので、子どもを4~5人連れた大家族もよく見かけ、双子用やステップのついたもの、荷物がたくさん入るものなど、利便性を重視する傾向です。ドバイは物価が高いので、ストローラーやベビー用品などは年に数回ある大きなセールでまとめ買いをします。
日本との共通点は、ポケットの多さやカップホルダーなどオプションの豊富さと利便性です。ドバイでは欧米系ブランドが多いので、サイズと身長の高さが圧倒的に違います。大きくて安定感はあるものの、折りたたんでもかなり幅をとるうえ、重さも10kg以上あるため、小柄な女性には取り扱いが困難。ただし、ドバイの人たちは妊婦や子どもに優しく、男性トイレにもベビールームが完備されるほど徹底されているので、著者は大きくても困ったことはありません。
では、日本は?
日本でも、最近では芸能人などのセレブたちがおしゃれな海外製を使うシーンがSNSなどで拡散されており、海外ブランドの人気が上昇中。それと同時に、ベビー用品店のオリジナルブランドも増加の一途をたどっています。
また、海外でも見られるように、安全性とともに、カーキャリア、ベビーキャリアなどに使える「~Way」式のベビーカーや、海外デザインを追従したスタイリッシュなものやカラーバリエーションも増えている傾向にあります。
狭い国土や道路、駅の改札、階段の上り下り、体型などの背景から、使用時や折りたたみ時のコンパクトさ、小回りのよさに重点が置かれているところは日本独特と言ってもよいでしょう。そして、女性一人が操作することを念頭にいれた軽量さや高い機能性を兼ね備えた設計もこの国の特徴。やはり大きさに関しては日本と海外、特に欧米系との決定的な相違点と言えますが、日本ならではの利便性や安全性などの細かい配慮も文化的な相違点かもしれません。
海外では振動抑制にはタイヤの大きさでカバーすることが多いですが、日本では小回りの良さをキープするため、タイヤ以外の機能、サスペンションやエアクッションなどで振動を抑える傾向も特徴的かもしれません。タイヤについてもダブルタイヤが多いですが、近年ではピジョンのRunfee(ランフィ)の登場でシングルタイヤのベビーカーも多く出回るようになりました。
海外と比較すると、残念ながら日本はベビーカーに対して寛容とは言いがたく、コンパクトなベビーカーでも電車やバスのなかでは広げたままかたたむべきかの論争が常々されている状況。背景には、日本は国土が狭いうえ、赤ちゃんが泣いたりぐずったりした際、親がすぐに抱っこして、あやすという行動や「他人に迷惑をかけない」という価値観があります。しかし、混雑時の公共の交通機関では子連れ側が自重するだけでなく、周囲の乗客も、ベビーカーを押している親に手を差し伸べるというチリやドバイの人たちの良いところを見習いたいですね。