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2021/1/1 10:45

いつもと違った一年を「AI」はどう過ごした?【2020年AI記事まとめ】

医療から自動車、環境まで、さまざまな分野で発展が目覚ましいAI(人工知能)。2020年は新型コロナウイルスの感染予防にもAIの技術が活用されましたが、この科学技術は今年どんな進歩を遂げたのでしょうか? 本稿では、この1年間に紹介したAIの最新技術を6つのカテゴリーに分けて振り返ってみます。

↑私の進歩について来い!

 

①【医療】”リモートで”病気を予測

どんな病気でも、早期に発見し適切に対処することが大切。そのために定期的な健康診断が奨励されているのですが、医療機関に行かなくても病気を予測することができたら、私たちにとってメリットもあるでしょう。医療界では、スマートフォンで撮影した顔写真から心臓病を予測するAIの技術の開発が進んでいます。薄毛や白髪、耳たぶのしわの増加、まぶた周辺の黄斑など、顔の変化をAIが解析して心臓病疾患を診断するというもので、まだ実際の医療現場で使われるために十分な精度は出ていませんが、多くの患者のデータを蓄積していくことで、今後は顔写真での心臓病解析が当たり前になっていくのかもしれません。

 

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②【環境】砂漠にいっぱい樹木を見〜つけ

年々深刻化する環境問題にもAIを活用する動きが進んでいます。例えば、AIとNASAの衛星画像を組み合わせた研究で、植物はほとんど生息しないと思われていたサハラ砂漠に、18億本もの樹木が生息していたことが判明しました。サハラ砂漠の大きさは、日本の国土面積の約22倍。いくら衛星画像があったとしても、その写真から樹木の本数を人間が手で数えるなど、途方もない時間と手間がかかる作業になります。それを短時間で計算することができたのはAI技術の賜物。砂漠に存在した樹木の種類を特定することなどによって、地球温暖化や地球保護などの研究にも活かすことができると期待されます。

 

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③【コロナ対策】タッチレスなタッチスクリーン

スマホやタブレット、券売機、ATMなど、さまざまな機器に導入されているタッチスクリーン。これを非接触で操作可能にする開発が行われています。そのひとつが、クルマに搭載されたディスプレイのタッチスクリーン。運転中はクルマの揺れがあり、画面上のタッチしたい部分に、指で的確に触れることが難しいもの。そこで英ケンブリッジ大学では、AIを駆使して運転手が画面のどの部分を指そうとしているか自動的に判別する技術を開発したのです。開発されたタッチスクリーンは操作時間を最大50%も削減。これで運転中の操作ミスによる事故などのリスクも軽減されることでしょう。さらにこの技術は、スマホを含む私たちの生活の身近なあらゆる機器にも応用できると期待できます。

 

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「タッチレスなタッチスクリーン」ってどういうこと? AIを使った最新技術が加速中

 

④【自動車】周囲の音を分析して安全性を高める

クルマ業界の技術開発における永遠のテーマともいえるのが安全性でしょう。自動で駐車する「駐車サポートシステム」や、運転者の死角にクルマなどが近づいたときに警告を出す「ブラインドスポットモニター」はよく知られていますが、そのなかでほぼ未着手だったのが「音」に関する技術。そこでドイツの研究チームは、クルマのクラクションの音や、遠くから近づくサイレン音などを聴き分けられるよう、AIなどを活用しながら視覚機能の開発に取り組んでいます。将来的には、タイヤやエンジンの音から異変を感知するなど、自動車の安全性をさらに高める機能が誕生するかもしれません。

 

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AIが周囲の音を分析! 自動運転車用「聴覚機能」の開発が進行中

 

⑤【ビジネス】ダンスにも著作権を

ダンスの振り付けというと著作権があるのかないのか、なんだか曖昧ですよね。写真やイラスト、音楽には著作者を守る著作権が存在するのに、踊りに関してはそれが明確化されていないのが実情です。そこで世界中のダンサーや振付師を守るために、振り付けを登録して著作権を明確化しようとする動きが現れました。日本とアメリカでリリースされたダンス登録管理システムでは、ダンスの動画からAIが3Dモーションを推定、抽出してデータ化。すでに登録されている振り付けか、新しい振り付けか判断できるのです。せっかく自分が考案したダンスは、守られるべき。ダンス界が変わっていく新しい一歩になっていくかもしれません。

 

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⑥【画像】ボヤけた顔写真がクッキリ!

画像認識や画像作成は、特にAIの技術が活用されることが多い分野のひとつでしょう。2019年には現実の世界には実在しない人物の顔を作り出すAI技術を取り上げましたが、これと同じような画像AI技術としてアメリカの研究チームが発表したのが、ボヤけた元の画像を最大で64倍まで鮮明にするツール。目や鼻などのパーツはおろか、顔の輪郭さえハッキリしない元の画像でも、毛穴やシワまでリアルに再現してしまうのです。ただ、この技術はあくまでも「実在しそうな人の顔」を作るだけ。防犯カメラの画像を鮮明にするような用途では使えないとのことです。

 

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まるで目の前にいるかのようだ! 顔写真を64倍も鮮明にできるAI技術を米研究チームが開発

 

2020年はリモートワークが進み、私たちの働き方やライフスタイルに大きな変化をもたらしました。これは私たち人間とAIの距離をますます縮めているかもしれません。今後もめまぐるしく進化するAI技術に注目です。