JR東日本が次世代新幹線として開発を行っている新型試験車両「ALFA-X」が、先日の試験走行で最高速度時速382キロを記録しました。時速360キロでの営業が目標とのことですが、これまでの試験では時速400キロに達したこともあります。しかし、世の中にはこれを何倍も上回る超高速輸送システムも作られており、なかでも高い期待を集めているのが、アメリカで開発中の次世代交通「ハイパーループ」です。
真空に近いチューブ内を時速1080キロで
ハイパーループを開発しているのは、アメリカのヴァージン・ハイパーループ。ハイパーループとは地上や地中にチューブを作り、そのなかを乗客が乗ったポッドが駆け抜けていくシステムのこと。チューブ内は上空20万フィート(約61キロ)と同等の気圧レベルで、真空に近い状態になっています。さらに磁力を利用して物体を空中浮遊させる「電磁浮遊」を利用しているため、より少ない空気抵抗の中で高速での輸送が可能になるのだそう。
ハイパーループが実現すれば、その時速は1080キロに達する見込みで、飛行機でおよそ1時間半、クルマで6時間かかるロサンゼルス—サンフランシスコ間の距離をわずか43分で移動できることになります。また日本の現在の新幹線と比べると3倍ほどの速さになり、東京—新大阪間は30分ほどで到着できる計算になります。
またハイパーループは100%電気による運転で、設置したソーラーパネルから電源を得ることもできるそう。しかも電気自動車と同じく、移動による騒音が少なく、二酸化炭素は排出せず環境にやさしい点も次世代交通として期待されているところでしょう。
そんなハイパーループは先日、アメリカのネバダ州の砂漠地帯にある、500メートルの長さのテスト用施設で、有人走行テストを実施し成功させました。実用化の際は最大28名乗りの車両が想定されていますが、今回発表されたXP-2新車両は2人乗りで、まるでプライベート飛行機のような空間です。
同社ではこれまでに400回以上の走行テストを繰り返してきましたが、人が搭乗して行われる実験は初のこと。その際、ハイパーループは秒速48メートル(時速172キロ)に到達したそうです。時速が172キロまでだったのは試験場が500メートルの長さしかなかったためで、もっと長い距離で実験が行われれば、さらに早い速度の実現が可能になるかもしれません。ハイパーループは、安全性の認証を2025年までに取得し、2030年までの実用化を目指しているそうです。
その一方、起業家のイーロン・マスク氏が設立したトンネル掘削会社「ボーリング・カンパニー」はラスベガスに商用トンネルを建設しています。マスク氏が構想する高速の地下鉄道システム「Loop」は2021年に開通予定。ヴァージン・ハイパーループやLoopの開発が進み、新幹線を超える次世代高速交通の誕生に期待が高まっています。