キヤノンはミラーレスカメラへの参入がかなり遅かったが、最近は意欲的な製品を投入し、シェアを拡大中だ。特徴は、カメラとしての基本部分を同社の一眼レフから継承していること。4Kや無音シャッターに対応したモデルがまだないなど、機能面ではやや物足りなさもあるが、安定感のある画質や洗練された操作性など、実際に使うとわかる魅力は少なくない。そこでここでは、そうしたキヤノンのミラーレス一眼の代表機種を上級、中級、初級にわけて紹介。それらの特徴について解説する。
【上級機】3.2型の大型モニターと高精細EVFを備えた高機能モデル
キヤノン
EOS M5
実売価格(2018年1月時点):10万6740円(ボディ)
キヤノンの上級機である「EOS M5」は、EOS Mシリーズで初めてEVFを標準装備した高機能モデル。一眼レフを一回り小型化したようなデザインを採用し、下方向に最大180度動くチルト式の液晶モニターを搭載。高速AFや最高9コマ/ 秒の連写にも対応する。
●撮像素子:22.3×14.9㎜、有効約2420万画素CMOSセンサー ●背面モニター:3.2型約162万ドット、チルト式タッチパネル ●シャッター速度:1/4000~30秒、バルブ ●サイズ:115.6×89.2×60.6㎜ ●質量:約427g
センサーはAPS-Cサイズで、マウントは独自のEF-Mマウントを採用。アダプターを用意することで、同社が一眼レフ用として展開する豊富なEF/EF-Sレンズも使用可能になる。
0.39型/約236万ドットのEVFを搭載。EVFをのぞいた状態で、液晶モニターをなぞって測距点を動かせる「タッチ&ドラッグAF」にも対応しており、直感的かつ正確なピント合わせが可能だ。
天面には2つの電子ダイヤルと露出補正ダイヤルを装備。感度やホワイトバランスなどもダイヤルを回すことでスムーズに変更できる。
【中級機】EVFをオプションにしてさらなる小型軽量化を実現
キヤノン
EOS M6
実売価格(2018年1月時点):9万6660円(ボディ)
一足先に発売された上位機EOS M5の画質と主要機能を継承しつつ、EVFを外付けのオプションにすることで、いっそうの小型軽量化を実現した中級機が「EOS M6」だ。露出補正ダイヤルの同軸上にサブ電子ダイヤルを備えるなど、高機能がシンプルに整理されている。外装は主に樹脂素材で、グリップ部には表面にシボ処理を施したラバーを採用。カラーバリエーションは、シルバーとブラックの2モデルを用意。
● 撮像素子:22.3×14.9㎜、有効約2420万画素CMOSセンサー ●背面モニター:3型約104万ドット、チルト式タッチパネル ●シャッター速度:1/4000~30秒、バルブ ●サイズ:112×68×44.5㎜ ●質量:約390g
液晶はチルト可動式で、自分撮りやロー/ハイアングル撮影に対応。背面にファインダーのでっぱりがないぶん、小さなバッグでも気軽に持ち運ぶことができる。
状況によってはファインダー撮影も行いたいというユーザー向けに、外付けEVFとして円筒形デザインの「EVF-DC2」(実売価格2万1770円/2018年1月時点)などを用意。
【初級機】コスパ良し! 自分好みにコーディネートできる薄型軽量機
キヤノン
EOS M100
実売価格(2018年1月時点):5万1650円
EOS M100は、シンプルさを追求した小型軽量ボディとフェイスジャケットによる豊富なデザインが大きな魅力。上位モデルと比べると、連写性能など一部の機能はやや控えめだが、センサーや画像処理エンジンはEOS M5、M6と同等のものを搭載する。それでいて、価格はかなり抑えられている点もメリットだ。
●撮像素子22.3×14.9mm、有効約2420万画素CMOSセンサー ●背面モニター:3型約104万ドット、チルト式タッチパネル ●シャッター速度:1/4000~30秒、バルブ ●サイズ:108.2×67.1×35.1mm ●質量:約302g
ホワイト、ブラック、グレーの3色のボディカラーが用意され、別売の9種類の専用フェイスジャケットと組み合わせることで27通りのカラーバリエーションが楽しめる。
上方向に約180°チルトする液晶や自分撮りモードによって、自分撮りが快適に行える。Bluetoothでスマホと常時接続することにより、スマホへの転送も簡単だ。
【キヤノン ミラーレス一眼・5つの特徴】高速AFと直感操作のタッチパネルが魅力
最近のEOS Mシリーズは、独自の「デュアルピクセル CMOS AF」に対応。従来機の弱点だったAF速度を改善し、快適なフォーカス駆動を実現している。操作面では、全モデルがタッチパネルを備え、各種設定を直感的に調整できる点や、中級機以上は一眼レフ風のダイヤル操作を採用している点が特徴といえる。手ブレ補正についてはレンズ側での対応となる。
■特徴1/高速AF
現行モデルの多くはキヤノンが誇る独自機能「デュアルピクセル CMOS AF」に対応。これはCMOSセンサーの画素1つ1つを独立した2つのフォトダイオードで構成し、全画素の情報を位相差AFに利用する技術だ。これによってシーンの明るさや動きの有無を問わず、素早いAF駆動が行える。
「デュアルピクセル CMOS AF」では、すべての画素が位相差AFセンサーとして機能する。
一方、従来の「ハイブリッドCMOS AF」では、CMOSセンサー上に撮像用画素とは別に位相差AF画素を配置していた。そのため、測距点の範囲でも測距スピードでも不利になる。
■特徴2/タッチAF
EOS Mシリーズは初代機からすべての製品がタッチAFに対応。タッチした位置にピントを合わせ、そのままシャッターを切ることができる。特に、シャッターボタンに指が届きにくくなる自分撮りの際に役立つ機能といっていい。また各種の機能選択や再生コマ送りの操作もタッチパネルで行える。
タッチ操作の感度は「標準/ 敏感/しない」から選べる。タッチAFをオフにして、測距点の選択のみにタッチ操作を使うことも可能だ。
■特徴3/ダイヤル操作
EOS M6やEOS M5は天面に2つの電子ダイヤルと露出補正ダイヤルを装備。絞りとシャッター速度、露出補正をダイレクトに調整できる。電源の状態を問わず、露出補正の設定値が瞬時にわかるのも便利だ。
■特徴4/手ブレ補正
EOS Mシリーズの手ブレ補正は、レンズシフト式でセンサーシフト式対応のモデルは存在しない。そのぶんボディが小型軽量となっているが、EOS M6とM5では電子式の5軸手ブレ補正を採用。安定感の高い動画撮影が楽しめる。
■特徴5/クリエイティブアシスト
クリエイティブアシストは、絞りや露出補正、ホワイトバランスなどの撮影用語を「ぼかす~くっきり」「暗く~明るく」「寒色~暖色」などの言葉に置き換えて、ビギナーでもさまざまな機能設定が簡単にできるように配慮したモード。これなら、カメラ初心者でも手軽に設定ができる。各項目はタッチ操作によるスムーズな調整が可能だ。
「すっきり~鮮やか」のスライダーを指でなぞると彩度調整ができるなど、ビギナーにも優しいインターフェイスを採用している。