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2021/12/20 19:30

やっぱり「クリスマスマーケット」がないと始まらない! ドイツの最新クリスマス事情

ドイツでは紅葉が始まる10月ごろから気温が急激に下がり、年によっては3月や4月でも平均気温が5℃前後になります。さらに冬は日照時間も短くなるため、どうしても気持ちまでが沈みがち。そんな暗くて長い冬に訪れるクリスマスは、ドイツ人が一年で最も楽しみにしている大イベントです。その象徴ともいえるのがクリスマスマーケットですが、近年はネット通販やコロナ禍といった逆風にさらされており、先行きが不安に。いまクリスマスマーケットに何が起きているのでしょうか? 現地からレポートします。

 

クリスマスマーケットとは

↑2021年のデュッセルドルフのクリスマスマーケットには人出が戻ってきた

 

クリスマスの約4週間前になるとドイツ国内各地でクリスマスマーケットが始まり、アドベント(クリスマス4週間前の日曜日)を皮切りに、街中がクリスマス一色になります。中世の面影が残る街並みにきらびやかな照明で飾られたクリスマスマーケットは、まるでおとぎ話の世界のように人々を楽しませてくれます。

 

13世紀頃から始まったといわれるドイツのクリスマスマーケットは、クリスマスになるとカトリック教会に多くの礼拝者が訪れたため、当時は礼拝堂の近くに建てられました。17世紀には現在のような形のクリスマスマーケットが定着し、クリスマス行事の定番になった模様。家族や友人とマーケットにでかけ、クリスマスのキャンドルや飾りを購入したり、焦がしアーモンドやシナモンたっぷりのクッキーを食べたり、温かいワインを飲んだりして楽しみます。

 

そのような街の賑わいが約4週間続いた後、12月23日の夜にはすべてのクリスマスマーケットが撤去され、24日のクリスマスイブには前日までとは打って変わった静けさが街に戻ります。キリスト教ではクリスマスは家族全員で教会を訪れたり、家でお祈りをして食事をしたりする伝統があるからです。

 

時代の流れとともに観光化

そんな長い歴史があるクリスマスマーケットにも、近年では変化が起きています。クリスマスマーケットに約30年間出店しているというデュッセルドルフ在住のゲルマンさんが、以前と現在との違いを語ってくれました。アロマオイルやキャンドルなどを販売しているゲルマンさんは、市内でもひときわ目立つエリアに毎年店を出しています。

 

「昔はみんながクリスマスマーケットで年末の買い物をしていたけど、いまはクリスマスに必要なものはすべてスーパーや雑貨屋、そしてインターネットでも安く買えるからね。一緒にクリスマスマーケットを経営する仲間たちも、売り上げが毎年落ちていくと嘆いているよ」

 

どのような人が商品を買ってくれるのかと質問すると、「クリスマスマーケットで売られている商品のほとんどは手作りでクオリティが高く、金額は決して安くはない。だから、地元の人よりも遠方から訪れる観光客の方が、旅先のお土産としていろいろ買ってくれる。最近はオーガニックが人気だから、アロマオイルもオーガニックのものを売ってみようかと考えているんだ」とゲルマンさん。「でも、変わらない商品も多い。グリューワイン(温かいワイン)やソーセージ、焼き栗なんかは昔からずっとあるよ」と、グリューワインを飲む素振りをしながら話してくれました。

 

地域の親しまれるイベントであり、クリスマス支度の買い物の場であったはずのクリスマスマーケットは、このように時代の流れとともに変化し観光スポットへと変わりつつあります。その背景には、クリスマスがキリスト教徒だけのものではなくなり、国や宗教にかかわりなくイベントとして盛んになったことがあるようです。クリスマス当日は教会に行ったり家族で祝ったりする習慣も少しずつ薄れ、以前は12月23日には撤退していたクリスマスマーケットも数年前から各地で12月末まで開催されるようになりました。

 

2021年は一部地域でドタキャン

↑少しずつ例年の活気を取り戻しているドイツのクリスマスマーケット

 

ドイツでは11月からコロナ感染者が再び急増しています。南ドイツや一部の地域では感染者数が過去最多を記録したため、クリスマスマーケットが始まる直前の11月末に開催の中止が決定されました。

 

その他の地域でクリスマスマーケットは予定通り開催されていますが(12月13日時点)、2Gルール(ワクチン接種済み、もしくは感染から回復した人のみが訪問可)か、3Gルール(2Gに加え、24時間以内の陰性証明保持者)が適用されています。実際に近所のクリスマスマーケットを覗いてみると、始まったころは例年と比べて随分空いている印象を受けましたが、最近では夕方のピークの時間帯になると、かなり混雑しています。

 

かつてのクリスマスマーケットは、地元の人たちの冬の買い物の場でしたが、現在では家族や仲間と一緒に楽しむイベントとして、また、この時期にしか味わえない多種類の料理を楽しめる場所になっています。時代の流れで変化はあるものの、それでも多くの人が心待ちにするイベントであることは変わりません。国中でクリスマスマーケットの街並みが戻ってくるのをドイツの人たちは楽しみにしていると思います。